第211回国会 参議院 外交防衛委員会 第17号 令和5年5月30日 令和五年五月三十日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  五月二十五日     辞任         補欠選任      新妻 秀規君     山口那津男君      青島 健太君     音喜多 駿君  五月二十九日     辞任         補欠選任      山口那津男君     宮崎  勝君      金子 道仁君     青島 健太君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         阿達 雅志君     理 事                 岩本 剛人君                 佐藤 正久君                 小西 洋之君                 平木 大作君                 音喜多 駿君     委 員                 猪口 邦子君                 小野田紀美君                 武見 敬三君                 中曽根弘文君                 堀井  巌君                 松川 るい君                 吉川ゆうみ君                 羽田 次郎君                 福山 哲郎君                 宮崎  勝君                 青島 健太君                 榛葉賀津也君                 山添  拓君                 伊波 洋一君                 高良 鉄美君    国務大臣        防衛大臣     浜田 靖一君    事務局側        常任委員会専門        員        神田  茂君    参考人        元航空自衛隊補        給本部長・空将  尾上 定正君        拓殖大学教授   佐藤 丙午君        武器取引反対ネ        ットワーク(N        AJAT)代表  杉原 浩司君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○防衛省が調達する装備品等の開発及び生産のた  めの基盤の強化に関する法律案(内閣提出、衆  議院送付) ○参考人の出席要求に関する件     ───────────── ○委員長(阿達雅志君) ただいまから外交防衛委員会を開会いたします。  委員の異動について御報告いたします。  昨日までに、新妻秀規君及び金子道仁君が委員を辞任され、その補欠として音喜多駿君及び宮崎勝君が選任されました。     ───────────── ○委員長(阿達雅志君) 理事の補欠選任についてお諮りいたします。  委員の異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 ○委員長(阿達雅志君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事に音喜多駿君を指名いたします。     ───────────── ○委員長(阿達雅志君) 防衛省が調達する装備品等の開発及び生産のための基盤の強化に関する法律案を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。浜田防衛大臣。 ○国務大臣(浜田靖一君) ただいま議題となりました防衛省が調達する装備品等の開発及び生産のための基盤の強化に関する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明いたします。  我が国を含む国際社会の安全保障環境の複雑化及び装備品等の高度化に伴い、装備品等の適確な調達を行うためには、防衛省による既存の調達を通じた措置や関係省庁による防衛産業の基盤強化のための各種の支援措置に加えて、装備品製造等事業者の装備品等の開発及び生産のための基盤を強化することが一層重要となっていることに鑑み、装備品製造等事業者による装備品等の安定的な製造等の確保及びこれに資する装備移転を安全保障上の観点から適切なものとするための取組を促進するための措置、装備品等に関する契約における秘密の保全措置並びに装備品等の製造等を行う施設等の取得及び管理の委託に関する制度を定めるものであります。  以上が、この法律案の提案理由であります。  次に、この法律案の内容について、その概要を御説明いたします。  第一に、装備品製造等事業者が指定装備品等の安定的な製造等の確保のために行う取組に関する計画を防衛大臣が認定し、当該計画に係る取組が着実に実施されるよう、政府が必要な財政上の措置を講ずる制度を創設するとともに、装備品製造等事業者が行う装備移転仕様等調整に関する計画を防衛大臣が認定し、当該計画に係る装備移転仕様等の調整を行うために必要な助成金を指定装備移転支援法人が基金から交付するための制度を創設するものであります。  第二に、装備品等契約における秘密を装備品等秘密に指定し、契約事業者に提供することができることとし、契約事業者の従業者が装備移転等秘密を漏えいした場合等の罰則を創設するものであります。  第三に、装備品製造等事業者に対する第一の措置では指定装備品等の適確な調達を図ることができないと認めるときは、当該指定装備品等の製造等を行うことができる施設又は設備を取得することができることとするとともに、当該指定装備品製造施設等の管理を当該指定装備品等の製造等を行っていた又は行っている装備品製造等事業者に委託するものとする制度を創設するものであります。  以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要でございます。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。 ○委員長(阿達雅志君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  速記を止めてください。    〔速記中止〕 ○委員長(阿達雅志君) 速記を起こしてください。     ───────────── ○委員長(阿達雅志君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。  防衛省が調達する装備品等の開発及び生産のための基盤の強化に関する法律案の審査のため、本日の委員会に元航空自衛隊補給本部長・空将尾上定正君、拓殖大学教授佐藤丙午君及び武器取引反対ネットワーク(NAJAT)代表杉原浩司君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 ○委員長(阿達雅志君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ───────────── ○委員長(阿達雅志君) 防衛省が調達する装備品等の開発及び生産のための基盤の強化に関する法律案を議題とし、参考人の皆様から御意見を伺います。  この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多忙のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。  皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  次に、議事の進め方について申し上げます。  まず、尾上参考人、佐藤参考人、杉原参考人の順にお一人十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度、委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきください。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず尾上参考人からお願いいたします。尾上参考人。 ○参考人(尾上定正君) おはようございます。  本日は、このような貴重な機会をいただき、誠にありがとうございます。また、日本の防衛力のそのものである防衛生産・技術基盤の強化のための法律について、このように真摯に御議論をいただけますことに、心から感謝を申し上げます。  私は、二〇一七年の八月に航空自衛隊補給本部長を最後に退官いたしましたけれども、当時から、防衛産業の抱える様々な問題について強い危機感を持っておりました。その一番の理由は、航空自衛隊の運用を支える主要装備品の可動率が著しく低下し、平時の重要な任務である対領空侵犯措置と錬成訓練に提供するF15戦闘機の確保すら困難な状況が常態化していたからです。  装備品の価格が上昇するにもかかわらず、修理用部品を購入する予算が増えず、その負担は、部品の共食い作業を強いられる部隊はもちろん、少額の契約で生産ラインや技術者、インフラを維持しなければならない防衛産業にも大きくのしかかっていました。まさに、部隊運用に直結する防衛産業は崖っ縁に追い込まれていました。その後、防衛産業から撤退した企業の数がそれを象徴しており、危機的状況は今も続いています。  現在、御審議いただいている防衛生産・技術基盤強化法は、そのような危殆に瀕している防衛産業を立て直し、新たな国家安全保障戦略等に基づいて、我が国を防衛するための生産技術基盤に発展させるために不可欠な第一歩であると確信し、早期の成立を期待しております。  さらに、ウクライナ戦争の様相や我が国周辺の厳しい軍事環境を踏まえると、自衛隊が想定する新たな戦い方に必要な能力を優れた両用技術を用いて短期間で装備化し、かつ実際の作戦で持続的に運用できる体制を構築しなければなりません。  このような観点から、目指すべき防衛生産・技術基盤の実現に必要な三つの視点を御説明いたします。  まず第一は、自衛隊の作戦運用の専門知識の活用という視点です。  防衛生産・技術基盤の強化には、まず自衛隊が想定する将来の戦い方、これには、平素の情報戦、サイバー戦からグレーゾーンのハイブリッド戦、そして本格的な領域横断作戦、これらの戦い方を明確に示す必要があります。これは、作戦運用の当事者である自衛隊にしかできません。  この将来構想に基づき、防衛産業は集中投資する分野や研究開発の方向を定めることができるのですが、これまでの防衛装備品開発は、各自衛隊が既存の装備体系の中で旧式化したものを新規装備品に換装するという考え方を基本にしてきたため、新たな戦い方に必要となる斬新な装備要望や運用要求は余り出てきませんでした。企業の側も、自衛隊が要求する以上の革新的な性能を有する全く新しい装備品を、自らリスクを取って開発する機運には乏しかったと思います。  今後は、具体的な脅威に対する運用要求に基づく研究開発、短期間の試作と試験を経た装備化、そして、部隊が習熟して実効的な防衛力と転化する仕組みが必要です。さらには、将来戦構想に応用できる可能性のある両用技術や汎用装備品を運用に習熟した目で積極的に発掘する制度も必要です。  アメリカには、DIU、ディフェンス・イノベーション・ユニットという組織があります。DIUは、国防省全体の組織と提携し、各軍種や戦闘司令部、機関等が抱える国防上の課題に対し、先進的な民間ソリューションを迅速に試作、実用化する仕組みであり、参考になります。  また、防衛生産・技術基盤強化法と経済安全保障推進法は別建てとなりますが、防衛分野と民生分野の垣根を取り払うことは今後の重要な課題です。防衛省・自衛隊は、将来の戦いの鍵を握る民間の科学技術研究や企業の先端技術開発に能動的に関わり、優れた両用技術を軍事力として実装化していく必要があります。防衛産業側も、スタートアップや民生部門、あるいは海外企業等と積極的に連携し、運用者たる自衛隊との対話に臨む姿勢が求められます。  二点目は、自衛隊の運用に関わる戦略的自律性の確保です。  防衛は安全、安心を提供する国の基盤インフラであり、防衛装備品は国や国民の生存に甚大な影響のある物資です。  経済安保推進法では、基幹インフラの重要設備が我が国の外部から行われる役務の安定的な提供を妨害する行為の手段として使用されることを防止するため、重要設備の導入、維持管理等の委託の事前審査、勧告、命令等の措置が必要とされています。また、重要物資の安定供給の確保を図るため、特定重要物資の指定、民間業者の計画の認定、支援措置、特別の対策としての政府による取組等の措置が規定されています。いずれも、所管大臣が基本方針や計画を定め、法に基づく措置として監督指導し、必要があれば勧告、命令する体制となります。  翻って、防衛及び防衛装備品は、防衛省と企業の契約によって企業の秘密保全義務や遵守事項が規定され、それが現状です。防衛省の契約は、通常、プライム企業と交わされ、プライム企業はサブプライム、サブプライムはその下請ベンダー企業へと民間契約の鎖がつながり、防衛省・自衛隊の役務や製品の供給網が形成されているのですが、秘密保持等の特約条項が供給網の末端まで徹底しているのか、重要設備の導入時に適切な審査が行われているのか、現場で作業する工員の適格性は確認されているのか等、その実態は必ずしも明らかではありません。逆に言えば、民間企業に対し契約関係のみでこのような措置の確実な履行を求めることには限界があると言わざるを得ません。  この防衛生産・技術基盤強化法によって、経済安保推進法と同じく、法に基づいて防衛大臣が監督指導、勧告、命令する体制となることを期待します。  また、防衛装備品の多くは、技術や部品、構成品を輸入に依存しています。アメリカの国防省は国防に不可欠なサプライチェーンの確保という報告書を公表していますが、自衛隊のC4ISRシステムや主要装備品、防衛技術のサプライチェーンを見える化し、戦略的自律性を確保するためのチョークポイントや脆弱点を洗い出すことが必要です。防衛産業のサイバーセキュリティー体制の強化は、言うまでもなく、一刻の猶予も許されません。  最後に、余り議論されていない有事の後方支援についてです。  三文書でも防衛生産・技術基盤は防衛力そのものとの認識が示されているとおり、装備品の整備、製造のみならず、維持整備においても防衛産業のサポートなしには自衛隊は戦うことができないのが現状です。装備品の維持整備の中核的部分を民間に依存しており、装備品の高度化に伴い、この傾向は一層顕著になっています。  典型的な例としては、インド洋補給支援活動やソマリア沖海賊対処活動において、派遣先で海自艦艇に故障が発生した場合には、企業に要請し、技術者である社員を日本から現地に派遣してもらい、修理を行っています。自衛隊と企業の長い関係の中で、企業は、派遣される可能性のある社員に海自からの具体的要請がある前に予防接種を行い、即応体制を取ってくれました。  しかし、これは、平時ゆえに協力を受けることができたものです。有事には、可動時間の増加や戦闘による修理所要の増加が見込まれる一方、自衛隊が展開している作戦地域、例えば南西諸島方面まで企業が要請に応じて任意に社員を派遣してくれることを前提とすることはできないと考えます。その結果、艦艇や戦闘機などの装備品は不可動になり、自衛隊の戦力発揮に大きな支障が生じる、あるいは、艦艇や戦闘機などの装備品を修理のため後方に下げることになり、戦力ダウンとなるといった事態が考えられます。今回、維持整備に必要な経費は大幅に増えましたが、民間に依存している維持整備作業を、安全確保が十分でない地域においていかに実施するかについては未解決です。企業を含めた国を挙げての検討が必要であると考えます。  以上、三点、防衛産業が防衛力そのものとして機能するために必要な作戦運用の視点で御説明いたしました。法案には、装備移転円滑化措置や製造施設等の国による保有など重要な施策が盛り込まれておりますが、これらについては質疑でお答えできればと思います。  ありがとうございました。 ○委員長(阿達雅志君) ありがとうございました。  次に、佐藤参考人にお願いいたします。佐藤参考人。 ○参考人(佐藤丙午君) ありがとうございます。拓殖大学の佐藤丙午と申します。  本日は、貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。  本日は、防衛産業の抱える問題に対応する上で、私自身は、防衛生産基盤強化法、略称ですけれども、極めて力強い一歩だと考えております。本日は、この法律に関する問題について意見を申し上げたいと思います。  日本の防衛産業は、三自衛隊に加えて、自衛隊を運用する上で欠かすことができない第四の柱だと考えております。この問題を議論する際には、どの方面から議論するかによって議論の組立て方が異なります。本日は、防衛産業をめぐる最近のトレンドを中心に強化法に関わる課題を述べさせていただきたいと思います。  まず、自由主義社会において防衛生産は主に民間企業によって担われております。技術の特許を防衛省が保有しているケースが多いと思いますが、完成品を製作、納入するのは民間企業の役割になっております。防衛産業には、完成品を生産、納入するプライムコントラクターと、比較的小規模ではありますけれども、防衛生産や特定の技術に特化した能力を持つ専業の社、また、それを支える、兵たん部分を支える民間の企業の組合せによって構成されております。その意味で、防衛産業は極めて裾野が広いと形容することができると思います。  国際的には、広義の意味での防衛産業には、民業中心の企業や研究開発機関、また大学なども含まれます。技術の多義性を考えると、日本においても、これら多様な集団を動員し、そのための支援を拡大する必要があると考えます。日本の防衛生産は国産比率が高いと言われますけれども、自国産の兵器システムが少ないのも事実であります。自衛隊が求める高性能な近代兵器は主にライセンス生産や輸入によって入手されており、基本技術から完成品までの完全国産というのは極めてまれな事例になっております。  しかし、このような状況は、日本固有の問題ではございません。アメリカや欧州においても防衛技術を自国単独で担うのは困難な時代になっております。各国はそれぞれに、必要な兵器システムを完成する上で、また入手する上で、国際的な技術獲得競争を展開すると同時に、協力、様々な国際的な協力関係を構築しております。特にNATOを見ておりますと、太平洋をまたいだ防衛産業の協力というのは二〇〇〇年代初頭から一層深化しつつあるように感じます。  防衛技術を調達する際には様々な方法が検討をされております。国内の技術を使う場合、国際共同開発で相互に補完する場合、必要な技術を入手する技術協力又は一般的に流通している技術を最適化しながら防衛生産で行う方式も存在します。そういう意味で、防衛生産では、技術を保有する企業や国とのパートナーシップが極めて重要になっております。アメリカにおいても、既に二十一世紀初頭の段階で自国が世界最高水準の技術を単独で持っていないと認めておりまして、諸外国の企業とパートナーシップを構築するのが重要な課題と規定されております。  また、最近のニュースではありますけれども、F22の後継機の開発においては、F35とは異なり、一社独占ではなく、部分ごとに分けた生産方式が想定されていると報じられております。その際には、開発に関与する社同士でのデータ共有が不可欠であり、その秘密保護というのが重要な課題になっております。  防衛産業が直面しているもう一つの課題は、需要と供給のバランスです。  この問題では、ウクライナにおける事態に象徴されるように、侵略等に対処する場合、それぞれの国が事前の貯蔵を元に単独で軍事力を運用するのではなく、場合によっては国際的な支援を求めることが一般的になっております。ただ、これは、他国に余剰の軍事生産力がある場合に可能になるものです。  この現状は、各国の防衛生産に緊張状態をもたらします。例えば、米国は現在ウクライナに対して大規模な軍事支援を行っておりますが、その軍事支援をする際に、国内での需要と国外における需要をどのように均衡させるのかが重要な課題であると議論されております。  日本の事情を考えたときに、日本の防衛産業には、日本の防衛産業の生産能力は自衛隊による調達に大きく依存しておりますので、それを超えるような生産余力を持っているというふうには聞きません。したがって、量的な需要が生じた場合には、それが自衛隊のものであれ国外へ輸出するものであれ、生産ラインをどのように確保するか、維持するかということが重要な課題になっております。  日本の防衛産業が直面する三つ目の問題は、次世代の兵器システムの開発です。  現状のプライムコントラクター中心の開発と生産体制は、需要という意味においても、生産体制という意味でも、ある程度フィックスされた状況が存在するように思います。したがって、そこで新たな技術を導入し、新たな兵器システムを開発するということは追加のコストになりますので、どの企業にとってもそれは難しい課題になっております。また、兵器開発に必要な技術をどこから調達するのか、また、その技術に対する投資をどの程度行うのかという問題は、企業側の論理からすると必ずしも大胆に行動ができない状況があるというふうに理解しております。  兵器システムの開発においては、コンセプト段階から破棄の段階まで様々な段階が存在し、そこには多様な企業が関わります。将来の兵器システムを検討する際には、いかに多様な新規参入者を含めた、多様な新規参入者を含めた民間企業を動員するか、関与させるかということが重要なポイントになってきております。  国際社会では、防衛装備開発において、大学を含めた幅広い知識の結集が常識になっております。日本においてもその体制を整備することが望ましいとは考えますが、しかし、これまでの歴史的な経緯もございますので、この協力というのを大学に強制すると強烈な抵抗が生じることを踏まえる必要があると考えております。  今回の防衛基盤強化法では、既存の防衛産業の強化について重点的に対処されていると考えます。しかしながら、日本の防衛産業の強靱性を維持する上で、幾つかの論点を挙げさせていただきたいと思います。  まず第一に、防衛生産基盤維持を目的とした政府支援において、生産及び経営の安定性が強調されております。しかし、この安定性の定義は、自衛隊にとって安定的に供給が確保されるということを目的にしており、必ずしも兵器システムの開発自体が安定的に行われるという体制が想定されているわけではないように思います。この点において、公式、非公式に民間と政府の間での対話が必要だと考えております。その対話枠組みは、基盤強化と同時に進められるべき調達改革の中で設置されるものであろうと考えております。  第二の問題として、移転に関する支援が挙げられます。  量的生産を維持する上で防衛装備移転は不可欠であることは言うまでもありません。法案では、移転を目的とした仕様変更への対処がなされております。完成品のスペック変更にどれだけ資金が必要か、そしてどの範囲でスペックの変更を実施するのか、慎重に検討する必要があるのも事実でございます。  この問題においては、完成品の仕様変更だけではなく、ライフサイクルに関わる生産システム全体の中で、輸出を可能にするような仕様の製品の製造も重要な課題であると考えております。  第三に、政府による技術維持に対する支援の問題です。  防衛省・自衛隊にとって必要で死活的な技術基盤や生産基盤を維持するために、政府の積極的な関与が規定されているものです。技術基盤の維持のために政府が直接的に関与することは、政府交渉などのように直接関与する場合と政府による多様な援助を行うという形があると思います。  ただ、これまで政府交渉は高品質なものを少量生産するには適しておらず、政府の支援は市場競争を阻害する可能性があります。極端な言い方をすれば、政府交渉のようなものは、それが必要とされなくなった、技術がですね、必要とされなくなった事情が存在します。その事情を考慮せず技術維持だけを目的に資金を拠出するとすれば、政策的には多方面でゆがみが発生することが懸念されるところだと思います。生産効率あるいは兵器システムの多様性を担保するためには、やはり民間企業による競争が重要だと考えております。それを促すような政府の関与が極めて重要であると考えております。  第四に、今回の法案では必ずしも明確に規定されていない国際的な技術アクセスの問題、また第五の問題として、新興技術等を活用した次世代兵器システムの開発をめぐる問題があります。  これら問題、四番目と五番目の問題は、将来における、将来の日本の安全保障を考察する上で極めて重要であり、今法案のレンジ、範囲の中に含まれるものではありませんので、この先の議論、課題として検討していただければというふうに考えております。  以上、見解を述べさせていただきました。どうもありがとうございます。 ○委員長(阿達雅志君) ありがとうございました。  次に、杉原参考人にお願いいたします。杉原参考人。 ○参考人(杉原浩司君) ありがとうございます。武器取引反対ネットワーク(NAJAT)代表の杉原浩司です。貴重な機会をありがとうございます。  陳述にタイトルを付けてみました。貧国強兵の大軍拡を実行し、日本を死の商人国家に堕落させる軍需産業強化法案を許さない、参議院は良識の府の矜持を持って徹底審議を行え。  さて、私は、かれこれ三十年ほど、反戦、平和、軍縮の市民運動を続けてきました。状況は著しく悪くなるばかりですが、市民社会の一つの地声をこうやって立法府に直接届かせ、責任ある国会議員の皆さんと事前通告なしの真剣勝負ができるというのは、かけがえのないことだと思っています。さきのお二人とは異次元の陳述を気合を入れて行いたいと思います。  陳述の本編に入る前に、どうしても確認しておかなければならない点があります。本法案は、衆議院で、参考人質疑を除いた実質審議は僅か五時間にすぎません。余りにも短いです。そして、この参議院においても、本日が最初の審議であるにもかかわらず、いきなり参考人質疑から始まり、聞くところによれば、あさって六月一日にも、五時間の質疑後に即委員会採決を行うのではないかと言われています。これで審議を尽くしたと言えるのでしょうか。二十一人の委員がおられますが、一人三十分の短い質疑だとしても十時間以上は必要です。衆議院が五時間だから参議院もせいぜい同じ時間という慣習にのっとっているなら、まさしく形式主義の極みです。参議院は、本来、良識の府ないしは再考の府と呼ばれてきました。衆議院が僅か五時間なら、参議院はその二倍、三倍掛けても当然ではないでしょうか。  衆議院の議事録を読みましたが、軍需工場の国有化など、法案が抱える数々の問題点は全くと言っていいほど解決されていませんし、議論の俎上にすら上っていないものもあります。問題点に即して、一度ならず二度、三度と参考人質疑も行ってはいかがでしょうか。武器輸出問題をフォローされてきた憲法学者、軍事企業の元労働者、国際協力NGOの方など、私から推薦してもいいです。中央公聴会、地方公聴会も開くべきでしょう。  なぜこれほど重大な法案をこれほど拙速に通そうとして恥じないのか、阿達委員長や与野党理事、そして委員の皆さんの見識を疑います。今ならまだ間に合うでしょう。阿達委員長や与野党理事の皆さん、衆議院のような拙速な採決はしない、もっと時間を掛けて審議を尽くすと、ここで確約してください。参議院の矜持を見せてください。私は、参考人としてここに座っていますが、結論ありきの出来レースの刺身のつまになることは全力で拒否します。いかがでしょうか。  まあここでは結論が出るわけではないんですけれども、ここで結論が出せないなら、どうか、今後開かれる理事会で、参考人の強い意見を真摯に受け止め、想定していた拙速な審議日程を抜本的に見直していただくよう、改めて強く要望します。そして、議論の結果を私に必ず知らせてほしいと思います。  大事な前置きが長くなりましたが、急いで本論に入ります。  私たちNAJATは、二〇一五年十二月に結成した当初は武器輸出反対ネットワークという名称で、主に日本の武器輸出に反対する活動をしていました。しかし、その後、米国などから爆買いする武器が専守防衛を踏み破る敵基地攻撃兵器として運用されるだろうことに強い危機感を覚え、武器輸入にも反対しようと、名称を取引に変えました。それ以降、やるべき仕事は増えるばかりです。  今回提案されている軍需産業強化法案は、五年で四十三兆円、武器ローンも含めると六十兆円を超える異様な大軍拡を推進するために不可欠のものとして位置付けられていると思います。ですから、衆議院で早々に法案賛成を決めた野党第一党の立憲民主党が言うような、綻びを見せる防衛生産基盤の整備という一般論のレベルにとどまるものではありません。立憲民主党の安易な賛成によって、衆議院安全保障委員会では、三十人の委員中、反対は日本共産党の赤嶺政賢議員だけという、まるで大政翼賛会をほうふつとさせる惨状が出現しました。立憲の伊藤俊輔理事が読み上げた十八項目の附帯決議は、全てが法を促進するものばかりでした。軍拡財源確保法案と軍需産業強化法案は、言うまでもなく一体であり、前者には反対だが後者に賛成というのはあり得ないことです。立憲民主党は、今からでも、大軍拡に加担する賛成方針を見直すべきです。  限られた時間の中で、私が反対してきた武器輸出に関する側面を中心に述べたいと思います。  衆議院の議事録を読んでまず思ったのは、武器輸出が必然的にまとうことになる血の臭いがほとんど感じ取れないことです。プーチン容疑者によるウクライナへの侵略戦争において、いかに武器が残虐に命を奪い、町や村を廃墟に変えているかを目の当たりにしているにもかかわらずです。そもそも、武器を装備品と言い換えることで、巧妙に血の臭いを消し去ろうとしています。  語られているのは、例えばコストの論理です。販売先が限られているから価格が高くなり、競争力が付かない、だから輸出しようと。あるいは、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出のためであると。自分たちにとって都合のいい環境をつくるために武器を輸出しなければならないとは、平和国家も地に落ちたものです。  一方で、武器輸出は、国際法に違反する侵略を受けている国への支援のための重要な政策的手段なのだとしています。しかし、これは極めて欺瞞的な物言いです。なぜなら、日本は、二〇一五年からサウジアラビアとともに中東の最貧国であるイエメンの内戦に軍事介入して残虐な無差別空爆を繰り返してきたUAE、アラブ首長国連邦に、川崎重工製の軍用輸送機C2を輸出しようと企ててきたからです。侵略を受けている国ではなく、侵略に匹敵する戦争犯罪を行っている紛争加害国に対して、欧米の名立たる軍事企業をまねて、武器を輸出しようとしてきたのです。直ちに非道な企てを中止すべきです。  また、現在、殺傷能力のある武器輸出に道を開くのかを最大の焦点にしながら、自民、公明の与党による秘密協議が行われています。しかし、既に既成事実を先行させる形で、殺傷能力のある武器の輸出が企てられています。インドネシアに三菱重工製の最新鋭の多機能護衛艦30FFMの輸出がもくろまれています。情報が隠されているため、進捗状況は闇の中です。これは紛れもない殺傷能力の高い武器の輸出案件ですが、輸出では防衛装備移転三原則の運用指針に抵触するので、共同生産の形式でその壁を擦り抜けようとしているとの報道がありました。極めてずるい手法です。また、その失敗で有名な二〇一六年のオーストラリアへの潜水艦輸出も、共同開発の形で突破しようとしたものでした。ですから、今行われているのは後付けの議論にすぎないのです。  しかし、それでも、公然と殺傷能力のある武器輸出に踏み込むことは、大きな政治的意味を持つでしょう。要するに、それは、平和国家から死の商人国家への堕落です。本法案に仕組まれた武器輸出経費の一部への税金投入は、その危険な道を加速させるものにほかなりません。  時間がないので、審議を通して見えた問題点の一部を指摘します。  まず、武器輸出経費を税金で負担する補助金として四百億円が積まれていますが、その根拠を政府は、日本が諸外国から引き合いを受けている装備移転の具体的案件の積み上げとしています。しかし、その具体的内容は、相手があるからとかたくなに回答を拒否し続けています。これでは、四百億円もの予算が適正かどうかを検証することができません。少なくとも野党は、この根拠が公表されない限り採決に応じるべきではありません。  次に、装備品等秘密を指定して企業の従業員に法律上の守秘義務を課し、違反した場合、これは情報漏えいのみならず、企て、教唆、幇助に対しても刑事罰を科すことについてです。  衆議院での赤嶺政賢議員の質疑により、従業員が秘密を漏えいして問題になったのは三十年近く前の僅か一件にすぎないことが明らかになりました。要するに、立法事実が存在しないのです。そうである以上、少なくともこの企業版秘密保護法案ともいうべき部分を全面削除しない限り、法案の成立はあり得ません。  最後に、この法案を成立させて武器輸出を促進することは、政府・与党などの意に反してレピュテーションリスク、評判リスクを高め、国内企業の撤退をむしろ加速しかねないということを警告しておきたいと思います。なぜなら、殺傷能力のある武器を輸出し、その武器によって他国の人々が殺傷されることが現実になれば、当該企業は正真正銘の死の商人となり、日本は死の商人国家の仲間入りを果たしたことが世界にさらされます。  日本の消費者を侮るべきではありません。人々は、的確な消費行動によって戦争犯罪に加担する企業に審判を下すでしょう。この間の世論調査でも、ウクライナへの武器提供に反対、殺傷能力のある武器輸出に反対という声が圧倒的多数でした。どっこい平和主義は主権者の中に息づいているのです。まだ間に合います。その確かな声に真摯に耳を傾け、この悪法を一旦廃案にしてください。少なくとも十分な審議を尽くし、継続審議にしてください。  「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」と宣言する憲法前文と、戦争放棄の憲法九条を持つ日本は、言わば良心的軍事拒否国家として軍事協力以外のあらゆる方策を徹底して追求し、その役割を果たすべきだと思います。  戦争を徹底して回避し、軍縮や緊張緩和を推進することはもちろん、難民の受入れを大幅に拡大し、気候危機や貧困など命に関わる問題の抜本的な解決に尽力すべきです。ウクライナ侵略戦争に即して言えば、ロシアの侵略の資金源となっているサハリンの天然ガスなどの輸入は当然ながらストップすべきです。そして、難民への死刑執行宣言に等しい入管法の改悪や石炭火力、原発の維持などもってのほかです。  今ならまだメード・イン・ジャパンの武器が他国の人々を殺傷する未来を防ぐことは可能です。日本に戦争を欲する軍産学複合体をつくらせるわけにはいきません。コストの論理が平和の倫理を駆逐することを許してはいけません。そのためには、この死の商人育成法案を葬ることが必要です。参議院がそのためにこそ役割を果たすことを求めて、私の意見陳述を終わります。  とりわけ、法案に賛成する会派の皆さんからの質問を歓迎したいと思います。  ありがとうございました。 ○委員長(阿達雅志君) ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  なお、質疑及び答弁は着席のままで結構でございます。  質疑のある方は順次御発言願います。 ○松川るい君 ありがとうございます。自由民主党の松川るいです。  三参考人の先生方、本当にすばらしい御意見の御披瀝ありがとうございました。  私、国家安保戦略が昨年末にできて、本当に、自分の国は自分で守るという極めてはっきりした意思が示される中で、防衛産業の維持強化は防衛政策そのものであると、そのために国が前面に立ってこの防衛産業の維持強化、そして装備移転の促進をしていくということを宣言したことは大変良かったと思っております。  この中で、私、やはり、死の商人であるとかそういったレッテル貼りの中で、防衛という極めて国家として第一に取り組むべき重要分野に携わっている防衛産業の皆様が、あたかも後ろ指を指されるとかそういったことであってはいけない。むしろ、防衛装備移転三原則も、元々禁輸、元々は全く制約がなかったところ、禁輸になって、それがだんだん緩める形で来たんですけれども、極めて制限的な内容になっているということで、この委員会でも質疑はさせていただきましたので、これを変えていって輸出を促進すると。そのことは、特にパートナー国となる国との間の防衛連携を強めるという意味でも重要ですし、また防衛産業の維持強化の上でも重要であるというふうに考えております。  その上で、尾上参考人とそれから佐藤参考人にお伺いしたいんですが、お二人とも言及されていたとは思うのですけれども、まずは、新しい戦い方とかこれからのことを考えたときに、経済とか民間と軍事であるとか、経済安保と防衛であるとかの垣根を取っ払った形で、技術の、何というか、総合的な国際観も含めて、新しい技術が生かされていかなければならないとおっしゃりました。  その場合、私も、よく知っている、防衛ニーズをよく知っている防衛省若しくは自衛官と、それから技術を持っている民間の皆さんがどこか空間的に一緒にいてやり取りができるような場所がないと、なかなかそのようなことができないんじゃないかという気がするんですけれども、お二人は、それら軍民のその技術を融合したり創造していく上でどういった組織をつくっていくのがよいと思われるのか。例えば、装備庁の中にこんなユニットとか、若しくは官民連携で何か別組織をつくるとか、何かお考えがあったら教えていただきたいと思います。これが一点でございます。まず先にこれだけお伺いします。 ○参考人(尾上定正君) 松川先生、ありがとうございます。  今の新しい戦い方は、宇宙、サイバー、電磁波に象徴されるように、あるいはドローンですとかAI、こういったものに象徴されますように、従来の軍事産業が持っていた技術を超えた、民間企業が開発する新しいイノベーティブな技術に依存するところが非常に大きいというのが実態です。  また、ロシアが使用している、ウクライナの人たちを殺傷している無人航空機、こういったものには、日本のバッテリーですとかあるいはモーター、そういったものが使われているわけなんですね。なので、こういったものをどういうふうに規制していくかということももちろん必要なんですけれども、やはり民間が持っている両用技術をいかに軍事的に評価をするかということが必要かなと思います。  そのためには、やはりその運用に習熟した自衛官ですとか、あるいは防衛技術の専門家、それと民間で防衛とは余り関係のないところでそのような革新的技術の研究開発にいそしんでおられる技術者の方々が一緒になって、まずは、何というんですか、交流をする場というんですかね、それが必要かと思います。  私の先ほどの御説明の中でDIUというお話をしましたけれども、アメリカにはDARPAという組織もございます。防衛省は先進技術研究開発に携わる防衛装備庁のセンターですとかありますので、そこに民間の方々を招く、あるいは自衛隊でその研究開発に携わっている人たちが民間の方に自ら出かけていって交流する場を持つというようなことが必要かなと思います。  大学の中にも、アメリカの場合、マサチューセッツ工科大学に空軍のリサーチラボの出先機関があって、そこで三十人ほどの研究開発をする軍人が学生たちと一緒に、AIの研究開発を一緒にやるといったようなことがもう現実に行われているわけなんですね。  したがって、まずは、そういう運用者と研究開発者の交流をする場を、既存のセンター、組織ですとか、そういったものを利用しながら拡充していくと。行く行くは、やはり民間でそういったことを扱うシンクタンク、技術を扱うシンクタンクですとか、またDARPAのような機関の新設といったことも必要かなと思います。 ○参考人(佐藤丙午君) 松川先生、ありがとうございます。  私も、今、尾上先生がおっしゃったように、民間と官、防衛省というんですかね、使用者の側との不断の対話が必要であるというふうには考えております。  やはり、軍事技術開発若しくは装備開発というのは人間の想像力の範囲の中で進みますので、そうすると、その想像力をいかにイノベーティブであり活性化するかということが極めて重要であるというふうに思っております。  そういう意味では、そういう意味においては、日本国内における防衛生産若しくは防衛技術開発に関する知的基盤の拡大というのが必要になってくると思いますし、その場合は、私はDIUとかDARPAというのは非常にすばらしい組織だと思いますが、そこに行く前の段階でいかに民間と企業側が、あっ、ごめんなさい、民間と自衛隊側が交流するかというのが極めて鍵になると思いますので、先ほど尾上先生がおっしゃったように、大学であるとかシンクタンクであるとか、官ではない、しかしながらイノベーティブな知的基盤を提供できるような主体というものを日本国内において拡大していくことが極めて重要であるというふうに考えております。  以上です。 ○松川るい君 ありがとうございます。  また、もう一点お伺いしたいのですけれども、私、もちろんいろんな国が日本にとっては大事ですし、防衛パートナーになる国はいろいろあるとは思うんですが、特に、やはり日本の置かれた安全保障環境を考えると、第一列島線連携というのが非常に重要じゃないかと思っています。具体的に言うと、日本、台湾、それからフィリピン、ベトナム、インドネシア、こうしたところというのは非常に、海洋を中心としてもしなくても、まあレーダーもありますので、あるんですけれども、連携が大事ではないかなと。  連携に当たっては、やはり装備品の移転というのが非常に一つの大きな重要なツールになると思っています。ただ、そのときに、先生の、尾上先生と佐藤先生のお考えをお伺いしたいんですが、この防衛装備移転の三原則とその運用指針、で、運用指針の中に、共同開発なら何でもできますということにはなっていますけど、例えば今言ったような国々というのはその共同開発まで、例えばインドネシアと共同開発ということにやっぱり今の時点ではならないわけで、そのときにできることは、今の運用指針上は救難、輸送、警戒、監視という、それからもう一つ掃海というこの五種類に限られているんですね。五種類しか野菜売っていない八百屋で買物する国があるだろうかというふうに私はいつも、どなたかがおっしゃった表現が非常に気に入って使っているんですけれども、この運用指針をどのように変えていくべきかについてお考えがあればというのが一点。  そして、これ併せてお答えいただければと思うんですが、今回のこの基盤強化法案の中に円滑化措置が入って、助成金が受けられるのは、スペックダウンのためのお金があるのは結構なことなんですけど、しかし、そのダウングレード用だけでいいのかと。何となく、せっかく積むのであれば開発とかいろんな、自衛隊の持っているもののそのダウングレードとかスペック変更だけではなくて、違うものにも使えるようにしてくれればいいじゃないかというふうに非常に思うんですけど、この点についても先生のお考えがあれば教えてください。 ○参考人(尾上定正君) ありがとうございます。  運用指針の今言われた五つの分野というのはまさに前例主義なんですね。だから、今までと違う、これから必要になるものは何かということを考える必要があるかと思います。  松川先生がおっしゃられたとおり、装備移転は、日本と志を同じくし、この地域の平和と安定を守りたいと考えている国との関係をつくっていく非常に重要な手段になると思います。それによって、地域の平和と安定をつくり上げるためのそのインフラというんですか、それを共有することができるかなというふうに思います。  スペックダウンという言葉は私は嫌いでして、その国に応じた運用仕様というんですか、要求性能というものが当然あるわけですから、それに応じたものをしっかりと支援していくと。物だけではなくて、その物を維持整備する能力ですとか、あるいはそれを使いこなしていくための教育訓練、こういったものも当然支援をしていかなければいけないわけですから、それを考えると、一つの装備品を輸出することによって波及的な、その国との信頼関係というものが波及的に向上するというふうに思います。  装備移転に関しては、防衛産業の競争力を高めるですとか、あるいは市場を広げるという副次的な効果ももちろんあると私は思いますが、それ以上に、今日本が置かれている環境から、信頼関係あるいは防衛協力を深めていかなければいけない国との関係を構築していくための極めて重要な手段であるというふうに思います。  一点だけ。韓国は、この装備品の輸出、軍事輸出ですね、これに大成功しています。日本の装備庁ができるのと同じ時期に防衛事業庁というのをつくって、当時のその輸出の金額を十倍、二十倍まで広げていると。つい最近も非常に大きなビジネスの契約をポーランドとかとやっております。ああいった形で、日本がそもそものその防衛装備品を商売のために輸出するということでは多分ないんだろうと思うんですよね。それは、今まで守ってきたその防衛移転三原則の精神からしても、私はちょっとアプローチが違うんじゃないかなというふうに個人的に思っております。  ただし、やはりその日本の安全保障という観点から考えると、装備移転というのは絶対に必要ですし、その基準において前例主義に陥るべきではないと思います。 ○参考人(佐藤丙午君) ありがとうございます。  装備移転の運用指針の問題は、非常に悩ましい問題だというふうに考えております。といいますのは、あの運用指針の中に細かく規定を書き込み、書き込めば書き込むほど我々はそれが抑制的に運用されるというふうに解釈されますけれども、逆に相手側にしてみると、その抑制的な指針を踏まえた上で日本と心を同じくし、日本の安全保障に貢献するということを考慮しなければいけないということになると、相手側に日本側に付くのかそうではないのかということを強制的に迫るものになりますので、逆に防衛装備移転を難しくする一つの要因になるのではないかというふうに思っております。  そういう意味において、防衛装備移転においては、共同開発以外にも、それ以外にも技術協力、技術支援、またロジスティックスの協力も含めて、また海洋安全保障の五分野以外の領域においても様々な可能性があると思っております。それらを全て日本の安全保障政策に貢献し得るものというふうに規定することによる可能性の減少というのは、もう一つ考えなければいけないポイントだというふうに思っております。  そういう意味でいうと、ダウングレード品でいいのかと先生がおっしゃる点は私自身も賛同するところでございまして、私の陳述の中で申し上げたとおり、やはり最初から相手の国に寄り添って相手の国の能力を向上させると、相手の国の懸念に寄り添って能力を向上させるという意味において、かなり初期の段階から防衛装備協力若しくは技術協力というのを展開していくべきだというふうに考えております。  そういう意味でいうと、また最初の点に戻りますけれども、今の運用指針がこのままでいいのかという問題というのがここで議論していただきたい点であるとは思っております。  以上でございます。 ○松川るい君 ありがとうございます。  私は、やはりこのポジティブリスト方式というのが非常に日本のそのいろんな防衛装備の移転であるとか政策を制約しているやり方、様式だと思っておりまして、これは是非、目的に応じて、ちゃんとした目的のために移転をするという以上でも以下でもないような形に変えるべきではないかというふうに思っております。  いずれにせよ、防衛産業の維持強化は大変重要でございまして、私、今回、二月に、自民党の中ではありますけれども、防衛産業の維持強化、抜本的な強化とそれから装備移転の促進のための議連を立ち上げたところでありまして、今日先生方から御披瀝のあった重要な点もしっかり踏まえながら取り組んでいきたいと思いました。  本日は誠にありがとうございました。 ○羽田次郎君 立憲民主・社民の羽田次郎です。  本日は、お忙しい中、参議院の外交防衛委員会にお越しいただきましたこと、お三人の先生方に私からも感謝を申し上げます。  ロシアによるウクライナへの軍事侵攻や、また我が国を取り巻く環境の変化を鑑みたときに、自衛官の処遇改善ですとか、施設の整備ですとか、既存の防衛装備品の整備ですとか、国内生産基盤の強化が一定程度必要なのかもしれないという思いは各種世論調査でも示されておりますので、これは多くの国民が共有する認識なんだろうというふうに私も考えております。  ただし、それが国民生活を脅かすような予算の拡大につながって防衛産業に政策が引っ張られるような状況になってしまわないのか、そして、この先、憲法の理念や規範から逸脱するようなことにならないかという懸念も払拭できないでおります。  その上で、まず、尾上参考人と佐藤参考人に伺います。  この防衛装備品の国内生産において、過去の経緯も踏まえますと、官民の癒着が生まれないかという懸念が付きまといます。今回の法案の中でも、基盤強化の措置においては、任務に不可欠な装備品を製造する企業に対してサプライヤーも含めて経費を直接的に支払うですとか、装備品移転円滑化措置についても助成金の交付をするですとか、また資金の貸付けですとか、その上で、また経営がおぼつかない場合は任務に不可欠な装備品を製造する企業に対しては国による保有ということも考えられているという部分において、やはりそうした癒着が生まれないかという懸念に対して、そうしたことが生まれないためのその透明性の確保のためにどのような取組が必要であるかというお考えがお二方にあればお聞かせいただけたらと思います。 ○参考人(尾上定正君) 羽田先生、ありがとうございます。  基本的に、この防衛生産・技術基盤の必要性、あるいは今日本が置かれている状況からしっかりと防衛力を強化していかなければいけないと、この考え方には御賛同いただいているというふうに思っております。  その上で、四十三兆円まで増える防衛関係費、これをどのように効果的に執行して、そして抜本的な能力、防衛力の強化につなげていくかということに関しては、これ関係するところが全て協力をして全力で取り組んでいかなければいけないことだと思います。  自衛隊、自衛官の職務は、これまでの考え方から、例えば反撃能力を持つですとか、実戦を前提に継戦能力といったものを考えていかなければいけないだとか、そういう発想の転換が求められているんですね。防衛産業の方も同じように発想の転換が必要になると思います。  この法案ができて、様々な助成金ですとか、あるいは官が所有する工場といった施設、こういう新しいことができていくことになるんだと思うんですけれども、そのプロセスにおいて、どういうやり方が一番いいのか、どういう予算の付け方なり、あるいは助成金の付け方がいいのかといったようなことをしっかりと実践面で確立をしていくことが重要だというふうに思います。  この仕組みは、一旦でき上がってある程度の期間がたつと、やはりその仕組みが慣れて、そこに様々な緩みも出てくる可能性は当然あるわけなんですね。したがって、先生がおっしゃるように、その透明性を確保する仕組みというものもあらかじめビルトインしておく必要はあろうかと思います。  いずれにしましても、運用者がしっかりと運用要求に基づいて必要な能力を提供してくれる防衛生産・技術基盤と対話をしていく、そしてその対話をオープンにしていくということが一番の必要なことかなというふうに思っております。 ○参考人(佐藤丙午君) 羽田先生、ありがとうございます。  官民の癒着というのは非常に悩ましい問題でありますし、非常にまた大きい問題だと思っております。  この防衛産業と官をめぐる問題を私自身も何十年も研究してまいりましたが、この官民の癒着が生じるポイントというのが一つあると思います。それは、官の裁量が大きい場合に、それに対して民は必要以上に寄り添ってしまうということでございます。民間にしてみますと、官の裁量に頼る形で税金を、ちょっと抽象的な言い方をさせていただければ、税金を自分たちの利益のために利用するということに努力することは当然といえば当然ではございますけれども、ただ、そこにはやっぱり大きな問題が生じます。国際的にいろいろと見ていても、やはりここ、官民の癒着が生じることで予算の無駄が生じる場合であるとか、政策というのが産業側の論理のみに従って引きずられてしまうということも大きな特徴として挙げられております。  この問題は、どこの国においても同じ悩みとして指摘される内容ではありますけれども、じゃ、それを防止するためにどうするかと、透明性を向上させるためにはどうするかという問題も同時に議論されております。その際には、官の裁量ではなく、その民の競争状態というのを可視化するような努力、また、民同士、若しくは官の中での様々な政策上のコンペティションというものを評価する、知的基盤を強化することによって、知的基盤同士の競争力を付けることによってその官民の関係というものの可視化というものを図っていくという方法も一つあるかというふうに思います。  いずれにせよ、官の裁量が非常に大きい以上、その予算に対して何らかの形での利益を得たいというふうに企業が考えるのも当然ですし、しかしながら、そこに一定の既得権益が生じてしまうとそれが癒着につながっていきますので、そこでの競争状態をいかに確保するか、これは国際的にも様々な方式があると思いますので、日本において必要、適切な方策というのを導入していただければ有り難いかなというふうに思っております。 ○羽田次郎君 ありがとうございます。  やはり、米国等を見ていましても、また、各国の首脳が引退した後に軍需産業の役員や理事になったりしているような状況というのは現実としてありますので、そうしたことを、やはり日本でもそうしたことが起きないとは当然言えないと思いますので、その辺、大変懸念することではありますが、お知恵をいただきましたことに感謝を申し上げます。  次に、杉原参考人に伺いますが、強力な軍事力を持つ国が隣接して幾つもある中で、そのうちの一国が実際に軍事侵攻するというのが今現在起きているところで、そうした事態が日本には絶対に起きないということはやはり言い切れないと思います。そういう場面で、いざというときに備えるのが国の責務ではあると思いますし、その備えとして防衛装備品の国内生産をするということにおいて、その問題点ですとか懸念されている点、またそうした突然の侵攻に対してどういうふうに備えることが適切とお考えなのか、お聞かせください。 ○参考人(杉原浩司君) ありがとうございます。  まず、その最後の部分の御質問なんですけれども、突然の侵攻にいかに備えるかという話なんですけど、リアルに考えたときに、現状の今の日本においてどこか他国が突然侵攻してくるということはもうほぼあり得ないと思います。何らかの、ロシアのウクライナ侵略戦争もそうですけれども、何らかの兆候や、必ずあるんですね、シグナルが。そういう中で、それを実際の侵攻や戦争にさせないための最大限の外交努力が問われているわけなんですが、現状において突然の侵攻ということを想定してお答えするということはちょっと適切ではないかなというのが一つあります。  ただ、御質問の意図として、確かに日本の周辺の国々というのはかなりの軍事力を持っています。実際に、挑発的であったり武力による威嚇も行っている、そのことは事実として私も認識しています。ただ、やっぱり気を付けなければいけないのは、日本のメディアや政治家の方々もよく言われる論調が、日本はさも一方的に被害者のようであって、とにかく周りの国々が日本に対して攻撃しようとしているんだと、だから米軍と一緒に軍事作戦を担わなきゃいけないんだと、軍事力も強化しなければいけないんだという、そういう非常に一面的な論調が支配的だということなんですね。  なぜ隣国は軍事力を強化したりあるいは核兵器を開発しているかを考えれば、やはり日米安保条約があり、これほどの大規模な在日米軍が空域を支配してまで自由に訓練をして巨大な軍事力を置いてきたわけです。そして、時として、ここから中東まで出撃して多くの人たちを殺してきてもいる。そういう、かなり強い、世界最大の軍事力の一部を日本が抱え込んでいたことが周辺国の軍拡をやっぱり引き寄せているという側面をやっぱり軽視すべきではないんですね。  ですから、私が言いたいのは、軍事力に軍事力を高めるという短絡的な対応をしても、軍拡競争になって緊張が永続的に続くだけです。ですから、本質に目を向ければ、自分たちもその軍縮に向かうと、だからあなた方も軍縮に向かおうという形のやっぱり働きかけをしなければいけない。憲法九条を持つ日本は、米中の間でそういった外交をきっちりと展開するということに最大限の力を割くべきであって、今のような、もう、ちょっと異様とも言えるような大軍拡に踏み込むというのは、むしろ私たちの安全を損なうというふうに私は考えています。  以上です。 ○羽田次郎君 杉原先生おっしゃる、何ですかね、今の防衛費を拡大していくこの勢いというのはちょっと私もペースが速いのかなというふうな感覚も持っておりますが、ただ、実際にこのウクライナにロシアが侵攻する中で、国民に対する世論調査でもやはり多くの方たちが一定程度日本も防衛力を強化していかなければならないというふうに思いが強くなっている事実もあると思いますし、そういう意味で、私も自分の選挙区に帰ったときに、何で、立憲民主党はどういう考えなんだとか、むしろその防衛力強化に反対する理由は何なんだというようなことも聞かれることがありまして、それに対してロシアが攻めてくることはないとか中国が絶対攻めてくることはないというのは、正直、それを私が言ったとすると余りにも現実と懸け離れているんじゃないかというふうに思われてしまうと思いますし、実際それは保証できないですし、国としてそのリスクを冒せないというのはやはり責務としてはあると思います。  ただ、その安全保障上のジレンマというのが常に存在するのも確かですし、そこの本当にバランスというのをどうやって取っていくかというところをまさにこの国会においてしっかりと議論しなければならないですし、先ほど、五時間の各院での審議では足りないんじゃないかという御意見は私もまさにそのとおりだと思いますので、そういう意味では、しっかりとした議論というのは積み重ねることが私たちに託された職務だとも思いますので、そうしたことをしっかり今後も続けていきたいと思いますし、またそれぞれの先生方から今後とも御指導いただけたらと思いますので、よろしくお願い申し上げます。  まだ時間ありますかね。じゃ、一言お願いいたします。 ○参考人(杉原浩司君) 済みません。  今おっしゃったこと、よく分かります。確かに、あれだけあからさまな侵略戦争が本当にテレビでも見られて、一定の防衛力をやっぱり強化しなければいけないんじゃないかというふうに人々が思うのは僕は分かります。  ただ、だからといって、今のような岸田政権がやっている、憲法の理念によって制約してきた敵基地攻撃能力、これは専守防衛の肝なんですね。これ大事なことは、要は能力を縛るということだと思うんです。能力を縛ることで、二百キロぐらいしか届かないミサイルしか今持ってないわけですから、少なくとも自衛隊を見れば自分たちの国を攻撃することはできないという形で相手に脅威を与えないということになってきたわけですね。  もちろん、在日米軍がいますから非常に欺瞞的です。その問題は何とかクリアしなければいけないですが、少なくとも自衛隊はそういう形で、脅威を与えないことによって緊張を緩和するという政策を取ってきた。そのたがを外すことによって逆に、安全保障のためにやっていると政府は言っていますけれども、相手から見れば日本が自分たちをいつでも攻撃できる力を持つということなんですね。そのことは逆に隣国の軍拡の口実にもなります。結局、悪循環になっていくわけですよ。  ですから、私は…… ○委員長(阿達雅志君) 申合せの時間が参りましたので、おまとめください。 ○参考人(杉原浩司君) はい、分かりました。  リスクを高めることになっているので、今の政策が、これは誤りだと思います。  以上です。 ○羽田次郎君 ありがとうございました。 ○平木大作君 公明党の平木大作でございます。  本日は、三人の参考人の皆様、大変に貴重な御意見ありがとうございました。  まず初めに、尾上参考人、佐藤参考人にお伺いをしておきたいと思います。  この防衛基盤を強化するという上においてやはり私が一番悩ましいなと思うのが、そもそもどこまでを、あるいは何を自前で持っておくべきなのかということが本当に難しいなと。技術が進んできて新しい戦い方ということに備えなければいけないという点において、その技術を追いかけるということも当然大事だと思うんですが、じゃ、例えばそれを、最先端のものを米国が持っているんだったら、米国から持ってくればいいじゃないかという考え方もあるんだろうと思っています。  こういう中で、事前に読ませていただいた資料でも、でもそう簡単ではないんだということが書いてあったと思っておりまして、要は、同盟国である米国ですら、日本に例えば装備品を出す、あるいは技術を出すというときにはいろいろな反対があったり、ちゅうちょがあったりするということでありまして、ちょっとここについてしっかり理解をしておくということが大事かなというふうに思っております。  例えば、今回もトマホークを米国から日本に入れてくるわけでありますけれども、以前は打診したけれども断られたみたいな話を聞くこともあるわけでありますし、F15戦闘機みたいなものについても必ずしも米国の方で運用しているものと同じグレードのものが日本にはなかなか出てこないみたいなこともあったわけでありまして、こういう日本が必要としているような装備品なり技術なりというものが例えば同盟国から入ってこないときに、例えばどういうことが障害になるのか、どの辺がある意味日本としても考えておかなければいけないのかという点について、尾上参考人、佐藤参考人からお伺いできたらと思います。 ○参考人(尾上定正君) 平木先生、ありがとうございます。  御指摘のとおり、アメリカの装備品、特に航空自衛隊はFMSで輸入するものが非常に多いのが実態です。  以前は、F15にいたしましても、ライセンス国産ということで、一定程度の技術をライセンス供与して国内の産業がそれを製造あるいは修理をするということができておりました。ところが、F35等の最先端の戦闘機は、今ファイナル・アセンブリー・アンド・チェックアウトということで、言ってみれば、プラモデルを組み立てるようにそのパーツだけを輸入をして、それを国内で組み立てる、肝腎の中身についてはブラックボックスというのが実態なんですね。これは、アメリカの非常に強い技術の漏えいに対する危機感の結果、同盟国に対してもそういう機微な技術はリリースしないというのが今もうトレンドとなっております。  この結果生じることは、例えば修理が必要なF35について、診断はできますけれども、その中身の構成品の修理というのは、アメリカなりそれを製造している技術を持っている国に送り返さないと修理ができないということなんですね。結果、その修理に要する期間も延びますし、経費も高くなる。本当にタイムリーな修理をするということには非常に大きな問題があるということだと思います。  したがって、何を自前で持っておくべきかということは、そういったクリティカルな装備品の製造、修理に関わる技術ですとか能力、これはやはり国内で持っておくということが必要かと思います。 ○参考人(佐藤丙午君) 平木先生、ありがとうございます。  ライセンス国産の問題は非常に古い、古くからある問題でございまして、日本においては、ライセンス国産によって防衛装備を調達するということについて慣れ過ぎていたのかなというふうにも感じております。  実は、F35につきましては、ジョイント・ストライク・ファイターと呼ばれていた時代に、もうアメリカ側が、ライセンス国産も許さないと、技術をアメリカが独占し、ロジスティクス自体もアメリカで行うという方式に変わるんだということは日本に度々通知されておりましたけれども、それに対する感度というのは官にしても民にしても余り高くなかったように思います。私自身も、どこかで発表したときに、いや、ライセンス国産を待てばいいんだと、ライセンスをもらえるまで待てばいいんだというふうな声を多数聞いた記憶がございます。  このライセンスをめぐる政策というのは、アメリカにおいても、またヨーロッパにおいても、いろいろ大きく変動するものでございます。そういう意味において、ライセンス国産で先端兵器を調達するということには極めて大きな障害がそこに、問題点が生じるということは言うまでもないことでございます。  相手がそういう形の方式、ライセンス国産を余り簡単に供与しないという理由というのは二つございまして、一つが技術の漏えいを懸念するというようなことです。もう一つが、相手は我々の力をコントロールしようとするという政策的な動機があるということも考慮すべきだと思います。それは、アメリカにしてみても、日本の政策であるとか自衛隊の運用というのを米軍の想定の範囲の中で行うということを、たがをはめるための技術移転の在り方というのも当然のことながらありますので、その問題を我々が懸念するのであれば、要は、我々はアメリカの安全保障戦略とは別に個別の利益を追求するという動機を持つのであれば、当然のことながら国産で、国内にある程度の防衛装備技術を持ち、自国で先端兵器を製造できるような体制を取ることが非常に重要だというふうに思っております。 ○平木大作君 ありがとうございます。  杉原参考人にも一つお伺いしておきたいと思います。  冒頭で、そもそも輸出だけじゃなくて取引自体に反対なんだということもおっしゃいましたし、あるいは武器を装備品と呼び換えるのは欺瞞だという御主張もありましたから、そういう意味でいくとちょっとかみ合わないところもあるかもしれませんが、ただ、いろいろ今、現状取引がある中において、一つちょっと視点というか考え方を教えていただけたらと思うんですが、例えば、この防衛装備品の取引ということについても、いわゆる装備品と言われるものにもいろいろ幅があるというふうに思っております。すごく簡単に言ってしまえば、例えばミサイルですとか小銃ですとか、火力を持って実際に殺傷することができるようなものもあれば、火力はあるんだけれども、ミサイル防衛システムのような、いわゆる撃ち落とすと、被害を食い止めるということにしか使われないようなものもあると思っていますし、もっと言うと、レーダーのような、基本的には後方でしか使われない、あるいは何か火力を持っているようなものではない、こうあると思っております。  基本的に、例えば今その取引について、特にこういったもの、装備品の中で何か立て分けて考えたり、ここの部分はむしろやってもいいんじゃないかとか、そういうお考えがあるのかどうか。この区別の仕方というんでしょうか、そこの見方と、それに対するお考えというのを教えていただけたらと思います。 ○参考人(杉原浩司君) ありがとうございます。  確かに、おっしゃるように、僕は武器という言い方をしますけど、政府がずっと武器と言っていたのを二〇一四年に防衛装備移転と言葉を言い換えたわけですから、まあ武器と言った方が分かりやすいと思いますが、確かに武器といっても様々な幅がおっしゃられたようにあると思います。  今、それこそ与党協議で問題になっているのは、いわゆる殺傷能力のある武器の輸出を認めるかどうかということなわけですけれども、確かに、最終的にその殺傷能力のある戦闘機やミサイルの輸出まで認めてしまうということは、もしそれを輸出した後で、一定の事前に取決めはやるんだと思いますが、最後は責任を持ってそれ管理できないわけですよ、出してしまえば。例えば、韓国がフィリピンに輸出した戦闘機が国内の武装勢力の掃討作戦に使われて、殺傷に使われたりしているケースも実際にあるんですね。日本もフィリピンにどんどん出そうとしていますけれども、そういうことが、もしかするといずれ同じようなことになる可能性もあるわけです。  ですから、とにかく殺傷能力がある露骨な武器は絶対に僕は出すべきではないというふうに思います。  ただ、その上で、じゃ、防衛的な武器であればいいのかという議論があります。例えば、御存じだと思いますが、衆議院でも参考人質疑で、村山参考人がその守る武器をどんどん出していけということを言われていました。一つの意見としてあると思いますけれども。じゃ、守る武器といっても、結局は、単体では守るんですけれども、必ず軍事作戦の中のパーツとして使われていくわけですね。早い話が、防弾チョッキは、防弾チョッキを着けて戦えば相手を攻撃していけるわけですよ。ですから、全体のパッケージでやっぱり武器は考えなければいけない。  そうすると、どこに線引きを引くかというのは非常に難しくなるわけですから、私自身は、すっきりと、かつて武器輸出三原則で禁じていたように、憲法九条の理念を生かすのであれば、武器は基本的に出さないというところに立ち戻るべきであるというのが私の持論になります。  以上です。 ○平木大作君 ありがとうございます。  やはり、国民の皆さんに、この防衛装備品の移転ということについては様々な認識と理解があるんだろうと思っております。  その上で、改めて尾上参考人、そして佐藤参考人にまたお伺いしておきたいと思うんですが、この出していく上において、装備品をですね、やはりちゃんと、いわゆる出していくことの妥当性を政府からしっかりと発信をしていく、説明をしていくということが大事だと思っておりますし、また、透明性を確保すべきだということもいろいろ述べていただいていると思っています。例えば、第三者委員会みたいなものを設けてチェックをさせると、こういうことも国民の理解に資するものなんだろうというふうに思っております。  改めて、この国民の理解を得る、あるいは防衛産業のレピュテーションリスクを軽減するという意味でも、この移転の透明性、妥当性の確保というのは重要だと思っておりますけれども、具体的に、今政府の発信に何かもし欠けているところがあったら是非、こういうところをもっと踏み込んでいった方がいいということですとか、あるいは第三者委員会設置したときにどういうところをチェックしていくとよりその理解を得やすいんじゃないか、こういう点について御意見があれば是非お伺いしたいと思います。 ○参考人(尾上定正君) ありがとうございます。  移転の妥当性は、やはり目的によるんだと思います。ウクライナに対していろんなものを日本は支援をするということで、車両とかも新たに提供しますということを岸田総理はおっしゃられました。これは、明らかに侵略を受けている国に対して、自国を守る、自分の国民を守るために必要なものということで出しているわけですよね。それがどこまでであれば許されるのかというのは、それはそれぞれの国によって基準は違うと思います。  アメリカはその中でも一番たくさんお金も、それから装備品もウクライナに対して支援をしているわけですよね。それはやはり国民のサポートといいますか支持があってできる話だと思いますので、私は、なぜ日本がこの装備をこの国に移転しなければいけないのかという目的をしっかりと国民の皆様に説明をして、ここまでであれば日本としてやるべきだと考えるということをその都度説明をしていくということが必要かなというふうに思います。  私の説明の中で、ロシアの無人機が日本の一般用の、一般民生品を使っているという話がありました。これは規制するのは本当に難しいんですね。今、リスト規制ですとかキャッチオール規制で意図せずにそういう軍事利用されるようなものをチェックをして、できるだけ日本の企業がそういったことに巻き込まれないようにという輸出管理の仕組みはございますけれども、それでも現実はそういう形で使われてしまっているわけです。なので、この際に、防衛装備品あるいは武器と汎用品の区別というものは非常に難しいというふうに思います。  したがって、そこには、やはり企業が自分のその海外に輸出するものがどういう目的でどういうふうな形で使われるのかということを意識しながら商売をするということも必要になろうかというふうに思いますし、逆に、レピュテーションリスクということであれば、国がそういった目的でこの装備品をしっかりと移転をし、その国をサポートしていくんだと、能力構築支援していくんだということがあれば、企業も安心してレピュテーションリスクを気にせずに出すことができるのではないかなというふうに思います。 ○参考人(佐藤丙午君) ありがとうございます。  諸外国においても、輸出の妥当性をどのように評価するかというのは重要な課題であり、いろんな形で制限が課せられているのも事実でございます。  例えば、それは全体の金額に対して制限、制約を課すのか、また、今の輸出管理、安全保障貿易管理にあるように一定の能力に対して課すのか、これは、ライセンス国産、ライセンス生産を相手国に許さないというのが能力に対して課す制約の方式だと思いますけれども、それを含めて様々な制約の方法があると思います。  ただ、輸出の妥当性をどう評価するかというのは、恐らくそこには政策的な考慮が関わってくるでしょうし、相手国の関係を考えたときにはその政策的な妥当性が透明でないことの方が利益というケースというのも極めて多いと思います。  これは、先ほど松川先生の中、質疑の中で申し上げましたけれども、やはり日本から武器輸出、防衛装備輸出、移転を受けることで、日本の側に立って、日本の政策に従属するかのようなアピールになってしまえば、これは武器、防衛装備移転をする際のすごく大きなマイナスになってしまいますので、それは避けるべきだと思います。しかしながら、同時に、不必要な防衛装備移転若しくは地域を不安定にするような防衛装備移転につながることを確認する必要もあると思います。  そういう意味において、私は、ここでちょっと申し上げるのも非常に申し訳ありませんけれども、やはり立法府の方がある程度責任を負うのがこれが一つの方法だというふうに思いますし、その中で、もし妥当性を公開でやることに問題があるんだとすれば、国民の代表である議員の方々が責任を持って情報を保全した上で、ここの場で、外交防衛委員会等を含めた国会の中で真剣に議論していただくことを我々が信頼するという形を取るのも一つの方法ではないかというふうに思っております。  以上です。 ○平木大作君 大変にありがとうございました。  終わります。 ○音喜多駿君 日本維新の会の音喜多駿です。  今日は、三人の参考人の先生方、貴重なお時間をいただきまして、誠にありがとうございます。  我々日本維新の会も、今回のこの政府方針、法案については、我が国の安全保障を強化し、防衛産業を安定化させるための大きな一歩として前向きに評価し、衆議院でも賛成の立場から議論をしてまいりました。ですので、杉原参考人に是非、最初お伺いしたいんですけれども、今回のこの法案に極めて慎重な立場であるということはよく理解をできました。すると、今回、日本の防衛産業は、ではどのように保持あるいは育成をしていくのかと。  今回、この法案のような方向性じゃなくて、何かその方法があるのか、あるいは我が国のこの防衛産業というのは、保持やあるいは育成はする必要はないというふうにお考えなのか、その辺りの見解をお聞かせください。 ○参考人(杉原浩司君) 非常に重要な御質問をありがとうございます。  まず、私が一番やっぱりやめてほしいと思っているのは、別に防衛産業をすぐにやめてくれというふうに言っているわけじゃないんです。海外にメード・イン・ジャパンの武器をやっぱり輸出する、あるいは無償で供与する。今回、外務省も武器を無償で供与する仕組みを突然作っていますよね。これも一体だと思うんですけれども、武器輸出と。こういう形で、武器というのはやっぱり人を殺傷し、物を破壊する、町を破壊するためのもので、幾ら防衛のためと言っても、出してしまったらコントロールできないんですよ。ですから、日本は憲法九条を持っている以上、そこは抑制するというのが戦後の長い立場であったわけで、そこに立ち戻ってほしいということを言っているわけです。  加えて言うと、最初に松川議員の方から、質問ではないですが、私向けに、死の商人というレッテル貼りは、防衛産業の皆さんに後ろ指を指されるようなことであり、やってはいけないというコメントありましたけれども、私が言いたいのは、防衛産業の方々にとって、従来どおり自衛のための武器を造るのか、あるいは敵基地攻撃に使われたり、あるいは武器輸出されることによって、その武器が他国の人々を殺傷しかねないようなことになる、そういう武器を造るのかというのは全然違うと思うんですね、当事者の受け止めとして。非常にやっぱりしんどいことだと思うんです、他国の人々を殺すことにつながりかねないというような形になることは。  ですから、私は、防衛産業の皆さんに後ろ指を指そうとしているんじゃなくて、防衛産業の皆さんが後ろ指を指されるようなことをやらせようとしているのが、武器輸出を促進しようとしている政府・与党であり、それを更に進めるこの法案に賛成されている会派の皆さんじゃないんですかということを言いたいんです。  ですから、日本の防衛産業は、自衛である以上、もちろん一定の役割を果たさなければいけないんだろうと思います。ただ、私は、いずれは、軍民転換という言葉はありますけれども、いずれはもっと平和的な産業へと転換していってほしい。そのためには、緊張を緩和し、地域の軍縮や安全保障をしっかりと担保していくプロセスと一体で進めなければいけませんけれども、いずれは軍民転換していってほしいですが、少なくとも、武器を輸出する、あるいは敵基地攻撃に使うというような形で当事者のメーカーの人たち自身を追い込むようなことはやめてほしいということを訴えています。  以上です。 ○音喜多駿君 我が党とも考え方が異なる部分はありますが、防衛産業を今々すぐなくすべきと考えているわけじゃないという点では認識が共有できたのかなというふうに思います。  もう一点伺いたいんですけれども、軍功とか軍拡という形で今回のこの法案に対して厳しい視点をお持ちかと思うんですが、確かに、こちらも軍縮をするから世界も軍縮をしていこうという話合いで軍縮が進んでいく、これは理想のゴールの一つだとは思います。  ただ一方で、例えば、今現実を見ると、日本というのは経済成長しなかったこともありますが、防衛費というのはほとんど増えてこなかった。その間に、お隣の中国ではもう軍事費が物すごい勢いで増えているというこの一事をもっても、こちらが軍拡をしなければ、防衛費を増額しなければ相手もしない、こちらが減らせば相手も減らすというようなことは、やはりちょっと、国際社会の中ではなかなかリアリティーとしては難しいのかなと思うんですが、その点についての御見解をお願いいたします。 ○参考人(杉原浩司君) ありがとうございます。  確かに、中国は経済成長しているということもあってかなりのスピードでもう軍拡をしています。それは事実としてそうですね。ですから、まあはっきり言ってしまえば、その中国の今の軍拡の勢いを見たときに、それに張り合って日本が軍拡しようとしたときに、私は、今日、陳述のタイトルに貧国強兵という言葉を付けましたけれども、むしろ、そのことは日本自身の経済や社会というものをむしばむことにしかならないんじゃないかと。だって、張り合っても恐らく無理なんですよ。  ですから、一定の防衛力の整備という発想はお立場として分かりますけれども、少なくとも今の岸田政権がやっている四十三兆円、武器ローンも入れて六十兆円のこの異常な大軍拡というものは、貧国強兵をもたらすことはあっても、決して安全保障環境を良くすることにつながらない。むしろ、リスクを高めて、結局戦争の準備をすれば戦争を近づけるんですね。それはアメリカ見れば分かるじゃないですか。戦争の準備をして、戦争の訓練をして、世界中で戦争を引き起こしてきたのがアメリカですよ。そのまねをするんですかということだと思います。  ですから、そこはもう腹をくくって、緊張の緩和であったり、信頼醸成、なくなってしまったINF条約のようなものをもう一度東アジアで作っていくような地道な軍縮交渉のイニシアチブを取るとか、できることは幾らでもある。あるいは、アメリカに核兵器の先制不使用を迫って、そのことによって中国の核軍拡もセーブするような方向に導くとか、もっといろいろな発想で大胆に外交努力をすべきであって、なぜ単純に軍拡すれば安全になるというところに行ってしまうのかということが僕は非常に疑問です。  以上です。 ○音喜多駿君 ありがとうございます。  腹をくくってというお言葉がありましたけれども、これは要は政治決断という部分があるんだと思います。外交や安全保障においては、何か正解があるというわけではない中で様々な情報を分析して、やはり、国家、政治家というのは決断していかなきゃいけないと。  それなら、我々としては、やはり厳しい安全保障環境の中では一定の防衛費の増強は必要だと思っておりますし、杉原参考人のようなお考えもあるんだと思います。様々な角度からこれからも議論をしていきたいと思いますけれども、願わくば、死の商人とか強い言葉もあるんですけれども、やっぱりこれは、私は平和を目指すということの一致点は変わらないと思うんですね。これは防衛に使うのか、あるいは、時に矛になるのか盾になるのかというのは非常に難しい状況もある中で議論をしているわけですので、できる限り前を向いてというか、そういった議論を今後もしていければと思います。これは質問ではございませんけれども、今後もいろいろと御意見、参考させていただきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。  では、残された時間……(発言する者あり)はい、ありがとうございます。  では、尾上参考人と佐藤参考人にそれぞれお伺いしたいんですが、この技術力の重要性というのはもうお二方とも冒頭陳述で触れられていただいたと思うんですけれども、そもそも、今、我が国の政府、防衛省がこの民間の企業の最先端の技術力を適正に評価できているのかどうかという点について私は非常に疑問を持ったりしているわけですけれども、その点の評価をそれぞれからちょっとお伺いできればと思うんですが、お願いいたします。 ○参考人(尾上定正君) できていないと思います。  私の説明の中でも申し上げましたとおり、今までの自衛隊の発想は、今あるものの機種更新で新しいものを導入していきましょうといったような、何というんですか、従来型の技術開発ですとか装備調達がずっと続いてきたと。企業の方も、その自衛隊側の要求に満たすような形でやれば大体うまくいってきたというのが実態かと思います。  ところが、先ほど申し上げましたように、今までそういう防衛に余り使われていなかった様々な民間の新しい技術がどんどんどんどんその軍事を変えていっているわけなんですね。本来であれば、運用に携わる自衛隊がそういった技術革新ですとか新しい技術に敏感になって、どういうふうにそれを防衛力に転換していくべきかというのを考えるべきなんですけれども、なかなかそこまでの人的なゆとりも、あるいはそういったことに対する必要性というものも認識されてこなかったということなんだと思うんですよね。  逆に、先端技術を開発している民間企業は、それがまさか軍事にこういうふうな形で使われるということを考えてもいないということなんだと思うんですよね。  したがって、お互いに入っているそのタコつぼからやっぱり出てきて、で、お互いのタコつぼの中に入ってみて、ああ、こういうことができるのかということを認識をして、あるいは逆に、これが今後考えていかなければいけない両用技術の使い方なんだということをお互いに考えていく必要があるかなと思います。  例えば、3Dプリンターありますけれども、これは、先ほど来出ております国内の製造、修理基盤をひょっとしたら革命的に変える可能性もあるわけなんですね。ところが、自衛隊あるいは米軍、自衛隊はその米軍のミルスペックという規格をずっと使ってきましたので、非常に厳しい運用環境の下での安全性ですとか、そういったものをそれぞれのその装備品に求めています。形は似ててもぱきっと折れてしまったりすると使えないわけなんですね。あるいは、上空に上がったときの温度変化、気圧変化に耐えられなければいけないと。そういったものももちろんあるんですけれども、3Dプリンターのその性能が上がればそのまま、ミルスペックに応じる応じない、余り関係なく、使える可能性というのももちろんあります。  これは本当に端的な一例ではあるんですけれども、そういった技術を自衛隊側としても気付く必要がありますし、逆に企業側としても、それを、そういった使い方があるのだということをやっぱり意識をする必要があると。目利きという言葉がよく使われますけれども、目利きは簡単にはできないので、やっぱりそういったことを繰り返しながらお互いに磨いていくということが必要かと思います。 ○参考人(佐藤丙午君) ありがとうございます。  結論としては恐らく尾上先生と同じことになるんでしょうけれども、私自身は、一番、スタート、一番最初のポイントとしては、今の自衛隊は非常に適切に技術を評価しているというふうに考えております。ただし、これは、今の自衛隊の装備を運用するための技術を自衛隊は十分に把握しているかということになると、これは十分に把握しているというふうに考えるんですが、将来の戦術、運用構想においてどれだけの可能性があり、その可能性に対してどれだけの技術を活用することができるかというところについての、まあいわゆる必要性ですね、それについては十分に評価できていないというふうに考えております。  これ、前に、私もこの外交防衛委員会に前お招きいただいたときは無人兵器の話をさせていただきましたが、無人兵器の話が国際社会の中で出てきたときは、そのドローンであるとかAIであるとか、そういう技術の問題について自衛隊の感度というのは正直言って非常に低かったと思います。何で低いのかという話を、いろんな話、プライベートを含めて聞いていきますと、それは今の防衛大綱に書いてありますかであるとか、今の自衛隊の運用構想の中にドローンとかAIをどう活用するかということが書いてありますかと、書いてないでしょうと、だから必要ないんですというふうな議論になっていったことがあり、私自身も、ああ、そういう発想なのかというふうにちょっと感動したことがございます。  要は、新しい技術について自衛隊は非常に保守的であり、これは保守的である理由が恐らくあると思うんですけれども、しかしながら、技術の可能性、重要性というものが注目される局面においては、より自衛隊は積極的に技術の運用の可能性というものを追求していくべきだというふうに考えておりますので、そういう意味においては、今の技術評価が十分かというふうになると、自衛隊の認識も変わったということもあり、不十分な評価の下に行われているので、この欲求不満状態を自衛隊としては効率的に解消してほしいなというふうに考えております。 ○音喜多駿君 ありがとうございます。  最後、じゃ、もう一問、尾上参考人ですね。  私たち日本維新の会は自衛隊員の待遇改善とずっと取り組んできまして、退役OBの再就職ということで、防衛産業に就職できた方はそれなりの待遇なんだけれども、それ以外の就職では結構待遇が下がってしまうということに一つ問題を感じておりました。  今回この法律が制定することでそういったOBの再就職というのにどのような影響が考えられるか、そして、政府とか防衛省として更にそういったものに対して支援とか改善点とか何か御提案があればお聞かせいただきたいんですが、いかがでしょうか。 ○参考人(尾上定正君) 私もOBになりまして、民間のその厳しさというんですか、それを実感をしているところです。幸い、いろいろな活動をするに支障のあるようなことはありませんし、OBとして十分処遇をしていただいているなというふうに思っております。そういう意味で、自衛官のその待遇改善に取り組んでいただく、OBを含めてですね、いただいていることに感謝いたしたいと思います。ありがとうございます。  OBについては、先ほどの癒着の話にも関連するかと思うんですけれども、やはりいろんな形で利益誘導を図りたいというその企業の意図があるのも確かだと思いますし、率直に申し上げて、自衛隊のOBは、職種、自分の与えられた任務を遂行するのに必要な技能を磨くことに一生懸命、三十年、四十年時間を掛けますので、民間の企業に就職、再就職をしたときにそれが本当に役に立つのかどうか。リスキリングという言葉はありますけれども、本当はそのリスキリングをしてOBをきちんと役に立つような働き方をしてもらうということが必要じゃないかなと思います。  自衛官の定数というのは全然増えないということが三文書ではっきり書かれていますし、少子化を見れば、増やすと書いても実際に増やすのは難しいと思いますから、いろんな形でそのマンパワーを確保していく、そしてまた防衛に本当に必要なところにそのマンパワーを集中していくということが必要かと思います。  その意味で、OBは非常にポテンシャルを持っていると思いますから、そのOBを自衛隊の能力発揮の場面でどういうふうに使っていくか。また、それを民間企業の皆様との間で、懸け橋というんですか、先ほど言ったように、民間の持っているその技術とそれから自衛隊の運用をつなぐ、交流させることが非常に重要になりますので、それをOBは十分果たし得るポテンシャルを持っているんではないかなと思います。  したがって、処遇をしっかりしていただくということも十分必要だとは思いますけれども…… ○委員長(阿達雅志君) 申合せの時間が参りましたので、おまとめください。 ○参考人(尾上定正君) はい。  必要だと思いますけれども、OBの活用ということを是非御検討いただければと思います。 ○音喜多駿君 時間になりましたので、終わります。ありがとうございました。 ○榛葉賀津也君 国民民主党・新緑風会の榛葉でございます。  今日は三名の参考人の皆さん、本当にありがとうございます。  私から尾上参考人と佐藤参考人にそれぞれお伺いしたいと思いますが、今回の防衛基盤強化法、我々国民民主党も我が国の安全保障にとりまして大きな一歩であると高く評価をしたいと思います。  防衛省若しくは防衛装備庁にとって初めてのこれは産業支援法と言われていまして、これがうまく運用できるかどうか注目が集まっているところで、失敗は許されないと思っていますし、他方で、経産省を含む他の省庁がお手並み拝見で傍観されてもこれは困るわけでございまして、オールジャパンでこれはしっかりやらなければならないと思っています。  私は、この方向性賛成なんですが、実は若干物足りなさも感じていて、いろんなところで防衛省が妥協せざるを得なかったところも多々あるやに感じます。例えば、サプライチェーンの調査で、セキュリティーの脆弱性であるとか海外リスクが判明しても調達先の変更命令ができる仕組みになっていなかったり、基金を新設して企業を支援する仕組みができたんですが、使途が海外移転の際に求められる装備品の仕様変更のみに限定されていたり、秘密の保全の罰則規定を付けるのもいいんですけれども、そもそも、サイバーセキュリティーをしっかりやったところに減税措置を講じるとか、もっと違うインセンティブのやり方があるのではないかとも感じますし、そもそも防衛装備庁そのものが一千九百名の人員で、この体制でどれだけできるんだということを強く感じます。  両参考人に、時間全部使っていただいても結構ですので、この物足りなさとか、ここちょっと詰め甘いんじゃないかと、若しくはここ改善できるんじゃないかと、その思いのたけを吐露していただきたいと思いますので、両参考人、よろしくお願いしたいと思います。 ○参考人(尾上定正君) 榛葉先生、ありがとうございます。  産業支援法というお言葉が出て、そういう捉え方なんだなというふうに思いました。で、私の説明の中でも、やっぱり経済安保推進法とこの防衛生産・技術基盤強化法が別建てにどうしてもなっていると、これは本来であれば、経済安全保障というのは経済力を使って防衛力を強くしていくと、防衛産業というのは、私は国民の安全と安心を保障する基盤となるインフラというふうにお話しさせていただきましたけれども、当然、その経済安全保障推進法の中にも防衛産業に対する配慮があってしかるべきだと思うんですね。  一方で、やはりその防衛産業というのは、かなり特殊なリクワイアメント、セキュリティーですとかそういったことも含めて必要になりますので、これは切り分けてやった方がいいという御判断で別建てになったんだろうと思いますが、やはりその防衛産業だけを産業支援していくということではなく、経済安全保障と一体となって防衛産業を防衛生産・技術基盤に拡大をしていくということが私は必要だろうと思います。  したがって、今は別建てになっておりますけれども、様々な、経済安全保障推進法で制度化される、例えば重要技術の育成プログラムですとか、そういったものが安全保障に貢献するというのは当然のことだと思いますので、そういうその垣根を取り払っていくということが必要かなというふうに思います。したがって、この防衛生産・技術基盤強化法は第一歩であるというふうに思いますので、そこの部分は更に法律ができた後に改善を加えていっていただいて、最終的には経済安全保障推進法と一体となったような、そういう形になるのが私は望ましいのではないかなというふうに思います。  それから、ATLAが千九百人、大変お忙しいし、よくこの法案をまとめて国会に提出されたなというふうに思っております。本当に敬意を表したいと思いますが、やはりその限られた人間でできることというのは限界があると思いますし、先ほど来御議論いただいております装備移転の話につきましても、やはり新しい装備移転を追求していくためには、新しい制度も必要になってきますでしょうし、先ほど申し上げました、その輸出貿易管理法の下で行われている経済産業省の取組、これともやはりうまく組み合わせていく必要があるんじゃないかなと思うんですよね。したがって、限られた人間でそういった装備移転を効率的に推進し、また、出してはいけない汎用品をきちんとチェックできるようなワンストップサービスのようなものを経済安全保障、経済産業省に設け、そこに目利きのできる、運用に習熟した人が入っていくといったような形も必要かなと思います。  また、私は、国の政策として装備移転は推進すべきだというふうに考えておりますので、そのためには、アメリカのFMSをつかさどるような、ミューチュアル・ディフェンス・アシスタンス・オフィスというのがありますので、それに準じるような組織も防衛省若しくは内閣府等の政府を代表する組織として置く必要があるんではないかなというふうに考えております。  いずれにしましても、この法律、経済安全保障推進法を含めて、目的を達成するためにいろんな措置が行われるわけですが、その実効性をどうやって担保していくのかというのが次の課題として非常に大きいと思うんですね。したがって、これは防衛省だけではなく政府全体としての取組も必要になりますし、両用技術を有している民間企業のことを考えますと、防衛産業だけではなくって、そういった一般産業の参加も当然必要になってきますので、そこは国を挙げたやっぱり議論が必要かなというふうに考えております。 ○参考人(佐藤丙午君) 榛葉先生、ありがとうございます。  もうこれだけ非常に練られた法案ですので、それに対して不満を申せというのは非常に酷な質問かなというふうに思ったんですけれども、しかしながら、あえて、防衛生産問題とか軍備管理・軍縮を長年研究してきた者として、三点ほど申し上げることができればなというふうに思っております。  まず最初に、その防衛生産というときの防衛の定義、範囲の問題でございます。  これは、米国に国防生産法がございますけれども、これはかなり幅広く、国民の安全保障に関わる、軍事、安全保障に関わる問題じゃない領域の問題においても国が直接的に支援をする体制というのができ上がっております。  そういう意味で考えると、今の防衛生産基盤強化法の中で言うところの防衛というのは防衛省・自衛隊との関係のみに注目しているような側面があるように思いますので、恐らく防衛産業、今、防衛プライムコントラクターもそういうふうに理解していると思いますが、実際、国防、安全保障に関わる産業基盤というのは、COVID―19もそうですけれども、ワクチンも含めて、また、将来的には遺伝子工学などの生化学も含めて非常に幅広いものがあると思います。その範囲を最初から防衛、いわゆる防衛省のプライムコントラクターというコンテクストの中だけでとどめておくというのは非常にもったいないと思いますし、それは将来的に不適切な状況が出てくるのではないかなというふうに思います。  そのときに新しい法律を作ってその場での対応を繰り返すというのは、その状況状況を適切に反映するという意味においては非常にすばらしいでしょうけれども、国内の技術基盤をどういう形で外交・安全保障に活用できるかということについての包括的な法案というものに発展させていくのも、発展させていくのは一つの手なのかなというふうに思っております。  それと関連する形で、これはまだ一番目の話になりますけれども、やはり今回、ウクライナ問題で非常に明らかになった、国際的に明らかになったことには、やはり有事生産体制にどうやって切り替えるかというのは非常に難しいんだな、アメリカにおいても難しいんだなということに気付かされました。  この有事生産体制への切替えというのは、これはアメリカにおいてウクライナ戦争の前から実は指摘されていた内容だったんですけれども、私自身もこんな問題があるのかと関心を持っていただけで、それがどれほど深刻な問題かということにお恥ずかしながら気付きませんでした。それが、今回ウクライナ問題が発生する中で、国内の、アメリカ国内の防衛生産体制というものをどういう形で、米国にとって必要な防衛生産を重点的に配置していくかということについての管理体制というものが実は極めて重要なんだなということに気付かされました。  これは非常にトリッキーな問題ではありますけれども、第二次世界大戦中の軍事への、軍事生産ボードですね、ウォータイムプロダクションボードの体制に近いのかもしれませんけれども、そういうところに至らないまでにしても、やはり平時と有事の生産体制の調整をどういうふうな、切替えをどう行うのかということは非常に重要な課題だなというふうに思っております。  二番目の問題として、やはり先ほど尾上先生がおっしゃった経済安全保障との関連というのは極めて重要な問題だというふうに考えております。  経済安全保障推進法案の中でも、私自身も内閣府の方の審議会で議論に参加させていただいておりますけれども、やはりこのデュアルユース、この多義性というものの範囲、そしてその可能性をどういうふうに評価するかという問題は極めて重要な議論だったなと、議論であるなというふうに思っておりますし、その中に外交・安全保障を入れるか入れないかという問題というのは、日本国内のそういう問題に対する抵抗感を含めて考えたときには極めてセンシティブな、政治的にもまた社会的にもセンシティブな問題なんだなということに気付かされております。  しかしながら、同時に、アメリカにおけるDARPA、またヨーロッパにおけるディフェンスエージェンシー、ヨーロッパ・ディフェンスエージェンシーの問題見ていると、やはり技術開発というのをどういう形で兵器システムの開発に続けていくかというのは、企業にとってみても、また技術者にとってみても非常に魅力的なプロジェクトであるということにも気付かされております。  で、このいわゆる兵器システムの、兵器開発のエコシステムをどういうふうにつくるか、これについても今回の法案の先に検討していただければというふうに思っております。  三番目の点、ごく短く申し上げますけれども、やはり輸出、装備移転の問題を考えるときには、マーケティングをどうするかという問題は非常に大きいと思います。  先ほど退職自衛官の活用のお話を音喜多先生の方から伺いましたけれども、やはり諸外国を見ていると、退職自衛官が様々な地域におけるマーケティングにおいて極めて大きな役割を果たしているという現状を見るにつけ、日本の自衛隊の退職先として、再雇用の先として政府がそういうふうなマーケティングの機能を追加し、そこに退職自衛官の再就職をあっせんしていく、協力していくというのも一つの手なのかなというふうに思っております。  しかしながら、いずれにせよ、そのマーケティングというのは、同時に必要な、防衛生産の問題を考えるときに同時に必要な機能でございますので、これについての言及というのを将来検討していただければ有り難いかなというふうに思っております。  以上でございます。 ○榛葉賀津也君 ありがとうございます。  杉原参考人にも聞こうと思ったんですが、時間がなくなってしまいまして、杉原参考人の平和を希求する気持ちがひしひしと伝わってまいりました。その思いは私も全く変わりませんが、若干手法が違うんだなと思いましたが、改めて敬意を表しまして、終わりたいと思います。 ○山添拓君 日本共産党の山添拓です。  参考人の皆さん、今日はありがとうございました。  尾上参考人にまず伺いたいと思います。  航空自衛隊の御出身でもあるということで、是非御所見をと思いますが、安保三文書では、統合防空ミサイル防衛能力、IAMDの強化がうたわれています。ネットワークを通じて、各種のセンサーやシューターを一元的に、かつまた最適に運用できる体制を確立していくということがうたわれております。これは米軍が世界的にも求めてきているものかと思います。  日本がこのIAMDを構築することは、インド太平洋地域の安全保障に関して、アメリカにとってはどのような意味があるものだとお考えでしょうか。 ○参考人(尾上定正君) ありがとうございます。  IAMDの強化というのは、抜本的に防衛力を強化をする七つのうちの重要な二番目の柱だったと思います。  日本を取り巻く厳しい安全保障環境を見たときに、やはり一番重大で深刻な懸念というのは、北朝鮮の核開発、ミサイル発射だと思います。ここ一、二年の北朝鮮のそのミサイル発射の数というのは異常なぐらい増えておりますし、それからまた、その内容も、極超音速ミサイルを含んだり、あるいは軌道を変更するようなミサイルも撃っていると。運用能力を高めるということを目的に、様々な発射の形態、列車で移動するプラットフォームから発射をしたり、あるいは潜水艦を追求したりといったような形になっているわけなんですね。  したがって、この北朝鮮のミサイル脅威に対してどういうふうに我が国を守るかというのは、これはもう本当に真剣に考えなければいけない話だと思います。  これまで自衛隊は、弾道ミサイル防衛、BMDシステムというのを構築をして、実際それを運用してきたわけですね。今般、北朝鮮が衛星を打ち上げるということを通告いたしましたので、万が一それが日本に着弾するようなことがあってはならないわけですから、既存の弾道ミサイル防衛システムを使ってその可能性に対処する態勢をやっぱり取るわけです。ところが、今の弾道ミサイル防衛システムでは、やはりその極超音速ミサイルですとか軌道を変更するミサイルに対処するのは極めて困難だというふうに言われておりますので、その対処する態勢を構築するというのが、まずやはり重要だと思います。  これは、アメリカとの関係というよりは、むしろ、アメリカが持っている様々な衛星情報ですとか、そういったものを日本の防衛のためにいかに活用していくかという発想かなというふうに思っております。  アメリカは、もちろん、北朝鮮がICBM、大陸間弾道ミサイルを開発をして、アメリカ本土を脅かすような核ミサイルを持つと、これはもう本当に真剣にアメリカは防衛のために考えると思いますけれども、今のところは、同盟国である日本あるいは韓国をその北朝鮮の核ミサイルの脅威からどうやって防衛をするかという間接的な話なんですね。したがって、主体は日本だと思いますので、日本の防衛のためにIAMDは必要であるというふうに考えております。 ○山添拓君 ありがとうございます。  次に、佐藤参考人に伺いたいと思います。  癒着の話が、官民の癒着の話が先ほど来少し出ております。  羽田議員の質問に対して、癒着が生じるのは、官の裁量の大きいときに民が必要以上に寄り添うと、こういう中で生まれてきたのではないかという御所見も述べられ、なるほどなと思ったんですが、今度の法案では、支援をする企業は、大臣認定による計画を実施していく企業が対象となっています。あるいは、輸出に関して言えば、指定法人を通じた助成金の交付という形です。さらに、国有化ということもありますが、これはむしろ国の裁量を強化していく、拡大していくような法案ということでもあると思うんですね。その意味で、この法案によって進めようとしている種々の支援というのも、佐藤参考人の言葉で言えばかなり悩ましいたぐいのものということになるのでしょうか。 ○参考人(佐藤丙午君) ありがとうございます。  先ほど羽田先生の御質問に答えて、官民の癒着の場合は、官の裁量が大きい場合に民がそれに過剰に寄り添うときにそういうことが起こるというふうに申し上げました。  過去の防衛省における不祥事を見ている限りにおいては、やはり、官の意向に過剰にそんたくし、官の意向を先取りする形で民間企業が動くところに様々な問題が生じてきた過去があるように思います。そういう意味においても、今回この基盤強化法の中で、官が認定し官の裁量を増やすというところにおいてやはり潜在的にはそういうリスクがあると思いますので、その癒着をいかに防止し公正な競争を担保するかということが、この法案を円滑に進める際の一つの肝といいますか、鍵といいますか、非常に重要なポイントだと思います。 ○山添拓君 佐藤参考人、加えて伺いますと、その意味で、この法案では、防衛大臣の判断に委ねて、政令など下位の規範に委ねているところが幾つかあるかと思います。それらは法案審議の中では必ずしも明らかにされていないところかと思うのですが、そういった点で、少なくともこのような点は、先ほど透明性という話もありましたが、透明性の確保のためにこういう点は必要だと、癒着は構造的に生まれやすい問題だとは思いますので、何か御意見がありましたら伺えればと思います。 ○参考人(佐藤丙午君) 官民の癒着を防ぐための制度的な様々な工夫というのは、防衛省の中にもあると思いますし、また、予算の審議を通じて、立法府においても様々な探求というのはなされていくものだというふうに考えております。  国民の一人としては、やはり防衛大臣を含めて政治の責任というのを非常に重く考えておりますので、その政治の責任の中で、透明性の担保、またそれが公正に運営されているという、公正に運営、運用されているということをモニターしていっていただければ有り難いというふうに考えております。 ○山添拓君 ありがとうございます。  杉原参考人に伺います。  日本は長く武器輸出の禁止を国是としてきましたが、先ほども御答弁があったように、二〇一四年、安倍内閣の下で防衛装備移転三原則で百八十度転換され、その後も拡大されてきました。  武器輸出禁止が言わばなし崩しにされてきたと思います。その経過ですとか、それについてのお考えについてお示しいただければと思います。 ○参考人(杉原浩司君) ありがとうございます。  皆さん外交防衛委員ですから御存じのことなんですが、六七年、七六年、佐藤内閣、三木内閣によって事実上の全面禁輸、輸出禁止になったわけですが、八五年に中曽根内閣が対米武器技術供与を解禁し、そして、二〇〇四年、五年にミサイル防衛の日米共同開発で穴を空け、さらに、野田民主党政権が武器の国際共同開発を丸ごと例外化するという形で大きな穴を空け、最終的に安倍政権が二〇一四年に原則そのものを撤廃したと。しかも、閣議決定だけで撤廃したわけですね。  私、そのこと自体が非常に問題だと思っていまして、なぜかといえば、かつての武器輸出三原則というのは、八〇年代に衆参両院で全会一致で、厳格に守るべきだという決議を上げているわけです。ですから、閣議決定だけでそれを撤廃するんじゃなくて、少なくとも再び全会一致の決議を衆参で取って転換するんだという、それぐらい重い国是とまで言われた平和原則だったわけですが、それをいとも簡単に安倍政権が閣議決定で撤廃して、それ自体がやっぱり暴挙だと思うんですね。  その前提の上で、今回、安倍さんがやりたかったことを菅さんが先送りし、そして岸田さんがいよいよ、一つは、敵基地攻撃能力の保有にお墨付きを与え、そして今、自公の与党協議によって、これも秘密協議です、何も分からない、私たちには。しかも国会は無視するわけですね、このまま行けば。与党だけで、秘密協議によって殺傷能力のある武器の輸出にかじを切るかもしれないという、そういう重大なある意味最終的な段階に来ているということ自体が非常に問題で、私が強く訴えたいのは、先ほど佐藤参考人の方からも、武器輸出の妥当性について国会が責任を負うべきだという意見ありました。それと同じように、今回、殺傷能力のある武器輸出まで解禁しようとする、もしそういう決定を自公が与党協議でやろうとするのであれば、少なくとも最終決定の前に必ず国会を関与させるべきだと思うんですね。方法はいろいろあると思います。この委員会でやっぱりしっかりとした審議時間を取って集中審議なりをするなり、あるいは特別委員会を設置してもいいです。公聴会やパブリックコメントだって必要だと思います。  それぐらい重みのある決定なわけですから、絶対に与党協議のみでさせない、立法府として、武器輸出、賛否にかかわらず、それぐらいのやっぱり立法府としての責任を是非果たしていただきたいというふうに思っています。 ○山添拓君 ありがとうございます。  もう一点、杉原参考人に伺います。  本法案は、企業に対しても、従業員に対しても、軍需産業への一層の適応を求めて、そしてこれに応じる企業には様々な支援メニューを用意しています。中小の事業者を含めて、産業の軍事化を進めることになるだろうと思います。  この間の政治を全体として見ますと、例えば学術会議への行政の介入は、軍事研究解禁への圧力という側面があろうかと思います。あるいは、経済安全保障、今日も話題に上っていますが、これも米中対立の中で、経済を軍事に従属させようとする動きと言えると思います。  こうした産業や経済、学問など、社会の全体を軍事中心に言わば誘導するような動きに関わって、是非御所見を伺えればと思います。 ○参考人(杉原浩司君) ありがとうございます。  おっしゃるとおりなんですね。  先ほど尾上参考人の方からも、経済安保法と一体なんだというお話がありました。ある意味、確かにそうなんです。逆に言うと、私から見れば、山添議員がおっしゃったことと同じなんですが、今進んでいる事態というのは、本当に、日本の国家、ある意味総動員で、学術も技術もあるいは産業も経済も、やはり戦争の準備のような形で軍事的な方向に全体が今進んでいるというふうに思うんですね。  学術会議についても、おっしゃられたとおり、防衛省の軍事研究推進制度に慎重な対応を示した声明を出したわけです。それに対してやはり自民党などは、何を言っているんだということで、そうであれば、結局今進んでいる事態は、軍事研究制度、防衛省の制度には大学の応募がもう激減している。じゃ、もうそこは無視して、経済安全保障法によって五千億円の基金を積んで、研究者を一本釣りしていくという、そういうある意味別の方向から軍事研究の誘導を行っている。  御存じだと思いますが、元国家安全保障局の次長の兼原信克さんは、最近では、筑波研究学園都市のような軍事研究に特化した学園都市をつくれと、一兆円を付けて横須賀辺りにつくれみたいなことを堂々と言い出している。これも、かつてであれば荒唐無稽な意見だったんですが、今の状況だと実現しかねないような状況になっていて、私たちも本当に対応できないぐらい様々な分野で軍事的な方向がかじを切られている。やっぱり、私たち、日本の平和主義にとって非常に大きな正念場だと思っています。  世論は必ずしもそこに全て誘導されているわけではないわけですね。武器輸出についての非常に慎重な世論がまだしっかりとある。そういう中で、国会との乖離が激し過ぎると僕は思っています。ですから、もっとバランスの取れた議論をしていただきたい。衆議院の参考人、四人とも法案賛成派ですよ。参議院でようやく私が何か異物であるかのように入っているけれども、これバランス悪過ぎます。  幾ら賛成会派が多いといっても、だからこそ批判的な意見をきちっと受け止めて議論するのが参議院としての良識の府だと僕は思うんですね。そういう懐の深さを持って、今のこの全面的な軍事化とも言うべき国の曲がり角、もっと慎重にこれでいいのかどうかを見極めながら議論をしていただきたいと強く思っています。 ○山添拓君 重く受け止めて審議に当たりたいと思います。  杉原参考人に残りの時間で簡潔にお答えいただければ有り難いですが、武器取引反対ネットワークの活動を拝見しますと、軍需産業を構成する大企業に対して直接の要請やいろんな申入れなどを行ってこられたと思います。企業側の対応で何か印象的だった出来事がありましたら、最後に御紹介ください。 ○参考人(杉原浩司君) 有り難い質問です。  私たちの活動って本当に地道で、企業に申入れに行ったり、あるいははがきを送って武器輸出をやめてください。最近の例でいえば、三月十五日に幕張メッセで行われた武器見本市で、イスラエルのエルビット・システムズという軍事企業があります。これ、パレスチナ人を実験台に武器を開発してきた、まさに死の商人だと私は思いますが、そこと提携して日本で売り込みを手伝うという日本エヤークラフトサプライさんと伊藤忠アビエーションさんが契約を取り交わして、見本市の会場でシャンパンを乾杯したんですね。ここまで日本は来ているんです。ですから、私たちは、それをやめてほしい、政権が替わらなくとも企業がやめれば実現しないわけですから、そこに働きかけをやってきました。  今まで成果は余りないんですが、唯一あったのは、二〇一八年の夏に川崎の市営のスポーツ施設で行われたイスラエルの監視カメラやサイバーセキュリティー製品の、まあ武器ではないですが、準武器のような見本市について反対の取組をした結果、この見本市に最も日本の企業で前のめりになっていたソフトバンクさんが出展も協賛もスピーチも全て、直前ですが、取りやめたんですね。それは私たちが働きかけて、地元の神奈川新聞さんがしっかり報じてくれることによって、このまま突っ込めば企業としてのイメージダウンにつながるということで決断をされたわけです。 ○委員長(阿達雅志君) 申合せの時間が参りましたので、おまとめください。 ○参考人(杉原浩司君) ですから、私たちの取組は無駄ではない。市民として、消費者として企業に対して物を申していくということは、権利でもあるし、力もあるということを議員の皆さんにも理解していただきたい、そういうふうに思います。 ○山添拓君 終わります。ありがとうございました。 ○伊波洋一君 ハイサイ、参議院沖縄の風の伊波洋一です。  現在、戦争が続いておりますウクライナでは、ウクライナ自身が一方的に侵略されながら、自発的に侵略国であるロシアへの攻撃は行っていない。支援をしているNATOにしても、そのことを押しとどめるような形で、アメリカ自身も武器の供与においてロシアを攻撃するような武器は供与しないと、こういう状況があるわけです。  今回の安保三文書は、国家安全保障戦略、あるいは国家防衛戦略、防衛力整備計画がもう明らかになっておりますけれども、中国も含めて周辺諸国にミサイルというあいくちを突き付けているようなものと私は見ております。  一方、ウクライナでNATOやあるいはウクライナ自身がロシアに対して攻撃をしないということが前提とされる中で、我が国はこれまでの平和主義国家であり続けたわけですけれども、そういう中で、今回、向こう十年間、そのことに五年あるいは十年掛けて注力していく、私は国の在り方を完全に変えていくものになると思っております。  さらに、そういう攻撃をすることに何の経験もない中で、ミサイル先進国であるような中国、あるいは北朝鮮、あるいはロシアに対して、これだけのミサイルを五年間でそろえるという、それ十年後には超音速、音速の五倍ぐらいのミサイルまで備えるという、こう言っているわけです。そのために今回のいわゆる防衛装備基盤強化法もまたあるんだろうと思います。  つまり、これを自ら装備していくということですから、トマホークは買えますけれども、ほかは現状の装備を強化していく、あるいは随分変えたものにして、いずれにせよ千五百発ぐらい程度は全国に配備をしていくと。何かこう、ちょっと違うんじゃないかなと、このように思うんですね。  で、もう御承知のように、全国三百の自衛隊基地は、今回、強靱化、いわゆる持続、強化といいますか、戦争を具体的に戦える能力を備えるように最大の十五兆円がそこに使われます。  そういうことを考えますと、私たちの国のありようが随分変わっていく。今日ここで議論されている輸出の話もありますが、しかし、それ以上に私たちの国の見られ方が変わっていくだろうと、このように思います。  その上で、岸田総理も言いましたけれども、現実的シミュレーションで、抑止が破れたときまで想定をしていくと。その際に、いつも見慣れている米軍はいなくて、万が一、抑止が破れれば、我が国への侵攻を生起した、そういう場合には、我が国自身が責任を持って対処してこれを排除するということになっているわけです。  今回のこの四十三兆円の続きはつながっていくわけですね、これで止まるわけじゃなくて、十年間。さらに、その後はより続いていく。そして、そのときに私たちの国を守ってくれる国がどこにいるんだろうかとも思います。つまり、攻撃をしていくということを前提につくられようとしているもろもろのこの基盤整備、これについて、私は、なぜこのような安保三文書が成り立っているのかなと、とても疑問なんですね。  そういう意味で、この方向性といいますか、私たちの国は今産業的にもいろんな意味で弱体化しつつあります。そういう中で、このミサイルを、二千キロ飛ばすミサイルを、あるいは様々な装備を自ら生産をしていくことが本当に五か年で可能であろうかと思うんですね。それだけの能力があるんだろうかとか、でも、現実にはこういう計画ができ上がってしまっています。  この計画の妥当性といいますか、それについて、今日は御三名の参考人ですけれども、尾上参考人、そしてまた佐藤参考人には忌憚のない御意見をいただきたいなと思います。 ○参考人(尾上定正君) 伊波先生、ありがとうございます。  ミサイル、あいくちを突き付けている中国に対してというふうにおっしゃったんですけれども、中国は既に千五百発から二千発のミサイルを日本に対して突き付けてきたわけです。それに対して、じゃ、どうやって日本の国民を守るのかということが一番重要な政治としての責任ではないかなと、我々国民も考えなければいけないことかなというふうに思います。  昨年八月、ペロシ・アメリカの下院議長が台湾を訪問された後、中国は台湾を取り囲むように六か所の演習区域を設定をして、数え方にもよりますけれども、十発程度のミサイルを現実に打ち込んできたわけですよね。そのうちの何発かは与那国島の目と鼻の先に着弾をしていると、こういう事実がやっぱりあるわけなんです。この事実に対して、じゃ、どうやって沖縄の人を守るのか、日本の安全を、平和を担保していくのかということをやっぱり真剣に考えるのが必要なんだろうと思います。  したがって、今回のその安保三文書、昨年の十二月に閣議決定された、まあこれまでの安全保障政策、戦略の大きな転換と言われますけれども、これはそういった現実に対応するためには必要不可欠な決断だったんだろうと私は思いますし、自衛隊としてはそれを実効的に一刻も早く対応できるような形にしていく必要があると思います。  よく中国の軍拡に対して日本が張り合っても仕方ないんじゃないかとか、あるいは逆に、日本が反撃能力を持てば、それはもっともっと中国や北朝鮮の軍拡を招くんじゃないかという、その安全保障のジレンマを指摘される方もいらっしゃいますけれども、日本は、過去二十年、三十年にわたってずっと平和主義でやってきて、しかも防衛費もほとんど横ばいの状態だったわけですけれども、それが中国の場合は、過去三十年で三十倍、四十倍の防衛費に増やしてこれだけの装備を整えてきているということなので、安全保障のジレンマというのが本当に中国に対して有効なのかどうかというのはよく分からないところがあります。  それからもう一つ、抑止のパラドックスというのがありまして、抑止は破綻をして初めて抑止が効いていなかったということが分かるんですね。抑止が効いているかどうかは、相手がどのように考えているかどうかということを考えながら、一番うまく機能させるにはどうすればいいかということを考えていかなければいけない。  したがって、非常にパラドックスではあるんですけれども、抑止が破綻した場合でも、相手が達成しようとするその目的を拒否する、達成させない、大きなコストを強いるということによって、相手にその行動をちゅうちょさせるということが抑止の基本になります。したがって、抑止が破綻した場合も想定をしつつ、その対処を備えることが抑止を一番信頼性を持たせることにつながるというパラドックスがあるんですね。  したがって、日本が独自のミサイル能力を持つですとか、持続性、継続、継戦能力ですとか抗堪性を高めていくということ自体が、仮に抑止が破れた場合であっても、そんなに簡単に相手の目的を達成させることはありませんよという姿勢、決意、能力を示すことにつながるわけなんですね。  したがって、今回のその安全保障三文書の決定というのは、まさに、遅きに失したとは言いませんが、辛うじて間に合ったかなというふうな認識を私は持っております。  それから、冒頭、先生がおっしゃられましたウクライナの状況ですね。ウクライナは、残念ながら、ロシアに攻め込む能力を持っておりません。したがって、今のような惨状がウクライナの国内で広がっているわけです。私は、あのような状況を日本の国内で絶対に起こさせてはいけないと思っておりますので、この三文書を早く実効性のあるものにしたいと願っております。 ○参考人(佐藤丙午君) 伊波先生、ありがとうございます。  先ほどの尾上先生のお話に続けて私自身の見解を述べさせていただきますと、我々が軍拡若しくは軍事力の増強を行うことで安全保障のジレンマが生じる、そういう懸念があるのは当然のことだと思います。ただ、今のアジア太平洋、インド太平洋の状況においては、もう実は安全保障のジレンマは起こっている状況でございまして、中国を含めた周辺国の軍事増強が我々日本国内で大きな安全保障上の懸念を引き起こし、それが今の防衛生産基盤強化法も含めた一連の措置につながっているんではないかなというふうに思います。  そうなっていくと、我々は軍縮を再びここで持ち出す必要があり、その安全保障のジレンマを軍縮によって安定化させることがどうしても必要だと思います。ただ、軍縮というのは非常に皮肉な政策でございまして、タンゴは一人で踊れないという言葉がありますけれども、相手国の合意、相手国が納得しない限り軍縮というのは相互に実現しないという大きな問題点を抱えております。  としますと、先ほども、安全保障のジレンマが起こっている状況の中で我々が軍縮を目指す際には、少なくとも、一時的にせよ相手が我々の軍事力に関心を向ける、脅威だと感じるかどうかはともかくとして、関心を向けるような状況をつくり出すことで、軍縮が可能な環境というのをこの後つくり出す必要があるということが軍縮研究の中では言われる、一つ言われる、一つの見解でございます。  したがって、一時的には、一つの軍縮の一番最初のフェーズとして軍備の拡張というのは必然的に起こるかもしれませんけれども、それを最終的に破綻、要は抑止のパラドックスが生じるような状況につながらないような形で軍備の増強を果たしながら、相手に対して軍縮の機運を高めていくという方法というのを我々は取るのが、量的な、量的に相手を優越できない状況においては我々が取るべき合理的な選択だと思いますので、先生がおっしゃった、相手に対して日本の軍拡が、軍事力の増強というのがどれだけの安全保障上の効果をもたらすかというのは、今この初期段階における現状と将来我々が目指すべき方向性というのはまたちょっと違うんですけれども、内容、そこで議論される内容というのは違うんですけれども、同一線上にあるものだというふうに考えていただければというふうに思っております。  以上でございます。 ○伊波洋一君 今のような御意見に対して、杉原参考人はどのような立場でこの武器の輸出、取引、反対をしているんでしょうか。 ○参考人(杉原浩司君) ありがとうございます。  今お二方から、ど真ん中の抑止論が出ましたね、まあ想定内なんですけれども。  僕自身は、抑止論というものが前提で今の軍備増強が、まあこれは日本だけじゃなくて世界的に軍拡の大波が世界を襲っていますけれども、本来、そのプーチン容疑者と言いますが、容疑者によるウクライナ侵略戦争から私たちが本当に受け止めるべき教訓は、そこではないと私は思っています。何かといえば、抑止論がやっぱり破綻したというふうに受け止めるべきだと思うんですね。  なぜかといえば、抑止論というのは、自分たちが軍備を増強して相手を脅せば、相手は私たち、自分たちへの攻撃を思いとどまってくれるだろうという、その相手の合理的な判断に依存した考え方なんですよ。それが今回、プーチンというリーダーには通用しなかったわけですよ。である以上、本当に、じゃ、深い安全や安心を確立するためには、相手のその意図に期待する、そういう軍備増強をやっていても、それはもう保障ができないわけです。  じゃ、何がいいかといえば、かつてレーガンとゴルバチョフが冷戦の終わりの時代に、INF条約、中距離核戦力全廃条約を当時の反核運動のうねりを背景に作りました。それによって、核だけではなくて通常兵器も含めた中距離のミサイルの陸上配備をやらないということを縛ってきた。これはとても先進的で重要な条約だったんですね。なぜそれを再びこのアジアでやろうとしないのかと。中国がその間に、米ロの間で中国がミサイルを確かに増やしてきた。じゃ、中国を含み込む形でお互いに軍縮するということはとても大事です、相互に、佐藤さんが言われたように。  じゃ、アメリカの側も、軍縮に向かった何らかのシグナルを送るべきなんですよ。例えば、それは核兵器の先制不使用であったり、あるいは平壌や北京に照準を合わせている横須賀のトマホークの常時発射態勢を解くとかですね、様々なオプションはあるわけです。 ○委員長(阿達雅志君) 時間が参りましたので、おまとめください。 ○参考人(杉原浩司君) そういう形できちっと、緊張の強化、一時的というふうに言われましたけど、佐藤さんは、その一時的な軍拡競争の間で偶発的な衝突が起こったらどうするんですか、緊張を高めて。そういう悠長なことを言っているから、いつまでも私たちの安全は保障されないんです。そのことをやっぱり今受け止めるべきだと私は思っています。  以上です。 ○伊波洋一君 まとめます。  G7が終わって…… ○委員長(阿達雅志君) おまとめください。 ○伊波洋一君 分かりました。  G7が終わって、バイデン大統領も言ったように、中国との関係は間もなく雪解けすると。それから、様々な形で方向性が変わっていきます。でも、日本はもう決めてしまったと、こういうことを是非私は考えていきたい。まあ次回もありますので、委員会でまた詳しくお話をしたいと思います。  ありがとうございました。 ○委員長(阿達雅志君) 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の皆様に一言御礼を申し上げます。  参考人の皆様には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十九分散会