第211回国会 衆議院 文部科学委員会 第8号 令和5年4月14日 令和五年四月十四日(金曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 宮内 秀樹君    理事 池田 佳隆君 理事 橘 慶一郎君    理事 中村 裕之君 理事 根本 幸典君    理事 森山 浩行君 理事 柚木 道義君    理事 堀場 幸子君 理事 鰐淵 洋子君       青山 周平君    東  国幹君       石橋林太郎君    上杉謙太郎君       勝目  康君    柴山 昌彦君       鈴木 貴子君    田野瀬太道君       高階恵美子君    谷川 弥一君       辻  清人君    中曽根康隆君       丹羽 秀樹君    船田  元君       古川 直季君    穂坂  泰君       山口  晋君    山本 左近君       義家 弘介君    荒井  優君       梅谷  守君    菊田真紀子君       白石 洋一君    野間  健君       牧  義夫君    金村 龍那君       高橋 英明君    早坂  敦君       平林  晃君    山崎 正恭君       西岡 秀子君    宮本 岳志君     …………………………………    文部科学大臣       永岡 桂子君    文部科学大臣政務官    山本 左近君    政府参考人    (文部科学省総合教育政策局長)          藤江 陽子君    政府参考人    (文部科学省高等教育局長)            池田 貴城君    政府参考人    (文部科学省高等教育局私学部長)         茂里  毅君    政府参考人    (文化庁次長)      杉浦 久弘君    政府参考人    (経済産業省大臣官房審議官)           藤田清太郎君    文部科学委員会専門員   中村  清君     ――――――――――――― 委員の異動 四月十四日  辞任         補欠選任   勝目  康君     東  国幹君   谷川 弥一君     高階恵美子君   吉川  元君     野間  健君 同日  辞任         補欠選任   東  国幹君     勝目  康君   高階恵美子君     谷川 弥一君   野間  健君     吉川  元君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出第五一号)      ――――◇――――― ○宮内委員長 これより会議を開きます。  内閣提出、著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、お諮りいたします。  本案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省総合教育政策局長藤江陽子君、高等教育局長池田貴城君、高等教育局私学部長茂里毅君、文化庁次長杉浦久弘君、経済産業省大臣官房審議官藤田清太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 ○宮内委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ――――――――――――― ○宮内委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。荒井優君。 ○荒井委員 荒井でございます。  昨日の夜から、ちょっと僕、結構憤っていまして、昨日の夜からいろいろニュースで、文科省の、教員の処遇改善を議論する有識者会議の内容について取りまとまりつつあるということで、ニュースにたくさん取り上げられていますね。給特法が一つ、ニュースにもありますけれども、その給特法に関して、給特法をなくすではなくて、教職調整額四%を引き上げるや、若しくは手当を増やしていくみたいな形のまとまり方をしているということを書いてあるわけですが、僕もこの有識者会議の内容を改めて見てきましたけれども、やはり、そもそも本当にその方向性でいいのかどうかということを、もう一度、文科省が選んだ有識者の皆さんにはちゃんと考え直してほしいというふうにすごく思っております。  大臣、僕、この国会で、国会議員の中で唯一校長をやってきましたけれども、もう一つ自負がありまして、学校の再生を二年間ぐらいでやれたという自信があります。私立の学校ですけれども、私立の学校でも、ちゃんと、教職調整額とかそういうのをなくしてもしっかりと運営が再生できるので、僕は、しっかりもう一度議論をしながら、処遇の改善、しっかりと向き合っていただきたいと思います。  きっと問題は財源なんだと思いますが、でも、これは一度大臣にも、一番最初に伺ったような気がするんですが、まさにその財源を引っ張ってくることこそ文部科学大臣の大きな仕事じゃないかというふうに思っていますので、もう一度、是非、教員の仕事の在り方に対してしっかりと向き合って、財源のことに関しては総理大臣や財務大臣にしっかりかけ合っていただきたいというふうに思いますが、済みません、これは通告にはありませんが、ちょっと、どうしても思っていることなので、いかがでしょうか。 ○永岡国務大臣 お答え申し上げます。  この調査研究会は、情報収集や論点整理を目的とするものでございまして、何らかの結論を得るというものではございません。  勤務実態調査の速報値の公表後、円滑な検討に資するように、給特法を含みます給与面、また公務員の法制、それから労働法制面の在り方などにつきまして、昨日、論点整理が取りまとめられたところでございます。  給特法の在り方につきましては、今後の検討の具体的な方向性について、現時点で決まっているということはございません。実態調査の速報値の公表後、研究会におきまして整理されました論点を基に、教師の処遇改善を定めた給特法等の法制的な枠組みを含めて、中教審の方で検討をするということが考えられておるところでございます。 ○荒井委員 是非、大臣の本当に強いリーダーシップを持って、現場の学校や教育、教育をよくするにはやはり学校がよくならなきゃいけないというふうに思いますので、先生たちの処遇の改善に強いリーダーシップを発揮いただきたいというふうに思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。  そして、もう一つ、学校給食費の無償化法案。これは、我々と、あと維新の皆さんとで提出させていただきました。前回も、この件に関しましては、早急な審議入りを与党や文科委員長にもお願いしたところでもあります。  これは是非、同じことなんです。やはり手段を目的化しないためにも、早くにこういうことを対応していきながら、給食無償化に関して、これは与党も野党も一致しているわけですから、選挙の前にしっかりと進めていただきたいというふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。声がなかなか出にくいというふうに聞いていますので、手短な結論で結構です。 ○永岡国務大臣 これは、給食の実施状況ですとか保護者の負担軽減策等の実態を把握した上で行う必要があると考えております。  いずれにいたしましても、小倉大臣が取りまとめたたたき台について、今後、総理の下に設置をされる新たな会議、今、もう第一回目の議論がされましたけれども、議論を深めて、そして、そこでの議論を踏まえて検討してまいりたいと考えております。 ○荒井委員 あわせて、大臣の本当に強いリーダーシップを今発揮するときだと思うんですね。永岡大臣のときに進めていただきたいというふうに強く思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。  今回、著作権法の改正という形になっておりますが、何か、先ほど、学校の運営をどういうふうに立て直していったのかという話と全く同じだと思っているんですけれども、常に手段が目的化しやすいのが、日本のこういう大きな組織のありようなんじゃないかと思うんですね。学校の校長になったときも、よく聞いていました。これはどうしてこういうふうにやっているのかということをすごくシンプルに問い続けていくと学校とか組織というのはよくなっていくんだというふうに、僕はそういう信念があります。  著作権法の改正、今、これを我々やっているわけですけれども、この著作権に関しても、どうしてこういうふうになっているのかということが、やはり分からないことがたくさんあるというふうに思っています。  今回、コロナ禍において、皆さん、図書館に来れなくなりました。図書館に通うことができなくなり、子供たちの読み聞かせというのを図書館でやっているわけですけれども、当然、そこに子供たちが来れなくなったわけですね。その来れなくなった子供たち向けに、図書館や若しくは学校、幼稚園や保育園等も、であれば、Zoomやインターネットを使って、読み聞かせをネットで配信しようというふうにしたわけですけれども、御承知のように、日本ではこれが著作権法の違反に当たるので、そういう行為はやめてくれという形で、基本的には、著作権に基づけば、やめさせる仕組みになるわけですね。  でも、一方、アメリカではそうではなくて、それはどんどん、どうぞやってくださいという形になっているわけです。  資料の一を御覧ください。これは、全米図書館協会というところが発行しているホームページ、左側ですけれども、右側の訳文はこちらで、こちらでつけたといっても、これはDeepLというAIにぽちっと入れたらすぐに、瞬時に訳してくれるわけですけれども、それを使って訳させてもらったところなわけです。そうですね。もう今やAIは本当にすばらしい訳文をしてくれるわけですが、この中で、一番右上のところ、訳文と書いてあるところですが、絵本の読み聞かせは、公立図書館や学校図書館の真髄とも言えるサービスですというふうに書いてあるわけですね。著作権法の重要な副産物である識字率や学習を促進するため、その社会的利益は疑う余地がない、そういうふうに書いているわけです。  是非、全文をお読みいただければと思っていますが、この中で、この文書そのもので言っているところは、つまり、オンラインの読み聞かせというのは、これは著作権法でちゃんと大丈夫ですよということを、このアメリカの図書館協会は発行しているわけです。そのキーポイントはフェアユースという、フェアユースの観点からいくと、これはしっかりと、オンラインの絵本の読み聞かせは大丈夫ですというふうに言っています。  真ん中ぐらいにフェアユースの概念が、四つの要素というのが書いてありますが、一、使用の目的、二、出版物の性質、三、作品の使用量、四、作品の市場に対する影響、この四点に関していけばフェアユースというのが適合されるものに関してはどうぞ使ってくださいということが書いてあるわけです。  ちなみに、ちょっと今回、このウェブサイトの表題のところに関してはDeepLで訳さなかったんですけれども、ここに、左上の英語のところで書いてある、ニュース、オンライン・ストーリータイム・アンド・コロナウイルス、ストーリータイムというのは読み聞かせのことの英語の言い方なんですけれども、オンラインの読み聞かせとコロナウイルス。その後、コロンで、イッツ・フェアユース・フォークスというふうに書いてありますが、つまり、これはフェアユースですよ、皆さんというふうに呼びかけているわけですね。  そうなんです。アメリカではこうやって、もちろんこれはアメリカでもコロナの期間中に限っていることは前提なんですけれども、図書館や学校等がオンラインで読み聞かせをすることに関しては、フェアユースの一環だからどうぞ使ってくださいというふうに言っているわけですね。  僕も実は、東京子ども図書館という、練馬にあります、子供たち向けの絵本の図書館の評議員とかも以前やっていましたので、まさに今、絵本というものがどんどん読む人が少なくなってきたりもしている中で、できるだけこの読み聞かせに接するために、一生懸命、絶え間ない努力をたくさんしてきているのはよく知っています。  そのときに、コロナで図書館に来れなくなって、何とかしてこの絵本のよさを伝えよう、そして絵本の教育的な価値を子供たちに止めどなくやっていこうというふうに思う、その誠意ある努力を、いや、著作権法の違反だからやめてくださいと言う著作権者や絵本の会社も本当に、多分、苦しい思いをしながらやめてくれと言っているんだと思いますし、図書館や保護者の皆さんたちも、これはどうしてこういうふうなことをやっちゃいけないのかなと悩みながら、でも、著作権法の違反だと言われれば、悪いことをしちゃったんだと思って萎縮していくと思うんですね。  何だか、日本の著作権というのは、まさにこのオンライン化みたいなときにどうもうまく適合しないようになってしまっているんじゃないかというふうに思いますが、大臣はこのことについてどういうふうにお考えですか。 ○永岡国務大臣 荒井委員おっしゃいますように、今アメリカで導入されておりますいわゆるフェアユースは、著作物の利用を円滑化するために、公正な利用であれば権利者の許諾がなくても著作物を利用できるように、法律の規定によりまして権利者の有する権利を制限するものであると承知をしております。やはりこのベースは、コロナ禍での子供たちへの読み聞かせというものが本当に大きな範囲を占めているだろうと思っております。  このフェアユース規定につきましては、著作物の新たな利用行為に柔軟に対応できるメリットがあります。しかしながら、一方で、その行為の後に訴えられるリスクが発生いたしまして、さらに、その適法か違法かについては、これは司法判断、司法の判断を待たなければならないということがあります。だから、なかなかすぐには、使っていいですよ、悪いですよというのは判断できない、明確にならないというものでございます。法規範の予測可能性が低下するということもデメリットである、そういうふうには思っているところでございます。  日本でも、この規定の導入を検討した平成二十九年の文化審議会の報告では、我が国におきまして、司法によります解釈に委ねるフェアユース規定ではなくて、明確性と柔軟性の適切なバランスを備えた法規定を整備する仕組みが最適である、そういう考えが整理をされました。  このため、著作権法では、フェアユース規定は設けておりませんが、著作物の利用について、公益的な必要がある場合には個別に著作権者の権利を制限する規定を設けて対応しているところでございます。 ○荒井委員 そうですね。まさに、フェアユースがない日本にとっては、一つ一つ著作権者に許諾を求めていくということが必要になっていくわけですね。  有名な話でいうと、だからこそ日本ではグーグルがつくれなかったというふうにも言われているわけですね。一九九四年に、元々、インターネットの検索のサービスの仕組みというのができてくるわけですが、検索というのは当然いろいろなウェブページとリンクを結んでいくということになるわけですけれども、日本の著作権の規定になれば、そのリンクを結ぶ先に、権利を、一個一個許諾を取らなきゃいけないという形になるわけです。  一方、アメリカでは、フェアユースですので、リンクに対して許諾を取る必要がない。グーグルは、元々、アメリカでまさに裁判をして、結果的に裁判に勝って、このグーグルのサービスというのはフェアユースだというふうに認められて広がっていくわけです。  でも、考えてみてください。日本人は、みんなグーグルをずっと使っているわけですね。アメリカのフェアユースの前提でつくられたサービスによって日本人も恩恵を受けている。なぜ日本ではグーグルのサービスが、著作権違法できっとつくれなかったと思うし、若しくは、つくることを萎縮してしまって、つくろうという意識が出てこない中、アメリカだったら、アメリカでつくることができる。  もう一度申し上げます。やはり日本の著作権法というのは、アナログを前提とした著作権になっていて、インターネットの時代に適した著作権の在り方にやはりなっていないんじゃないかということを感じております。  続いて、著作権、今日、触れるか触れないかちょっと悩みましたけれども、せっかく著作権の法の改正の話をしていますので、今ちまたで有名になっている映画の話を一点触れさせてください。  ウィニー事件という映画が、今六本木ヒルズの映画館でもやっていますので、是非、委員や関係者の皆さんも御覧いただきたいわけですが、二〇〇二年にウィニーというファイル共有ソフトを開発した人が逮捕される、著作権違反幇助の罪で逮捕されて、そして、七年の裁判の結果、最高裁で無罪をかち取るわけです。  このウィニーを作った金子勇さんという東大の助手の方は、日本の天才エンジニアだというふうに言われていた方でしたが、この裁判で無罪になった後、半年後に亡くなってしまうわけですね、病気で亡くなられたわけですけれども。  日本のインターネットの父と言われる慶応大学の村井純さんは、ひょっとしたらウィニーというこの仕組みのシステムがビジネスの基盤に育っていた可能性があったかもしれない、本当に亡くなったことは残念だというふうにおっしゃられていますし、実際、最近、ウェブ3・0みたいに言われているビットコインやNFTと言われているようなブロックチェーンの技術というものの先駆けが、まさにこの金子勇さんが開発したウィニーの技術だったんじゃないかというふうに言われてもいるわけです。  我々日本国は、著作権法の違反の幇助という罪で、この金子勇さんという天才と、そしてその技術を、やはりそれを進化させる機会を失わせてしまったんじゃないかというのは、この映画を見て、僕は個人的に感じました。  大臣は映画を御覧になっていないかもしれませんが、是非、ウィニーのこの事件について、今の政府の見解というものを、これは質問通告を出させていただいていますので、よければ教えていただきたいと思っております。 ○永岡国務大臣 ウィニー事件につきましては、これは、私、「Winny」の映画は拝見はさせていただいておりませんが、調べましたところ、ウィニー事件につきましては、ファイル共有ソフトをインターネット上で公開していたものが、ソフトの利用者による著作権侵害を幇助したとして刑事責任を問われたものの、無罪となった事件であると承知をしております。  この事案は、様々な受け止め方というものがあると思います。私自身も一概に評価をすることは難しいなとは思いますが、はっと思いついたのが、ダイナマイトを開発した彼のことですね、ちょっと思いました。いいことにも使えるし、しかしながら、それが、いいことではない、悪にも使える、そういうことでございます。  いずれにいたしましても、今後も、技術の発展の動向を注視しながら、社会の要請に応えるべく適切に対応していくということでございます。 ○荒井委員 ありがとうございます。  著作権というのは本当に難しい、そして誰にでも所属しますし、このインターネットの時代になると、誰もが違反をしやすい、簡単に違反をしやすい、SNSとかでちょっと使えば違反に問われるかもしれない、非常に難しいことだというふうに思っています。  学校においても、まさにこの著作権の問題をどう取り扱っていくのかということが、二〇一八年、著作権法の改正の中で問われてきたというふうに理解をしています。  例えば、学校で、今の著作権法の改正をする前は、学校から授業を、生徒がいない場所で撮ったものを配信すると、それは著作権法違反に問われていたんですね。生徒が少人数でもいたら、その授業を配信していれば著作権法では守られるわけですけれども、何だかおかしな話だなと僕なんかも思いますが、二〇一八年、それを改正して、それをクリアにしたわけですね。  そのクリアにしたときに、じゃ、著作権をどういうふうに守るのかということで、今回の法案にも非常に近い、いわゆる窓口団体みたいなものをつくっています。それが、正式名称は長いんですが、授業目的公衆送信補償金等管理協会、略してSARTRASという団体をつくりまして、このSARTRASが学校における著作権の一括管理みたいなことを今しているわけですね。大体、年間五十億ぐらいのお金が入ってきて、それを著作権団体に分配するという仕組みになっています。高校生だと一人当たり四百何ぼか、その補償協会に入るという形になっているわけです。  今、SARTRAS、コロナ禍に始まって、いろいろ混乱もあったかと思いますが、例えば、このSARTRASという団体の、しっかりと運営されているのかどうかというのはすごく重要なことだというふうに思うんですね。  資料の二ページ目を見ていただくと、SARTRASの役員一覧ということをホームページから拝見させていただいています。  でも、このSARTRASのほかのページには、資料にはおつけしていませんが、こうした一連の分配に関する業務は、その適正性、透明性を確保するために、文化庁による監視対象であるとともに、SARTRASや分配業務管理団体は情報公開に努めることとしているということで、情報公開をしっかりしますよということを明言しているんですね。その上で、この役員一覧がぺろっと載っているわけですが、でも、大変残念です。  SARTRASの皆さんが仕事を一生懸命していないと言うつもりはありませんけれども、でも、例えば、こういう大事な団体であり、そして、これも文化庁長官によって認められた団体なわけですから、例えば理事長がどういう方なのか、どういう経歴でこのポジションを務められているのか等々、しっかり経歴とか載せてしかるべきなんじゃないかと思うんですね。  ちなみに、独立行政法人の場合には、独法をそういうふうにしっかりと情報公開する法律がありますので、独法の役員の場合には必ず、経歴、キャリアの一覧が載っているかと思います。  例えば、ここで一番最後、僕も公益財団の事務局長や専務理事をやっていましたので、こういう団体をぱっと見たとき一番大事なのは、事務局長が一番大事だと思いますし、事務局長が理事を兼ねているときには大変大きい権限があるというふうに思っています。理事、事務局長に今名前が載られている方は、この方はJASRACの御出身であるということが検索すれば分かるんですね。別に、やましいことはしていないと思います。しっかりやられていると思うからこそ、そういうことをしっかり載せられたらいいんじゃないかというふうに思います。  続いて、資料三を御覧ください。SARTRASの正味財産増減計算書、いわゆる、会社でいうとPLみたいなものが、一年間にどれだけ稼いだのかというものの決算が載っております。  こういうときにも、一体この団体はどれだけの人件費を払っているのかというのが、やはり見るべきポイントだというふうに思うんですが、でも、ここの表の中には、人件費というのはここには入っていないわけですね。かぎ括弧の二番目、経常費用の中に事業費と管理費というふうに入っていますが、恐らくこの中に人件費というのは含まれているんだろうというふうにしか思えませんが、一体それが幾らなのかというのは分からないわけです。  ちなみに、資料の四ページ目を、四枚目の資料を御覧ください。これは、逆に、JASRACの同じ正味財産増減計算書になりますが、このJASRACの方に行くと、かぎ括弧の二番目、経常費用のところの事業費には、給与や臨時雇用費で、人件費をどれだけ払っているのかというのがしっかり載っているわけです。  資料の五ページ目のところにも、2の管理費のところに、役員報酬や給与、臨時雇用費などの、人件費にどれだけ使っているかというのがしっかり明記されております。  もちろん、JASRACとSARTRASは、売上げの規模というものは、収入の規模は随分違うかもしれません。でも、しっかりと著作権を管理して分配していくという大きな役割においては、事業規模の大小ではないと思うんですね。やはり、こういった情報の公開、どれだけの人件費若しくは家賃を払っているのか等は非常に大事な情報だと思いますので、しっかりとSARTRASも情報を公開するべきだ、もっと丁寧な公開をする必要があると思いますし、今回の、今、法案で審議をしている窓口団体等ですね、著作権を管理する、分配機能を持つ団体を文化庁長官が選ぶ形になりますので、この新しい団体もしっかりとした情報公開を前提として選んでほしいと思っていますが、大臣、いかがお考えでしょうか。 ○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。  御指摘のSARTRASは、授業目的公衆送信補償金の指定管理団体として、事業に関する情報の発信、公開に努めることが求められていると認識しております。  補償金の指定管理団体に対しましては、著作権法施行令におきまして情報公開の規定が設けられております。具体的には、毎年度作成する事業計画及び収支予算、事業報告書及び収支決算書の公表に関する規定などにより、情報が公開されるということでございます。  特に、昨年度は、制度が開始されてから初めての補償金の分配が行われた年度でございまして、そうした情報を広く社会に対して発信していくことは重要だと考えております。  今日、委員から御指摘を頂戴しました、SARTRASの事業に対するより効果的な情報の発信、公開につきまして、引き続きSARTRASともしっかりと協議してまいりたいと考えております。 ○荒井委員 杉浦次長、是非、SARTRASも含め、しっかりと情報の公開をしていく。これは、単に載せればいいというわけではなくて、しっかり、どういうふうに見てほしいかということの思いだと思うんですね。  もう一回言います。JASRACとSARTRASの財務諸表の上げ方一つ取っても、どういうふうに見てほしいかという気持ちの伝わり方が違うような気がしています。SARTRASも少ない職員で頑張っているというふうには聞いていますが、どうぞ、そこのところをよろしくお願いいたします。  そして、本法案に関してですけれども、この法案に関して、こういう、僕はいろいろと、特に、アナログ用にでき上がって、課題のあるというふうに思っていますこの著作権法の中で、権利者不明のドラマや動画を、特にインターネット等に二次利用するようにしやすくするために今回の法案ができたというふうに考えていますが、そもそも、権利者不明というのは何をもって指しているのかというのを、杉浦次長、ちょっと教えていただけますか。時間がないので手短にお願いします。 ○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。  文化芸術分野におきましては、事業者と芸術家との信頼関係や従来の慣習等によりまして、口頭による契約で業務を行うことが多いほか、契約の多様性、構造的な特性等により、これまでの契約の書面化が進んでこなかったという状況がございます。  失礼しました、済みません。(荒井委員「権利者の不明ですね」と呼ぶ)権利者の不明ですね、ちょっとごっちゃになっていました。失礼しました、済みません。大変申し訳ございませんでした。  権利者の意思確認ということでございます。  分かりやすいガイドラインをどういうふうに定めるかということでございますけれども、著作権者の意思につきましては、著作物やその周辺、著作権者やプラットフォームの公式ウェブサイト、SNSのプロフィール、検索エンジンなどを活用して確認するほか、各種のデータベースを用いて確認することを想定してございます。  文化庁長官が裁定した場合には、インターネットの利用その他の適切な方法により、裁定をした旨のほか、著作者名など著作物の特定に必要な情報を公表することとしてございます。  こうした意思表示や公表の方法の周知を含め、新たな裁定制度の施行までに、分かりやすく、本制度を利用する際の手順、手続をまとめた資料やSNSなどを活用し、丁寧に周知してまいりたいと考えております。  大変失礼しました。 ○荒井委員 日本の著作権は、例えば、今回は、著作権不明な人がいた場合でも二次利用がやりやすくしようということで、世界に対してもどんどん発信できるようにするというたてつけなんですが、聞いていくと、そもそも、権利者が不明の前に、実務面でしっかりと権利の契約をしているのかどうか、そこが非常に日本国内では危ういんだということが言われているんだなというのを感じております。  資料の七を御覧いただきたいんですが、文化庁が取りまとめた、まさに、文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドラインというものがあります。  これは、そもそも、コロナ禍において、例えば俳優さんとか舞台の関係者の人たちが、口頭の契約でしかしていないので、その契約を結んでいたということが認められないから、コロナに関する補償金とか、国から下りることができなくなっちゃって、さあ困ったということで、こういうガイドラインを作ったということも一つの一因だというふうに聞いております。でも、そもそもコロナの前から権利契約がなされてこなかったんじゃないかということの方が大きな問題だと思うんですね。  大臣、これは今回、ガイドラインというふうな作成で何ら法的根拠がないわけですけれども、著作権をしっかりやっていくためには、足下の権利を、契約をしっかりしていくことが大事だと。今、フリーランス新法もできましたけれども、もっとこれを文科省、文化庁としてしっかり整えていく必要があるんだと思いますけれども、最後、そこはいかがでしょうか。 ○永岡国務大臣 先生おっしゃいますような、映画等、文化芸術の各分野の振興、発展のためには、その担い手であります芸術家などの方々が本当に安心して活動に従事することができるということが重要だと思っております。  しかしながら、芸術家などの方々が発注者との関係で弱い立場に置かれている状況というのも生じております。そのために、こうした状況を改善するために、関係者間での協議、そして交渉しやすい環境を整備していくことが重要でございまして、文化庁ではガイドラインの公表や研修会の実施などの取組を進めてまいりました。  こうした中で、政府全体として、フリーランスの取引適正化のための法整備が進められているところでございまして、これはこれまでの文化庁の取組を後押ししてくれるものと期待をしております。  文部科学省といたしましては、今後とも引き続きまして、関係府省庁と連携をして、芸術家の方が活動をしやすい、そして専念して仕事ができる、それが継続できるような環境の実現に取り組んでまいりたいと考えております。 ○荒井委員 ありがとうございました。  今、日本の文化庁長官は都倉俊一さんという大変高名な、「UFO」などの作曲家でもあり、そしてJASRACの会長でもあった、日本においても、著作権に関しての一番プロの方だと思っているんです。本当は今日、僕、都倉長官と著作権の在り方について議論をしたかったんですが、長官というのはこういう答弁をされないというふうなことで、今日はちょっと大変残念な思いで、都倉長官がどのようにこれから著作権法、在り方を考えられていくのか、是非しっかり見守っていきたいと思っております。  以上です。ありがとうございました。 ○宮内委員長 次に、森山浩行君。 ○森山(浩)委員 立憲民主党、森山浩行でございます。  昨日、今日の質問の準備をしているときに、ニュースで、不登校対策推進本部の初会合があったというようなニュースが流れておりまして、そこで大臣が不登校ゼロというようなことをおっしゃっているというのがふっと耳に入ってきまして、その後で文書を調べますと、不登校により学びにつながることができない子供たちをゼロにすることを目指すというようなコメントをされているようなんですけれども、不登校ゼロという言葉は、言ってしまうと、不登校に陥っている子供たち自身が自分自身を否定されるような、そんな思いになるということがあってはなりません。  今、文科省、あるいは大臣の方向性としては、フリースクールであるとか、あるいは家庭学習であるとか、学校に行けなくても学びにつながるというようなことが大事だという方針を示しておられると思いますが、間違って使ってはいけませんので、まずは真意をお伺いしたいと思います。 ○永岡国務大臣 森山先生おっしゃいますこと、大変重要な視点であると思っております。  学校というのは様々な学びを得られる場所でございますが、不登校は誰にでも起き得る、そういうことでございます。  今回のプランは、不登校の児童生徒の数をゼロにするということを目標としているわけではないんです。やはり重要なことは、仮に不登校になっても、そういう子供たち、小中高等学校を通じて、学びたいと思ったときに多様な学びにつながること、その子がつながること、これができる受皿を整備することだと考えております。  このため、今回のプランを通じまして、不登校により学びにつながることができない子供たちをゼロにするということ、これを目指していきたいと考えております。 ○森山(浩)委員 そうですね。だから、ちょっと標語としても、不登校ゼロというようなことの言い方をするということについてはよく考えていただいて、学びにつながるために、取り残さないためにどうするか、子供たち自身を否定するような形にならないようにどうするかというようなお伝え方などの工夫をしていただきたいというふうに思います。  さて、先ほどちょっと荒井委員の質問の中で、学校給食費の無償化法案について、補欠選挙や統一選、今選挙が行われているという中において、どのような内容か、どのような形で予算も取ってくるのかというようなことも含めてきちんとしなきゃいけない、議論を始めましょうというようなお話の中で、保護者の負担について検討というような感じのコメントをいただいたんですかね。保護者の負担、これは無償化したら減るわけなんですけれども、法改正が必要だというようなハードルがありますよというような意味でしょうか。ほかに何か意味があるんでしょうか。 ○永岡国務大臣 ここのところでは、やはり大変な物価の高騰が騒がれております。そのために、これは政府の方で対応をさせていただきましたけれども、地方創生臨時交付金、これで給食費の、両親の方々の負担の軽減に使ってほしいということがございましたので、そういうこともあり、保護者の負担の軽減策ということでお話をさせていただきました。 ○森山(浩)委員 そういう意味、意義があるというような意味でおっしゃったということですね。これもしっかり議論をしていきたいと思います。  それでは、法案の質疑に入りたいと思います。  著作権法というのは、一つは利用をするという部分、もう一つは権利を保護をするという部分、これのバランスを取るというための法制だと思います。  その中で、権利侵害というところがありますね。海賊版の件についても現在取組がなされているわけですが、まず、これまでの取組としては、インターネット上の海賊版に関する総合的な対策メニュー及び工程表というようなことで、二〇二一年の四月に出された工程表というのがあります。これについての取組、及び、海賊版天国と言われて、いろいろな穴があるよと言われてきた日本の現状について、認識と、そして現在の対策についてお尋ねをいたします。 ○永岡国務大臣 インターネット上の海賊版サイトによる被害というのは、依然として後を絶っておりませんで、本当に深刻な状況であると、これは大変憂慮しております。  今般の規定の整備によりまして、被害者によります損害の立証負担が軽減されて、そして、認定される賠償額が高まり得る可能性、そういうことが期待できます。それと、いわゆる侵害し得ということの防止や、また将来の侵害の防止につながるもの、そういうふうにも考えております。  また、海外におけます対策状況を見ますと、海賊版コンテンツの削減のための差止め請求などが多く見られまして、権利者自身による権利の行使が重要となってまいります。  こうしたことから、文部科学省では、クリエーターを含めました著作権者の権利行使を支援するために、著作権の侵害対策の情報をまとめたポータルサイトを公開するとともに、弁護士によります無料の相談窓口を開設いたしました。さらに、関係省庁が共同で取りまとめました海賊版対策に対する総合的なメニューに基づきまして取組を進めております。  文部科学省といたしましては、諸外国や、関係省庁、そして関係団体としっかりと連携しながら、取組を進めてまいりたいと考えております。 ○森山(浩)委員 各省庁が協力をして総合的な対策をする。特に、日本における侵害において、中国やベトナムといったところにある違法サイト、あるいは海賊版のサイト、こういったものについて非常に大きな懸念がされていましたけれども、これについても、日本からの要請に基づき、また中国やベトナムでも対策をしていただいているということもお聞きをしています。これは減っていくというのが大事なんですが、日本においては海賊版、大丈夫だよというようなイメージに、これが継続をすることがないようにしなきゃいけないと思うんですが、先ほどちょっと気になったのが、海賊版の被害に対する損害賠償の額が高まり得るという言い方でした。  この法律におきましては、海賊版について、本来の権利料を払えばいいんだということはないんだよというようなことはにおわせて書いておられます。ただ、例えば倍増、例えば三倍、五倍、海賊版をそのまま作る方が普通に権利料を払うよりも大変だ、むしろきちんと権利料を払った方がいいんだというようなところまで額を設定をしなきゃいけないというふうに思うんですけれども、それについては、高まり得るという御回答でしたけれども、どのようにお考えでしょうか。 ○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。  ライセンス料相当額の認定ということと絡んでくるかと思いますけれども、これは最終的には個別の事案に応じた判断ということとなってまいりますが、現行著作権法の規定に基づき争われたケースということで申し上げますと、市場における通常のライセンス料率の約一・五倍相当の損害賠償が認められた例があると承知しています。他方、通常の使用料と同額の損害賠償にとどまっている例もあると承知しています。  一方で、特許法において同様の改正を行った後のケース、これを見てみますと、事案によっては通常の使用料と同率以下の損害賠償にとどまる例もあるものの、通常のライセンス料率の二倍程度の損害賠償が認められたという例も幾つかあると承知しております。 ○森山(浩)委員 そうですね。これまでも一定やっているということなんですけれども、やはりそれで海賊版が減るとか抑えられるという状況にないのだということを考えると、海賊版に関する今回の法改正、これに基づいて、今度、額を決めていく、あるいは料率を決めていくというような話になるんでしょうが、ここはきちんと抑止ができる額にしていただかなければならないということをまずは申し述べておきたいと思います。  もう一つ、国際的な話でいうと、視聴覚的実演に関する北京条約、二〇一二年採択、これが発効をしております、我が国も批准をしておるかと思いますけれども。  実演家が、これが著作物、著作権権利者となるというようなところにおいて、どこまでがそうかというのが、今までは、例えば朗読をしました、舞台に出ました、映画あるいはテレビに出演をしました、その著作物自体というのが存在をしたわけですけれども、「スター・ウォーズ」のダース・ベイダー、この声を演じておられる俳優さん、あるいはブルース・ウィリスさん、これは「ダイ・ハード」などの映画で有名ですけれども、この方は、失語症になって、俳優をお辞めになるというときに、自分の顔を、権利を譲渡をする、これを使って、AIで「ダイ・ハード」、一、二、三、四、五、六、七、八、九、十、百でも二百でも作れる、こういう状況が起こってきております。  つまり、自分の権利をどう譲渡するのか、していいのか、あるいは買った人はどう使っていいのかというようなことが国際的には新たな問題として浮上してきているかと思いますけれども、AIを使って、例えば、日本語を話すオードリー・ヘップバーンと、今生きている女優さん、どっちを採用しますかというようなことが映画のキャスティングなどでも起こってくる可能性があるのだということを考えると、これからこういう職業、声優さんあるいは俳優さんをやろうかというときに、何と競争しなきゃいけないのか。著作権はどうなるのか、亡くなっている人の肖像権なり著作権というのはどうなのかなどのような問題がAIの進歩によって起こってくるかと思いますけれども、現在どのようにお考えですか。 ○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。  制度の説明を少しさせていただきますと、実演に当たらない単なる声ですとか顔は、著作権法上、著作物の定義には該当しない、このように考えられております。他方で、俳優が脚本に従って演技する場合は、著作権法上の実演に当たりますので、実演家である俳優の権利が保護されるという形になります。  こう考えていきますと、実演家の権利が生じている場合、AIを利用したとしましても、場合によってはその権利が保護されている可能性もございますので、こうしたことから、今後とも、AI技術の発展の動向をよく注視しながら適切に対応しなければいけない、このように考えております。 ○森山(浩)委員 そうなんですよね。単なる声ということであれば、アイウエオという発音をしてそれをつなぎ合わせるということでは、それは演技にはならないということなんですが、これも、国際的な標準というものを作っていくという過程にあると思います。国際的な標準を作っていくというときに、日本だけが別のルールになる、あるいは、日本では著作権に当たらないけれども他国では当たるというような形になってくると、日本だけが独り負けをするというようなことも考えられます。  ですので、国際的なルールを作っていくというところに我が国もしっかりと関わっていく、あるいはその平仄を合わせていくというような形での改正を適時していくというようなことが今後の課題だと思っておりますので、ここは是非アンテナをしっかり張っていただいて、うちの国ではそれは法的にはどうともできないんだよというようなことを言い続けることがないようにしていただきたいというふうに思います。  というのも、先ほどちょっと言い始めましたけれども、著作権法というのは、一つは利用。この利用の部分については、海外と平仄を合わせてやっていかないと、日本だけが損をする、あるいはうまく使えないというようなことにもなる。  一方で、日本においては、権利者の保護という部分についてまだ不十分なのではないか。地盤が緩いまま、ぐじゃぐじゃになっているままで行われているのではないか。  例えば、私、テレビ局出身ですけれども、テレビのドラマを土曜日の午後に再放送している、でも、主演俳優さんが、ふっとテレビを見ていて、自分が映っているけれども、ここに映るということは知らなかったというような例は少なくありません。権利を放棄をするというような形の契約が非常に多い。著作権の譲渡、あるいは著作者の人格権の不行使。また、二次利用について、二次利用のときに別の契約をする。あるいは、TVerなどがありますけれども、放送で著作権、許可をしているけれども、TVerというのは通信ですから、通信では別の契約をしなきゃいけない。  いろいろな形で、複雑な状況がそのまま放置をされている状況で、使うというところだけ今回、何とか追いつこうというような形の法改正になっているというふうに認識をしています。  ですので、文化芸術分野の契約関係構築に向けたガイドライン、一の五、権利というのが出ておりますけれども、これとの整合性というような部分、あるいは、そもそも実演家の権利というものを、これ以降については啓発をしていく、きちんとやっていくということをお願いをしていくわけでしょうけれども、以前のものについてはまだまだ課題があると思いますが、いかがでしょうか。 ○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。  文化芸術におきます契約の関係ということだというふうに取らせていただきましたけれども、先ほども大臣から申し上げましたが、文化芸術分野におきまして、芸術家等の立場の弱い受注者が、著作権等の権利の取扱いも含めて不利な条件の下で業務に従事せざるを得ない状況が生じているところでございます。  これを受けまして、文化庁では、令和四年七月に、契約書のひな形や解説等を含んだ、文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドラインを公表しているところでございます。これによりまして、契約内容の明確化のため契約の書面化について推進したり、権利関係や報酬等についても発注者と受注者が十分に協議して決定していくという形で進めているところでございます。  いずれにしましても、先ほど委員御指摘のとおり、どんどん技術が進んでいるところでございますので、そうした中で、しっかりと、著作権の法の方につきましても、条約の動きも見ながら、あるいは技術の動きも見ながら、適切に対応していかないといけない、このようにも考えております。 ○森山(浩)委員 そうですね。日本において、権利保護の部分がまだまだ個別に任されている、あるいは、個人とかあるいはそれを業としない人たちの著作物というのが、公表されたまま、未管理のままというような状況も少なくないということでありますので、そこの部分の整備というのは非常に重要な問題だと思います。権利保護というような側面と、そして利用というような、このバランスを取るためにも、この権利保護の部分、しっかりと、過去の分も含めてやっていくということでお願いをしたいと思います。  それでは、本改正案の制度設計についてお伺いをします。  登録確認機関、それから指定補償金管理機関ということで、登録あるいは指定をするということなんですが、これは、この間、梅谷委員の質問の中で、年間どうですか、六十件程度ですというような答弁があったかと思います。  六十件程度だったら、直接文化庁さんがやったらいいんじゃないですか。 ○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。  今回の新たな裁定制度につきましてですけれども、ちょっと法律上の規定からも少し申し上げさせていただきますと、文化庁が申請の要件の確認を実施するというふうにまずできておりまして、その上で、文化庁長官は民間の機関を指定や登録をして活用することができる、こういう形になってございます。そのため、指定機関、登録機関の申請がないという場合には、文化庁が自ら業務を行うことも選択肢としてあり得ます。  ただ、こういった業務は、かなり専門的で、しかも迅速かつ的確に、適正にやらなければなりませんので、文化庁の行政の中というよりかは、きちっとした専門的なところがもし手を挙げていただければ、そういったところで的確に処理するということを進めていくことが大切かと思います。  ただ、いずれにせよ、委員おっしゃったように、規模が小さいといった場合はどうするかという問題は確かによく考えなきゃいけないところでございまして、ただ、いずれにせよ、これは申請される候補者の方からもいろいろなアイデアとか工夫が出てくると思います。そういった形もしっかり受け止めて考えていく必要がございまして、いずれにせよ、文化庁としては、これから、関係者へも丁寧に周知、説明を行いまして、機構の円滑な指定、登録に向けて検討を進めてまいりたいと考えております。 ○森山(浩)委員 六十であれば迅速に文化庁本庁でできるんじゃないかということを申し上げているわけですが、これが例えば六百になるとか六千になるとかというような見通しで、機関を指定しなきゃいけないと思っていらっしゃる、つまり、待っている人が多いんだ、簡素にすればもっともっと権利の登録をされるんだというような状況にあるのか、今のところはそうじゃないけれども、してもらえるように頑張らなきゃいけないんだという意味なのか、どちらでしょう。 ○杉浦政府参考人 今の裁定制度、新制度じゃなくて、現行の著作権者不明の場合の裁定制度については、先ほど委員おっしゃったように、年間五十から七十件程度、まあ六十件程度ということですけれども、著作物の数でいきますと、やはり千点から五千点、年によっては数万点となります。  最近の例でいきますと、平成三年度は六十六件ありましたけれども、五千点あり、令和元年度では七十一件あったところ、五万点あり、令和二年度は四十九件で千六百点程度ですけれども、令和三年度は六十件で千百、千二百ぐらいですかね、点程度という形で、ちょっと年によって増減はありますけれども、実はそれぞれの著作物一つ一つを追っていくには、結構な量はあります。  今の著作権課の方でもこういった業務を日頃の業務の中でこなしていくわけでございますけれども、大体ですけれども、私らの肌感覚で申し上げれば、一個の件数をやるのに二か月から下手すると三か月ぐらいかかるという形でございます。  それで、ちょっとそれでは困るなというのが本音でございまして、指定法人にやっていただいて、これをまず、どんな業務だったらどのぐらいの使用料でどれぐらいの処理をするということをパターン化させまして、なるべくパターン化させまして、公平にやれるように、的確にやれるようにしまして、そういった形のノウハウを作りながら、指定機関にお願いするといった方が、利用する方も、また逆に保護していただく方の方々にとっても有利かなというふうに考えているところでございます。 ○森山(浩)委員 二か月、三か月となると、やはり簡素簡便じゃないですものね。  イラストレーターさんで、毎日毎日、その日のお誕生日の人に向けたイラストを描いてネットに上げているという人がいらっしゃる。こうなってくると、二か月、三か月になると何十というようなものがたまってくるわけなんですけれども、その辺、簡素簡便にするという部分については、お願いをするときにはしっかりお願いするんでしょうか。 ○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。  委員御指摘のとおり、そこのところは、簡素簡便にやっていくように、迅速化するようにしなきゃいけませんので、ですので、どういった形のものの、どれぐらいの手数料で、あるいはどういうような形で補償額を見てということを、一定のパターン化をしっかり作ってまいりまして、それで、迅速に進むように、また専門の人にもしっかりと見てもらう形で体制も整えていくといったことが求められると考えておりますので、その点はよく、しっかり見ながら、先ほどの登録や指定のところを進めてまいりたいと思います。  なお、済みません、先ほど私の申し上げたところで、平成三年度と申し上げたようで、ちょっと済みません、大変失礼しました。平成三十一年度に六十六件、五千百七十五点ということでございました。失礼しました。 ○森山(浩)委員 そうなんですよ。クリスマスのイラストは十二月二十六日になったらもう使えない、お正月のイラストは一月一日を越えてしまったら使いようがない、このようなことも含めて、迅速にやっていただくというのは非常に大事な部分だと思います。  今回、補償金の扱いなんですけれども、新たな裁定制度においては、供託ではなくて、共通目的に使うのだという、これは歓迎をしたいと思います。というのは、供託をしてしまうと、一般財源に最後入ってしまう、どこに使われるか分からないということですけれども、共通目的というふうにきちんと定めるということ自身は歓迎をしたいと思うんですが、共通目的、何を想定をされていますか。 ○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。  補償金の取扱いでございますけれども、著作権者等が現れなくて結果的に支払われない可能性が出てきてしまった補償金の取扱いということで申し上げますと、これは指定補償金管理機関が保持し続けるのではなくて、著作権者や利用者全体の利益に還元することが適切と考えられます。  本改正案におきましては、指定補償金管理機関に対しまして、権利者への将来の支払いに支障が生じない範囲内で、当該補償金の一部を著作権の保護や利用円滑化、創作の振興に資する事業に活用することを義務づけております。  例えば、その活用例といたしましては、審議会では、様々な著作物の権利情報を集約して、利用にも対価還元にも貢献できるデータベースの構築などに活用といったことが掲げられているところでございます。 ○森山(浩)委員 分野横断権利情報検索システム、これに使うとかということは、やったらどうですかね。 ○杉浦政府参考人 失礼しました。お答え申し上げます。  委員御指摘のシステムの利用は、これから検討していかなきゃいけないかなというふうには考えております。  それから、済みません、先ほど訂正したのをまた訂正で大変恐縮でございますが、それでちょっと混乱していまして、先ほど平成三十一年度というふうに申し上げたのが、ちょっと済みません、二十九年度でございましたので、もう一回訂正させてください。申し訳ございません。 ○森山(浩)委員 そうなんですよね。だから、著作権絡みについて、情報の整理とか、あるいはこれまでの権利関係とかいう部分については随分と混乱をしているなというような印象を受けます。  やはり、自分で守ろうという人たちは、JASRACであるとか、集中管理の機関に預けている。でも、そこに預けない皆さんというのは、手続が煩雑であったり、時間がかかったり、そこまでしなくてもというような皆さんであると。ただ、これは、二次利用、三次利用という中で、どこかで大きく花開くというようなこともあり得ますし、そもそも、著作物にはその著作の権利者がひもづいているという状況をつくらなきゃいかぬ。  ドラマや映画につきましても、監督なり、あるいは脚本家なり、主演俳優、このぐらいまではひもづいていても、脇役であったり、あるいはエキストラであったり、音楽であったり、いろいろな部分で権利の塊なんですけれども、これが、一つ検索すれば全部一気に出てくる、この皆さんにちゃんと分配できるというようなシステムになり切れていないというようなところが非常に大きな問題だと思いますし、ここらあたりも、今後つくるときは当然やっていただくんだけれども、そうじゃないこれまでの部分についてもしっかり整理をしていただく、またそれを後押しをするというようなこともこの共通目的の中には入るんじゃないかなというふうに思いますので、そこも御検討いただきたいと思います。  大事な、権利者の意思確認についてです。  権利者の意思を確認をするというときに、そういう形で、これまで自ら登録をしていない皆さんの著作物あるいは権の権利者でありますので、これをどのように探索をするか、どこまで頑張ってやるかも、使う人もそう、そして機関もそう、どのような形でやるかというガイドラインなりを作るべきだと思いますが、いかがですか。 ○永岡国務大臣 お答え申し上げます。  著作権者の意思につきましては、著作物ですとかその周辺、また、著作権者やプラットフォームの公式のウェブサイト、またSNSのプロフィール、それから、先生先ほどおっしゃっていましたけれども、検索エンジンなどを活用して確認するほか、各種のデータベースを用いて確認することを想定をしております。  また、文化庁の長官が裁定をした場合には、インターネットの利用その他の適切な方法によりまして、裁定をした旨のほか、著作権者名など著作物の特定に必要な情報を公表することとしております。  こうした意思表示ですとか公表の方法の周知を含めまして、新たな裁定制度の施行までの間、分かりやすく、本制度を利用する際の手順、手続をまとめた資料ですとかSNSなどを活用いたしまして、しっかりと丁寧に周知をしてまいりたいと考えております。 ○森山(浩)委員 これは、裁定を下す前の段階で本当に徹底してやっていただかないといかぬというところだと思います。知らんかったというようなことで大きく権利侵害されるということがないようにということですが。  もう一つ、権利の部分でというと、著作者の人格権の不行使という契約があります。不行使ですよと言ったんだけれども、それが二次利用されるという中において、例えば、キャラクターが思ったのと違う性格づけになって出てくるであるとか、あるいは、学者さんが、自分の書いたものがその趣旨と違う形で使われるとかいうような形で事案になっている部分もあります。  このときに、契約書を書いたんだから著作者の人格権は不行使でいいんですよねというようなことでどんどんどんどん利用されていくというようなことがないようにしなきゃいけないと思いますが、不行使は書いても、それが想像を超えるような使い方をされた場合に不行使を撤回をするということはできるという考え方でよろしいですか。 ○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。  著作者人格権や実演家人格権の具体的な定め方ということでございますけれども、これは一般論ではございますけれども、まずは私人間の契約において当事者間で決めることでございますので、両者が対等な立場で取り決められるものということでございます。  また、文化庁の契約関係適正化ガイドラインでは、著作者人格権や実演家人格権等につきましては、その取扱いについて確認しておくことが求められるとされておりまして、ガイドラインの契約書のひな形では特段の規定は示されてはおりません。  なお、やはりこのガイドラインの契約書のひな形の解説におきましては、著作物の利用の円滑化の観点から、一定の場合に人格権の不行使が求められる場合、この場合には、ここはちょっと、こういうふうに規定がなされているということで少し読み上げさせていただきますと、受注者は、発注者又は発注者が指定する者による著作物の利用に関して著作者人格権を行使しない、ただし、発注者又は発注者が指定する者が、著作物の利用に際して、受注者の名誉又は声望を害した場合はこの限りでないと規定するといった例も示されているというところでございます。  いずれにせよ、著作者人格権等の取扱いは私人間の取決めによって決定されるものでありますけれども、文化庁といたしましては、この取扱いにつきまして、ガイドラインの普及や著作権教育を通じまして、引き続き関係者の理解促進に努めてまいりたいと考えております。 ○森山(浩)委員 権利者そして使用者、両方の理解増進が必要だと考えます。  ありがとうございました。 ○宮内委員長 次に、金村龍那君。 ○金村委員 皆さん、おはようございます。日本維新の会の金村龍那です。  本日もよろしくお願いします。  少し喉がしわがれておりまして、いや、私が。申し訳ありません。なので、しわがれた者同士ということで、優しく質問してまいりたいと思います。よろしくお願いします。  まず、今回の改正案によって、海賊版等によって、著作権者が被害回復していくことが見込まれていると思うんですけれども、実際には損害賠償がメインになっていると思うんですね。ただ、この問題というのは、やはり本質は海賊版サイトをどのように取り締まっていくのか。もちろん、取締りそのものは警察の役割なのかもしれませんが、著作権法を所管する文化庁として、今後このようなサイトについてどのような対応策を検討しているのか、教えてください。 ○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。  インターネット上の海賊版サイトによる被害は依然として後を絶たず、継続して対応していくことが必要と考えております。  文化庁では、これまでに、侵害コンテンツのダウンロード違法化などの法整備や海外の著作権制度の整備支援、国民への普及啓発などの取組を行っているところでございます。また、クリエーターを含めた著作権者の権利行使、これを支援するために、昨年六月、著作権侵害対策の情報をまとめたポータルサイトを公開するとともに、八月には弁護士による無料の相談窓口を開設したところでございます。  文化庁としましては、引き続き、相談窓口等を通じた情報収集と発信を行いながら、権利者による権利行使の支援を強化するとともに、諸外国、関係省庁、関係団体との連携を密にしてまいりたいと考えております。 ○金村委員 やはりこれは、イタチごっこにはなると思うんですけれども、しつこく対応していくことが、海賊版サイトを開設したり、そこで違法な収益を得ている人たちにとっては困り事になるわけですから、是非しつこくやっていただきたいと思います。  その上で、私、会社を経営していたときに、よくイラストとか、それからアイコンだとか、そういったものをクリエーターに発注しようとすると、著作権の関係とか肖像権とか、そういったもので結構な金額を取られるんですね。だから、会社の業績がいいときは割ときちんとオーダーができるんですけれども、どうしても業績がまだ一定程度のときはフリーの素材をよく使うんですね。  私は、著作権者にとって著作物をしっかりと保護していくことは必要だと思うんですけれども、一方で、フリーの素材が社会にあふれることで進化や発展をしてきたことも現実論としてあると思うんですね。  その中で、例えば熊本県のくまモン、これはフリーなんですね。フリーだからこそ、あらゆる商品やそれから宣伝、そういったものに利用されて、今では、くまモンといえば熊本県というのは一定程度の日本国民が承知をしているところだと思うんですね。  そういった意味では、今回の改正のポイントは著作物と権利者のバランスだと思うんですけれども、ここを改めて、どのようなお考えか、お聞きさせてください。 ○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。  先ほどお話ありましたくまモンも、おっしゃるとおりフリーで使われていると聞いています。ただ、使うときは、許可してくださいねということで許諾を取っていらしていて、そこでやはり熊本としっかりつながって、熊本の方でも管理されているというふうに伺っています。  このように、著作権者の利用に係る意思を示すということは大変重要でございまして、自身の著作物の利用に関する条件や規約を示すことによって円滑に著作物を利用できていたり、手続を取れば無償で使用、先ほどのくまモンもそうですけれども、オーケーです、利用していいですという許可をしてくれる例もある、このように承知しております。  また、この度の法改正による新たな裁定制度では、著作権者の権利の保護に配慮し、その意思を尊重した上で、意思が確認できない場合の利用の円滑化を図りながら、著作権者等に利用の対価である補償金を支払われるという形になっているということでございます。  この制度によりまして、著作物の利用に係る意思を示すことの重要性が認識されますことから、著作物の適正な管理を促す、こういう効果もあると考えているところでございます。  文部科学省といたしましては、著作物の利用を円滑化するとともに、著作権者に対価を還元することで新たな創作につなげるコンテンツ創作の好循環の実現を目指す、このように考えているところでございます。 ○金村委員 私のように会社を経営していたときの経験という意味では見方が少し違うのかもしれませんし、クリエーター側にとっては非常に有意義な法改正につながっているのかもしれませんけれども、やはり大切なのは、このバランスをしっかり保って、社会に物があふれ、そしてそれを選択できるという自由があるというところを追求していくことだと思いますので、是非、バランスについては欠くことのないよう意識していただきたいなと思います。  そして、今回、この新しい裁定制度の下、著作権者が現れなかったときに、いわゆる、著作物を使うために払ったお金、補償金ですけれども、この補償金が、著作物等保護利用円滑化事業への支出となっているんですね。  実際に、じゃ、どのぐらい権利者がしっかりと把握されているかというと、探索のレベル感もありますので、そんなに多くはない。年間百人程度の、この著作物は誰が作ったのかということが明確になっている。そのぐらい特定が難しいと思うんですね。だとすると、補償金そのものは、ほとんどこの事業に使われることになると思うんですね。  そういう意味では、補償金が新しい事業に使われることは僕は望ましいと思うんですけれども、もう既にこの段階、法律を作る段階で、例えば支出先がある程度絞られている、例えばこういう先に支出を前提とした仕組みなんだということがあるのであれば明らかにしていただきたいと思います。いかがですか。 ○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。  指定補償管理機関の方で徴収されました補償金、これにつきましては、やはり、著作権者の方にしっかりと渡るように、申請者の方も確認しますが、申請者から出てきたら改めてまたしっかりと捜すということは大切ではございます。  ただ、委員御指摘のとおり、裁定後でも権利者が現れなくて補償金が支払われない場合につきましては、その支払うことのできない補償金を指定補償管理機関が権利者や利用者のために活用するということが大切となってまいります。このために保護利用円滑化事業というのがつくられているわけでございますけれども、具体的には、その支出先といたしましては、著作権の保護や著作物の利用円滑化、創作の振興に資する事業というふうに定められておりまして、例えば、今回の制度を議論した審議会では、様々な著作物の権利情報を集約して、利用にも対価還元にも貢献できるデータベースの構築といったところ、これをしっかり活用したらどうかというふうに言われているところでございます。 ○金村委員 お金が投資されることによって業界が広く発展していくことは非常に望ましい。でも、その支出先が固定化することによって、実際には特定の人たちになってしまう、こういうことは避けなければなりませんし、一方で、クリエーター自身が、個人がしっかりとその補償金を受けて成長していくことは実に望ましいことであると思います。私も、例えばクリエーターを使ったり、私がやっていた事業の中でいうと、例えばフリーランスの人に仕事を提供して、それで、その人が生活の足しにしていくというのはよくあったんですね。  だから、やはり、著作権法の中だけではないと思うんですけれども、そういったクリエーターを国として支援していく、一人一人が、事業を発注することによってその人が成長し、やがて自分たちにリターンが返ってくるということを国全体で取り組んでいくことが最も有意な社会につながると思いますので、是非こういった円滑化事業もスムーズにやっていただきたいと思います。  そして、権利者の保護と著作物のいわゆる利用促進というところで、この著作権法そのものが度重なる法改正につながっていると思うんですね。  私、今回、せっかくこういう機会だったので、著作権法がどういう流れになっているのかを自分なりに勉強したんですけれども、非常に難解で、法改正で質問するから学んだんだけれども理解が難しいというぐらい、これはほとんどの国民がなかなか理解できないと思うんですね。  例えば、知的財産とかそういった、著作権法とかをメインにした法律事務所であればそういったことは可能だと思うんですけれども、実際に権利者がそれを理解して、例えば作品を作る段階からこの法律を理解して、どういう進化をしていくのかというのを想像しながらクリエーターが制作に情熱を注ぐということがなかなか難しい法体系になっていると思うんですね。  実際に、例えばクールジャパンで世界に打って出ようといって著作物を選択しようとしたときに、権利構造も非常に複雑になっているので、これはちょっとややこしいからやめておこうとか、本来世界に展開したかった著作物でも、それが実際にできなかったケースというのは、クールジャパンですらあったと聞いているんですね。  そういった意味では、この著作権法そのものをもっと分かりやすく、簡単に、そして誰しもが理解し、それをある種運用できるようなものに変えていく必要があると思うんですけれども、これについてどのようなお考えか、お聞きさせてください。 ○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。  委員御指摘のとおり、著作権法は大変難しい法律でもございますし、ですが、これはやはり広く国民生活に関係する法律でもございまして、国民の皆様にとって理解しやすい制度にしていくことは望ましいと考えております。  あわせまして、この著作権法について国民の皆様に広く御理解いただくためにも、そしてまた適切に著作物が利用されること、これも重要であると考えておりまして、文化庁では、著作権法の普及啓発に努めてきているところでございます。  また、著作物の利用の際に許諾を得るための著作権者の探索や連絡などが大変だという課題に対しては、今回御審議いただいています新たな裁定制度を創設して、簡素で利用しやすい仕組みを設けること等を御審議いただいているところでございます。  文化庁としましては、こうした新しい制度も含めまして、著作権法について今後とも引き続き丁寧に周知啓発、いろいろな改善を図ってまいりたいと考えております。 ○金村委員 これは何でもそうなんですけれども、簡素化していくとより一般化しやすいということがあります。  私自身、今回学んでみて、この複雑なものを理解して、さらに、例えばビジネスシーンで生かすというのは、相当専門性がないと難しいなと思ったので、是非平易にしていくことを一つの検討にしていただきたいのと、今、少し、周知とか普及とか、その辺についてお触れになったと思うんですけれども、今回、質問の中には周知の部分というのは入れていなかったんですけれども、一つお聞きしたいのが、これは広く国民が認識していくのも当然なんですけれども、多分、著作権法というのは、クリエーターだったり、実際にその著作物を利用しようとする、双方がしっかり理解していくことが必要だと思うんですね。  国民全体に周知をしようとするが余り、本当は周知しなければいけない人たちに周知が徹底されないというのはよくある話だと思うんですね。広く薄くみたいな話だと思うんですよ。  そういう意味では、クリエーター自身、そして、著作物を利用しようとしているような、例えば事業だったり、それから団体だったり、そういったところに対して特別に、強く普及していくような予定というのはおありになるんでしょうか。お聞きさせてください。 ○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。  委員御指摘のとおり、やはり、この著作権法を利用される方は、著作権者等、あるいはそれを活用しようとする方々でございますし、そこが一番よく理解していただいて、日頃の活動、ビジネスの方に生かしていただくというふうなことによりまして文化振興が進む、このように考えております。  したがいまして、そうした方々に対しまして今後もしっかりと力強くPRを進めていきたいと考えていまして、今、ネットでの発信だとか、いろいろなツールができておりますので、文化庁といたしましても、いろいろな形でしっかりと、そういった皆様にも御案内、周知を進めていきたいと考えております。 ○金村委員 加えて、やはりポイントになってくるのは、先ほどフリーのところでも少し触れさせていただいたんですけれども、余りにも権利者保護の観点、著作物を作った権利者側の保護を強調していくと、やはりしっかりとした発展や進化というのが、妨げになると思っています。  それは、やはりクリエーターももちろん、ある種の育ちが、成長という育ちが必要なわけで、余りにも権利が中心となると、使う機会が減っていく。でも、やはり商品となって世の中に問われて初めてクリエーターの成長というのはできていくと私は思うんですね。つまり、自己満足で作っているわけじゃなくて、やはり商品としてしっかり提供していくことで進化していくと僕は思っていますので、こういったバランスの取り方というのは非常に重視していただきたいなと思います。  その上で、今、アニメや映画に限らず、日本のコンテンツを世界に向けて発信していくというのは、全ての人が頑張ってほしいと思っていると思うんですね。そういう意味では、この著作権法というものは、あくまでもグローバルスタンダード、つまり世界と基準を合わせていくことで、日本のクリエーターが一つの法律を理解すれば世界で展開できる、こういうふうにしていくことが、最も、いわゆるクリエーター側にとっても、そしてそれを使う側にとっても分かりやすさにつながるんじゃないかなと考えています。  その上で、やはり、この著作権法そのものをしっかりとビジネスシーンに生かす、稼ぐための著作権法、そういった視点を欠いてしまっては本当にクリエーター側の自己満足になりかねないので、その視点が必要なのと、それから、この著作権法そのものがしっかりと、クリエーター、そしてそれを取り巻く、例えば事務所だとか会社だとか、そういったところがしっかりと理解をして、そして、グローバルスタンダードに合わせた著作権法があって、そして、これでヒット作を作るとか、しっかりと世界に問うとか、そういったことが必要だと思うんです。  今回の著作権法改正、そしてまた、不具合が起きて少しずつ微修正を繰り返すようなことではなくて、本質的にこの著作権法がどうあるべきかとお考えか、お聞かせください。 ○永岡国務大臣 お答え申し上げます。  デジタル化やSNSなどの普及によりまして、誰もが著作物を創造できますし、また発信ができます、そして利用もできる、そういう時代になりました。  そんな中で、著作権制度については、やはり、正しい理解が広がって、そして、著作権の保護と著作物の適切な利用が進むということが大変重要なわけですよね。このために、利用者だけではなくて、個々のクリエーターや著作権者に対しまして、制度を改正した機会などを捉えて、これを分かりやすく説明を行いまして、そして著作権の普及啓発に努めているところではございます。  お尋ねにありました今後の著作権法のあるべき姿につきましては、こうした取組を通じまして、著作権法を国民にとって身近で親しみやすいものとするとともに、著作権の保護とは、公正な利用を図って、そして文化の発展に寄与することが重要、そういうことである、そういうふうにも考えておるところでございます。 ○金村委員 今私がちょっと質問させていただいた内容というのは、これから、例えば日本が世界に打って出るときに非常に重要な観点だと私は思っておりますので、是非御検討いただきたいと思います。そして、先ほど少しクールジャパンにも触れましたけれども、やはり、しっかりと世界に発信していくということを日本はこれから更に強化していくことにつながるんだと思います。  その上で、クールジャパンであれば、商品だったり文化だったりそういった産業だったりというものをクールジャパンの側から発信をしていると理解しているんですけれども、一方で、著作権法を所管する文科省として、世界に向けて発信していく上での取組、どのようなお考えか、お聞かせください。 ○永岡国務大臣 やはり、先生おっしゃいますように、日本のアニメというのは、外国に住んでいらっしゃる方々にとって、本当に憧れであるという方もいらっしゃいますし、その日本のアニメを見て、大変日本に興味を持って、そして、留学したいとか、やはり日本に住みたい、旅行したい、そういう方々も大変多うございます。  そんな中で、昨今のグローバル化を踏まえまして、我が国の伝統文化ですとか、また、アニメなどのポップカルチャーなど、我が国の強みとされております文化芸術を広く国際発信をいたしまして、グローバル展開を効果的、そして戦略的に進めることが重要だと思っております。  このため、文化庁では、国際共同制作を含めましたアニメーション等の映画制作への支援ですとか、日本映画の海外映画祭への出品の支援などに取り組むとともに、アート、ポップミュージックなどのコンテンツにつきまして、官民で連携したグローバル展開の推進に取り組んでいるところでございます。  また、伝統文化につきましては、文化遺産オンラインによります国際発信に取り組むとともに、日本博二・〇を通じまして、日本各地の文化資源を磨き上げまして、そして、日本の文化芸術の多様性を世界に示す取組を進めているところでございます。  引き続きまして、こうした国際発信の強化、そしてグローバル展開の戦略的推進、これはしっかりと進めて、努めてまいりたいと思っております。 ○金村委員 是非後押しをしていただきたいと思います。  今、質問しながら一つ思い出したんですけれども、二〇一〇年に、ある食品企業が、アフリカでその商品を定着させたい、商品をしっかりと販売していきたいとなったときに、ちょうど私、議員秘書をしておりましたので、相談がありました。その相談内容は、アフリカで「おしん」を流してほしいと。日本らしいドラマを、企業が現地で営業をかけたいときに、まず日本そのものの認知を高めていかなきゃいけないと。それで、「おしん」をいわゆる放映してもらえないかという相談を受けて、NHKに相談したところ、著作権の問題だったんですね。  だから、やはりこれは、実は著作権だけでもないし、いわゆるクールジャパンだけでもないし、日本の企業が海外で定着していく一助に、実はこの著作権法を活用したいわゆる海外での戦略というものは十分可能だと思うんですね。なので、この視点はしっかり、実は著作権を所管している文科省だけの課題ではないですけれども、いろいろな複層的な視点を用いて、しっかりとビジネスシーンでも活用できるような視点を取り入れていただきたいなと思います。  そして、少し時間が余ったので、一つだけ最後に質問させてもらいたいんですけれども、実は私、障害者アートというものを支援していまして、その障害者アートをデジタルで保管して、それを商品として提供する、すると障害者自身の支援に至るというスキームの中で、そういうスキームを提供しているNPO法人があるんですけれども、実はこれは、例えば、文科省がこういったいい取組を、著作権を生かして、いわゆるエコシステムをしっかりと提供しているようなそういう事例をしっかりと発表していく、世の中に発信していく、こういった取組というのは私は有用なんじゃないかなと考えるんですが、大臣のお考えを最後にお聞かせいただけますか。 ○永岡国務大臣 今の御提案、なかなかいい取組だと感じております。こういうことも含めまして、やはり、これから文化庁の方でしっかりと検討させていただきます。 ○金村委員 時間となりました。今日もありがとうございました。 ○宮内委員長 次に、西岡秀子さん。 ○西岡委員 国民民主党・無所属クラブ、西岡秀子でございます。  本日も、著作権法の一部を改正する法律案につきまして質問の機会をいただき、ありがとうございます。  早速質問に入らせていただきます。  著作権につきましては、申請や登録などの手続を一切することなく、著作物が作られたその瞬間に自動的に付与される権利であるということが国際的な考え方となっております。  著作物は、原則、創作時から著作者の死後七十年保護され、一方で、著作物などを人々に伝達した者に与えられる権利、著作隣接権については、実演等が保護され、実演時から七十年保護されることとされております。  著作権法は、第一条でも述べられておりますとおり、著作権者の適切な権利の保護によって創作活動の促進を進めると同時に、公平な利用によって文化の発展に寄与するということが明記をされております。その意味では、先ほどから議論があっておりますけれども、著作権者の保護と著作物の公正な利用の促進をどういうバランスを取っていくかということが大変重要となります。  また、近年、インターネットの進展、デジタルの進展、ネットワークの進展によりまして、著作物を取り巻く環境も大きく変化をして、複雑化、国際化しておりまして、その都度、これまで著作権法の改正が行われてきたと理解をいたしております。  著作権法については様々な議論の論点があるというふうに思うんですけれども、私自身、今日の質疑は、著作権、権利の保護ということを中心に、その視点で質問をさせていただきたいと思います。  まず、一問目と二問目、ちょっと順番を入れ替えさせていただきまして、二番目の質問から最初させていただきたいと思います。  先ほど申し上げましたように、本来、著作権者は何の意思表示をしなくても作品を使用されない権利を持っているというふうに言えると思いますけれども、今回新設された裁定制度につきましては、著作権者が意思表示をしていないこと又は著作権者と連絡がつかないことをもって、著作権者が有する権利、許諾権を制限をするたてつけとなっているというふうに理解をいたしますけれども、そのことに対する認識について。また、著作権については、著作権に係る国際条約が存在をいたしておりますけれども、この制度と国際条約や国際ルールとの整合性について。また、同趣旨の諸外国の制度につきまして、文化庁にお尋ねをさせていただきたいと思います。     〔委員長退席、中村(裕)委員長代理着席〕 ○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。  新たな裁定制度は、法律上の要件を満たせば直ちに許諾なく利用が認められる仕組み、いわゆる権利制限規定の形は取っておりません。  この制度は、ほかの方々の著作物を利用する場合は著作権者の許諾が必要である、こういう原則にのっとったものというふうに認識しておりまして、著作物の利用の可否に係る著作権者の意思が確認できない場合は、それが確認できるまで文化庁長官の規定により利用を認めるという仕組みでございます。  また、この制度は、著作権者の意思を尊重しつつ、公益上の見地から、政府機関が一定の措置を講じることによりまして時限的な利用を認めるというものではございますけれども、他方、著作権者はいつでも裁定を取り消すことが保障されています。  こうしたことから、この制度は、ベルヌ条約が定める内容の範囲内の措置でございまして、我が国が締結する国際条約に抵触するものではないと考えております。  今般の検討に当たりましては、欧州諸国において導入例のある拡大集中許諾制度、これも参考にいたしながら、我が国における法制度との整理や集中管理の状況等を踏まえて検討を行ってきたところでございます。 ○西岡委員 今、御答弁の中で、著作権者の権利を制限するものではないということを確認をさせていただきました。  次の質問に移ります。  現行におきまして、著作権者不明の場合の裁定制度が既に存在をいたしております。今回の法改正によって新しい裁定制度を新設されるという法改正でございますけれども、従来からの裁定制度もそのまま存続するというたてつけとなっております。  存続した上で、今回、法改正によって新しい裁定制度を創設される理由、背景、そして法律の趣旨について、永岡文部科学大臣の御見解をお伺いをいたします。 ○永岡国務大臣 お答え申し上げます。  今回の新たな裁定制度は、コンテンツの利用円滑化を進めるとともに、それに伴います権利者の収益を確保して、そして新たな創作につなげるというコンテンツ創作の好循環の実現を目指すものでございます。  また、新たな裁定制度と現行の裁定制度は、要件、効果を比較すると、異なる点があります。  要件につきましては、新たな裁定制度では、利用の可否や条件など、著作権者の意思が確認できない、そういう場合を対象としておりますが、現行の裁定制度は、より要件が厳格でございまして、利用者が相当な努力を払っても、著作権者が不明であったり、連絡することができなかったりする場合としております。  効果につきましては、新たな裁定制度では、文化庁長官の裁定によりまして時限的な利用を認めることとしておりますが、現行の裁定制度では、利用の期間の制限がなくて、そして著作権者が見つかっても利用を継続することが可能でございます。  この二つの制度について、どちらを使うかというのは、やはり利用者のニーズによって自由に選択できることが重要でありまして、いずれも必要な制度である、そう考えております。 ○西岡委員 新しい裁定制度が、もしこの改正が成立をして、できた状況の中で、その利用状況も含めて、存続についても考えていかれるのではないかというふうに思っておりますけれども、その辺りの違い、相違点についてもしっかり周知をしていただく必要があるのではないかというふうに考えております。  続きまして、著作権法の趣旨を踏まえますと、著作物の利用の促進も大変重要なことだと認識をいたしておりますけれども、まず守られるべきは著作権者の権利であると考えております。新制度において、意思を表示していない著作権者の権利をどのように守っていくのかということについて、文化庁の御見解をお尋ねをいたします。 ○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。  先ほども答弁申し上げましたとおり、今回の制度により著作物が利用される場合、著作権者は、取消し請求により著作物の利用を停止させることができるとともに、それまでの利用対価といたしまして通常使用料に相当する額の補償金を受け取ることができる、このような形になっておりまして、著作権者の権利は保障される仕組みとなっております。  このような制度上の手当てに加え、本法律案が成立した際には、著作権者に制度の理解が浸透し、意思表示が促進されますよう、制度の施行までに丁寧な説明、周知を行ってまいりたいと考えております。 ○西岡委員 今の質問と関連をする質問となるわけでございますけれども、今回の改正は、新たな裁定制度を創設して、立法、行政における権利制限規定を、ある意味、まあ制限するものではないという御答弁はありましたけれども、拡大をして、手続の簡素化を図ることによって、著作物を利用する側の利便性を図ることにより円滑な利用を促進する、ある意味、利用者の立場に立った法改正であると言えると思います。  我が党、国民民主党の部会において重要な視点として議論をされましたのが、この新設される制度において、文化庁様からの説明ですとか資料の中に、一度、意思表示がない、連絡が取れない著作権者であると判断された後、この裁定制度の中で著作権者の権利がどのように位置づけられていくのかということが明確に示されていないという点が我が党の部会での争点となりました。  新設される裁定制度を利用し、著作物を利用したいと考える利用者が申請を行って、一度、著作権者の意思がない、連絡が取れないと判断されて、手続が開始された後においても、著作権者の意思を確認する行為を著作権者が自分から名のり出てくることのみに依存するのではなくて、引き続き、不断の権利者の探索ですとか、アプローチを継続的に進めていくということが重要であると考えますけれども、このことにどのように対応、対処をしていかれるのか、文化庁の御見解をお伺いいたします。 ○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。  新たな裁定制度では、まずは、利用者自らが著作権者の所在や意思を確認することが求められているところでございますけれども、申請手続がその後なされた場合、登録確認機関において、著作権者の意思が不明であるか、改めて確認、探索、アプローチが行われるところとなります。  また、裁定がされた後も、著作権者の意思を尊重し、著作者が、請求により著作物の利用を停止させ、補償金を受けることを可能としてございます。  さらに、著作権者が請求しやすくなりますように、インターネットの利用そのほかの適切な方法によりまして、裁定をした旨を示すほか、著作者名など著作者の特定に必要な情報を公表する旨の規定を整備することとしてございます。  この公表に当たりましては、著作物の抜粋やサムネイル画像を併せて掲載することによりまして、著作権者が気づきやすいよう、運用についても工夫した上で、不断の探索等につきまして継続的に行ってまいりたい、このように考えております。 ○西岡委員 名のり出てこられるのを待つのではなくて、不断の探索、アプローチを続けていかれるということですので、このことは大変重要だと思いますので、お取組をよろしくお願いいたします。  続きまして、これまでの委員会質疑の中でもあったんですけれども、登録確認機関、指定補償金管理機関については、同一の団体であることもあり得るということが御答弁の中でございました。  それでは、具体的にどのような団体を想定しておられるのでしょうか。  私は、やはり、当然、著作権という専門的な知見を有して、著作権者と利用者をつなぐ、ある意味、大変複雑で、権利保護に係る重要な業務を遂行し、また補償金を徴収、管理、支出するなど、大変責任のある業務を担うこととなると認識をいたしております。この団体の選定というものは重要でございます。  先ほど、文化庁が担うこともあり得るという、質疑の中での御答弁もありましたけれども、その中で若干その要件的な御答弁があったというふうに思いますけれども、文化庁として想定している具体的な必要とされる要件について御説明をいただいて、また、例えば、今、集中的な管理をしている既存の団体、この団体を対象とすることもあり得るのかどうか。もちろん、この団体が手を挙げるという前提ですけれども、その対象と考えておられるのかどうかということも併せてお尋ねさせていただきます。 ○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。  今回の改正法案におきましては、登録確認機関につきましては、確認等事務に従事する者に著作権等の管理に関する経験や使用料相当額の算出に必要な知識及び経験を有する者がいると認められるものを登録することとされています。指定補償金管理機関につきましては、一般社団法人又は一般財団法人であって、補償金管理業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものを指定するとされているところでございます。  いずれにせよ、現時点では、どのような団体が指定、登録されるかは、個別具体の事業者からの申請が基本となりますので、こうした今申し上げたような要件を満たせば、同一団体の指定、登録、あるいは、それぞればらばらというような形も、どちらでもできるような形になってございます。  また、委員御指摘の、今ある法人のということの中でというお話でございますが、ただ、今、これから公募でございますので、私の方から何とも申し上げにくいところでありますが、審議会の議論の中では団体の例示等もございましたけれども、いずれにせよ、こういう今のようなスキームの中で、しっかりと選考手続を整えながら、公正かつ厳正な審査、選考を経て決定したい、このように考えているところでございます。 ○西岡委員 今の御答弁からいきますと、その団体が手を挙げた場合には、その選定の俎上として、今既に集中管理団体として業務を行っている団体もその対象となるということで理解をさせていただきました。  次の質問に移ります。  団体によりましては、今の質問とも若干関連をいたしますけれども、既に集中管理をしている場合ですとか、出版物については個別許諾の意思表示がある場合、当然この新制度の対象外となるわけでございますけれども、この新制度が新設されることによって、既に今様々な権利を集中管理している団体に与える影響というものはあるのでしょうか。そのことについての文化庁の御見解をお尋ねいたします。  例えば、裁定制度における申請受付、補償金の受領、管理等の業務を行う窓口組織の運営に要するコストですとか、データベースの構築、維持、改良に要するコストなど、既存の集中管理団体に直接また間接の負担を強いることにはならないかという懸念の指摘もございますけれども、この点について文化庁に確認をさせていただきます。     〔中村(裕)委員長代理退席、委員長着席〕 ○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。  新たな裁定制度は、集中管理がされていない著作物や、利用の可否に係る著作権者等の意思を円滑に確認できる情報が公表されていない著作物を対象とするものでございますので、既存のライセンスなどに悪影響を与えるものではないと考えております。  また、新たな裁定制度の事務を担う窓口組織につきましては、その指定、登録を望む申請者が手数料収入等を原資に運営に要するコストを担うものでございまして、既存の著作権等管理事業者にその意に反して個別の負担を強いるものではございません。  なお、著作権者等の探索等に活用が期待される分野横断権利情報検索システムの構築に向けましては、今年度、文化庁において調査研究を行うなど、具体的な検討を進めることとしてございます。 ○西岡委員 ありがとうございます。  続きまして、新制度を運用するに当たりまして、著作権者に対して、この制度の趣旨ですとか、意思の表示、また、連絡先、オプトアウト等について、十分な説明、周知が必要だと考えております。  今、国際的には、クリエーティブコモンズライセンスなど、国際的に著作権者が著作物を公表する際にその利用条件を意思表示するツールというものがございますし、文化庁では自由利用マークという三つのタイプを作っておられると承知をいたしておりますけれども、こういうことも含めて、今回の新制度の周知とともに、未管理著作物とならないための周知、広報、広い意味での、学校教育も含めた国民に対する著作権に関する教育も必要であると考えますけれども、この周知、広報についてどのように取り組んでいかれるのかについて一点お伺いをいたします。  また、個人で匿名で創作活動をされているクリエーターも多数おられます。その個人情報の開示については十分な配慮が必要であると考えますけれども、文化庁の方針についてお伺いをいたします。 ○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。  新たな裁定制度の施行に当たっては、著作権者に制度の仕組みを正しく理解していただくことが重要であると考えております。丁寧な説明、周知の時間を十分に確保するために、施行日を公布の日から三年以内の政令で定める日とし、その間に、分かりやすく制度を説明した資料やSNSなどを活用して、周知の工夫をしてまいりたいと考えております。  また、新たな裁定制度の利用者が匿名で創作活動をされている場合、その利用に関するインターネット等での公表におきましては、法律上、実名の公表は必須とはしておりません。 ○西岡委員 個人情報の開示については、慎重な、十分な配慮が必要であるということは申し添えたいというふうに思います。  続きまして、新裁定制度によって著作物を使用していたが、途中で権利者が現れて使用することを拒否をした場合に、既にインターネット上において掲載、使用していた場合、なかなか完全にこのデータを消去することは不可能であるというのが現実だと思います。  このような場合、どのように権利者の権利を守っていくのかということについて、文化庁にお尋ねをいたします。 ○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。  新たな裁定制度では、裁定を受けて著作物が利用される際には、利用の方法や期間に応じた通常の使用料に相当する額の補償金を著作権者が受け取れるようにしてございます。この制度により、著作物が利用される場合でも、著作権者が経済的な不利益を被ることがない仕組みとなっており、著作権者の権利が保護される制度となっております。 ○西岡委員 続きまして、新しい裁定制度の利用につきましては、指定補償金管理機関に補償金を支払うこととなりますけれども、本来著作権者が受け取るべき補償金を、権利を持たない団体が徴収、管理、支出することに対して、法的なたてつけとして問題はないのかどうかということについて、文化庁にお尋ねをいたします。 ○杉浦政府参考人 法律のたてつけということでございます。  新たな裁定制度は、補償金の供託、これをまず原則としております。その上で、権利者及び利用者双方の供託手続の負担を解消し、より制度を利用しやすいようにする観点から、供託に代えて指定補償金管理機関が補償金を管理する仕組み、これを新たに法定することとしたところでございます。  具体的には、文化庁による厳格な審査の下、補償金の管理を適切かつ確実に行うことができると認められる団体がある場合に限りまして指定補償金管理機関を指定し、利用者は当該機関に対して補償金を支払うこととなります。  こうした法整備によりまして、御指摘の法的なたてつけに問題はございません。  この指定補償金管理機関に対しましては、その業務の実施方法を定めた業務規程や実施計画について文化庁長官の認可事項とし、さらに、文化庁長官による報告徴収や監督命令等の規定を整備してございまして、文化庁による監督が当該機関に対して及ぶことになる、このように考えております。  なお、現行著作権法では、一定の適格性を有する団体を文化庁長官が指定し、権利者に代わる補償金の管理権限を付与する制度、こうしたものが既にございまして、こうした既存の仕組みも参考としているところでございます。 ○西岡委員 今のことに関連して、ちょっと次の質問も順番を入れ替えさせていただきます。  著作権者が現れない場合には、補償金を権利者、利用者双方のための事業に支出をされるという仕組みになっておりますけれども、その支出の妥当性や透明性をどのように担保していく方針であるかどうかということについて、文化庁に見解をお尋ねいたします。 ○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。  著作物等保護利用円滑化事業についての御質問と承りました。  裁定後に権利者が現れず補償金が支払われない場合に、指定補償金管理機関が権利者に支払うことのできない補償金を権利者及び利用者のために利用する、こういう制度でございます。  この著作物等保護利用円滑化事業を含む指定補償金管理機関の事業計画につきましては、毎事業年度、文化庁長官の認可を受ける必要がございます。  また、指定補償金管理機関は、著作物等保護利用円滑化事業の内容を決定しようとするときは、学識経験者の意見を聞く、このように定められているところでございます。  さらに、その事業計画については、文化庁長官の認可を受けた後、遅滞なく、事業報告書についても当該事業年度の終了後三月以内に公表するものとしてございます。  こうした措置によりまして、当該事業が著作物等の適正な管理を促進し、著作権の保護や著作物の利用円滑化などに資するものとなりますよう担保してまいりたいと考えております。 ○西岡委員 やはり、支出の妥当性、透明性は大変重要だと思いますので、しっかりそれを担保するお取組をお願いを申し上げたいと思います。  それでは、この新制度について、大変重要な肝となるのが分野横断権利データベースであると考えております。集中管理が進んでいる音楽等以外の分野についても、充実したデータシステムを構築するということが大変重要だと考えております。このシステム構築に向けたお取組について、文化庁にお伺いをいたします。 ○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。  著作物の分野を横断して権利者を捜すことのできるシステムは、著作物の利用者が権利者の情報を探す作業を効率化し、新たな裁定制度に係るプロセスを短縮できることが期待されるものでございまして、文化庁といたしましては、その構築に向けて取組を進めているところでございます。  昨年度は、有識者から成る分野横断権利情報データベースに関する研究会、これを開催し、報告をまとめました。その中では、構築すべきシステムは、分野ごとのデータベースを前提として、それらと連携することにより情報検索が可能となる分野横断権利情報検索システムとすることが適当である旨、基本的な考え方や今後の方向性が示されたところでございます。  これを受けまして、本年度において調査研究を実施し、具体化に向けた更なる検討を進めることとしております。例えば、各団体が有しますデータベースの管理状況などに関する調査、検索画面イメージなどの技術的な仕様の検討、著作権等管理事業者や関係団体を交えた検討と意見集約などを行うこととしてございます。 ○西岡委員 既存の各団体との連携は大変重要だと思いますし、このデータベースをやはり充実したものにするというのが新しい裁定制度の一番の肝となるというふうに思いますので、様々な団体の知見、経験、またデータをしっかりと連携をしながら進めていただくことをお願い申し上げたいと思います。  著作権につきましては、先ほどから議論があっておりますように、権利者の保護とともに、円滑な利用の促進というものが日本の文化にとっても大変重要なものであるというふうに思いますし、著作権制度の在り方というのは、その国の文化度を表すということも言われる大変大切な制度でございますので、しっかりこれからも文化庁におかれましては進めていただき、制度の充実、そして、やはり権利者保護の面ではまだまだ日本は不十分なところがあるというふうに私は認識をいたしておりますので、しっかり今後もお取組を続けていただきたいと思います。  時間も残り僅かとなりましたけれども、最後の質問となります。  先般の質疑の中で、最後にちょっと、時間が足りない中で大臣に御答弁をいただいたわけでございますけれども、少子化対策、こども・子育て支援加速化プランについて、特に、文科省の方で具体的なお取組について先般記者会見もされておりましたけれども、奨学金制度の拡充について、具体的な文部科学省としての方針についてお伺いをさせていただきたいと思います。 ○永岡国務大臣 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、実は、先日、小倉大臣が取りまとめました今後の子供、子育て政策のたたき台におきまして、給付型奨学金の拡充等についても盛り込まれております。  具体的には、令和六年度から、給付型奨学金等について、年収六百万円程度までの世帯を対象に、多子世帯、それから理工農系の学生等へ支援を拡大するとともに、修士段階におきまして、授業料を卒業後の所得に応じた後払いとする授業料の後払い制度を創設することとしております。あわせまして、結婚や出産などライフイベントに応じた柔軟な返還が可能となりますように、貸与型の奨学金の減額返還制度について見直しを行います。  そして、今後、総理の下に設置されましたこども未来戦略会議におきまして、このたたき台をベースといたしまして、六月の骨太の方針二〇二三までに将来的な子供予算倍増に向けました大枠を提示すると承知をしております。  文部科学省といたしましても、引き続きまして、こども家庭庁を始めとする関係省庁と連携そして協力しながら、この議論に積極的に参画をしてまいります。 ○西岡委員 大変様々な要件が課されておりまして、また今後議論をさせていただきたいと思います。  時間となりました。これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。 ○宮内委員長 正午から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五分休憩      ――――◇―――――     正午開議 ○宮内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。宮本岳志君。 ○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。  著作権制度は、著作物を利用する人たちが利用しやすいようにするとともに、著作権者、隣接権者の権利が損なわれないように、権利の保護と公正な利用のバランスが求められると思うんです。  我が党も、今回の改正は、基本的に賛成です。  権利者側からは、今回の新たな裁定制度が権利の切下げにつながるのではないかとの危惧も出されておりますので、まず、幾つか確認しておきたいと思います。  今回の法改正にある新たな裁定制度は、利用許諾を確認できなければ利用できないというこれまでの一般原則を転換するものなんですね。制度設計に当たっては、できるだけ権利者の意思を反映できるような運用、十分な配慮を求めるなどの意見があったと承知しております。  その上で、新制度は、著作権者等の意思を確認するための措置を取ったにもかかわらず、確認ができない場合には、文化庁長官の裁定を受け、補償金を供託することにより、裁定において定める期間に限り、当該未管理公表著作物等を利用することができる、こうなっております。  現行の裁定制度よりも簡易に迅速に使えるようにしようというのは一定理解するものの、例えば、連絡を取っても確認できないというのがどの程度の期間なのか、また、権利者の探索や意思の確認が、形式的に捜しましたよとか、拙速な扱いでは、とても認められないと思うんですが、これは、文化庁次長、いかがでしょうか。 ○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。  著作権者からの返答がない期間につきましては、著作物の種類、その利用形態、許諾を得るための連絡手段によりまして、多様なケースが考えられるところでございます。  このため、実際の運用に当たりましては、制度の周知状況、利用者側のニーズ、著作権者側の負担なども総合的に考慮しながら、合理的と考えられる期間を設定するというふうに考えております。  新たな裁定制度の施行に当たりましては、著作権者に制度の仕組みを正しく理解していただくことが必要であると考えておりまして、本法律案が成立した際には、その施行までの間、分かりやすく制度を説明した資料やSNSなどを活用しながら丁寧に周知してまいりたい、このように考えております。 ○宮本(岳)委員 悪意のある利用などの、著作権者の望まない利用といったことへの不安の声もございます。それらの声に応えて、著作権者の望まない利用に配慮した丁寧な運用が求められると考えますが、これもよろしいでしょうか。 ○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。  新たな裁定制度について、悪意のある利用が行われてしまうのではないかとの御懸念があることは承知してございます。  新たな裁定制度では、まずは著作権者の意思を確認することを求めておりまして、その上で、著作権者の意思が不明な場合、文化庁長官が決定する仕組みとしておりますけれども、実は、ここはなかなか難しいところがございまして、この決定は法律上の行政処分にも当たります。そういうことから、公序良俗違反であるとか違法性が高いことが明らかな利用につきましては、実務上では裁定が極めて困難となる可能性が高いものと認識しております。  いずれにせよ、慎重な手続で、個別具体にしっかり判断していくということが求められていると考えております。 ○宮本(岳)委員 探索をする上で、その前提となる、分野横断した権利情報データベースを構築するということになっております。  少なくとも、現時点においては、個別分野におけるデータベースが充実しているところは全体のうちでも一部分にとどまっており、分野横断データベースの構築は容易ではないと考えられます。  仮に、これを構築するとなった場合に、その費用は相当な額に上ることが予想され、運営主体をどうするか、その運営経費をどのように調達するのかといった課題が考えられます。また、十分な精度のデータベースを構築し、それをメンテナンスして、日々管理運営していくためには、これまた相応の経済的基盤が必要です。  分野横断権利情報データベースの構築、管理運営については適切な公的支援が行われるべきだと考えますが、いかがでしょうか。 ○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。  昨年度文化庁にて開催いたしました有識者から成る研究会の報告によりますれば、今後構築すべきシステムは、分野ごとのデータベースを前提として、それらと連携することにより情報検索が可能となる分野横断権利情報検索システムとすることが適当と示されたところでございます。  このシステムの運用主体と運営基盤の確立につきましては、今回の法案による新たな権利処理方策において位置づけられる窓口組織の在り方などを踏まえつつ、今後検討を進めるべき課題として挙げられております。  こうした取りまとめを受けまして、文化庁におきましては、本年度、システムの構築に向けた調査研究を行うこととしておりまして、御指摘の、システムの構築に向けた支援の在り方についても検討を進めてまいりたいと考えております。 ○宮本(岳)委員 では、次のテーマに入るんです。  さて、昨年十一月の二十七日に、「月はどっちに出ている」「血と骨」など在日コリアンの物語をリアルに描いた作品で知られる崔洋一監督がお亡くなりになりました。私は、謹んで崔さんの御冥福を心からお祈り申し上げたいと思います。崔監督は日本映画監督協会の理事長も務めておられ、私は、超党派の文化芸術振興議連や映画議連の場などで、日本の映画監督の著作権問題について繰り返し崔監督からお話をお聞きしてまいりました。今日は、故崔洋一監督の遺言を果たすつもりで質問したいと思うんです。  日本で最初に著作権の保護を規定したのは一八六九年の出版条例でありますけれども、最初に著作権法が施行されたのは一八九九年、明治三十二年のことでありました。文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約、いわゆるベルヌ条約への加盟に合わせて制定されたものです。  この旧著作権法において、完成された映画の著作権は誰が原始取得することになっていたか、文化庁次長、お答えいただけますか。 ○杉浦政府参考人 当時の規定では、著作者という形となります。 ○宮本(岳)委員 著作者はすなわち映画監督ということで、映画監督が原始取得するものであると。ただ、映画著作権は映画完成と同時に映画会社に移るものとする意見で統一していたとされております。  資料一を見ていただきたいんです。二〇一六年二月二十六日、崔監督御健在のときに行われた日本映画監督協会創立八十周年記念シンポジウムのパンフレットの写しであります。右側の下線部、旧著作権法では、「完成された映画の著作権は映画監督が原始取得するものであるが、」「映画著作権は映画完成と同時に映画会社に移るものとする意見に統一して、国会に臨んだ」とございます。  現行の著作権法は、一九七〇年に旧著作権法の全部を改正して制定され、一九七一年一月一日に施行されました。  今度は、先ほどの資料一の左側を見ていただきたい。第十六条では著作者に映画監督を含めながら、著作権者については第二十九条で、映画の著作物の著作権者は、その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の作成に参加することを約束しているときは、当該映画製作者に帰属するとなっております。  つまり、映画の著作権は映画製作者、これは映画会社のことでありますけれども、映画会社に帰属するということになっているんですね。旧法のように移転とか譲渡でさえなく、帰属するというんですから、その瞬間に、元から映画会社に帰属しているという書きぶりになったんですね。  なぜこういうふうに七〇年改正で変えたのか、これも文化庁次長、お答えいただけますか。 ○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。  映画の著作物の著作者は、現在の著作権法第十六条にもありますとおり、映画の制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に寄与した者となります。著作権法第二十九条では、映画の著作物の著作権の帰属につきまして、原則として、映画の著作物の著作者が映画製作者、映画会社や製作委員会等でございますけれども、この映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、当該映画製作者に帰属することを定めてございます。  映画の著作物につきましては、多数の関係者が制作に関与するとともに、多額の投資が必要でございまして、円滑な流通の確保、投資回収等の観点からこのような規定が設けられたと承知しております。 ○宮本(岳)委員 そういう答弁が繰り返されてきたんですね。  ただ、これは改正時から、映画監督側からの大きな批判が沸き起こったのは当然のことなんです。  資料二の一を見ていただきたい。その改正が議論された昭和四十五年、一九七〇年四月一日の衆議院文教委員会著作権法案審査小委員会、参考人質疑の会議録であります。参考人として出席した協同組合日本映画監督協会の常務理事だった大島渚監督の意見陳述であります。  先ほどの資料二の二枚目ですね、中身が出てきますけれども、二枚目で、参考人の大島渚監督は、著作権は財産権に属するもので、財産権は憲法二十九条によって守られている、ところが、今回の著作権法二十九条というものはその財産権を奪うものだとまで言っております。同じ二十九条ということ、くしくもということで、著作権法二十九条で憲法二十九条に保障された財産権を奪うのかという告発になっているんですけれどもね。  だから、なぜこういう法改正をしたのか。それまでは、原始的にはですよ、監督にあったもの。もちろん、先ほど次長が述べたように、その後、映画会社がいろいろしないと駄目だというのは、もう前からそうなっているんですよ。でも、それは、一旦自分が受け取った著作権を移転したり譲渡したりするならまだしも、一度ももらわずに帰属させられるというのに物すごく屈辱感を感じると監督さんたちはおっしゃっているんですけれども、これはなぜなんですかね、次長。 ○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。  先ほども委員の方から経緯をおっしゃっていただいたとおりのところだと思いますけれども、いずれにしましても、私ども承知していますのは、映画の著作物につきましては、多数の関係者が制作に関与するとともに、多額の投資が必要であり、円滑な流通の確保、投資回収等の観点からこのような規定が設けられた、当時そのように法律が作られたというふうに承知しております。 ○宮本(岳)委員 もうこれ以上重ね問いしませんけれども、いや、別に、七一年以前も多額の費用は必要だったし、それ以前もたくさんの方が関わっていたわけですから、ここで変えるということは大変物議を醸すのは当然のことだと思うんですね。  これだけの怒りを持って受け止められた七一年改正ですから、その後も映画監督の著作権問題は、折に触れて議論になってまいりました。  一九九二年三月三十日に公表された著作権審議会第一小委員会のまとめでは、映画監督等の権利についてどのように書かれておりますか、文化庁次長。 ○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。  平成四年の著作権審議会の第一小委員会のまとめにおきましては、このように書いてございます。「なお、映画監督等の権利についても、実演家の権利の場合と同様、著作権審議会においても、関係者の検討協議の状況を見守りながら、映像に関する権利関係の検討状況にも留意しつつ、継続して検討を行うのが適当であると考える。」でございます。 ○宮本(岳)委員 そうなんですね。これを受けて、一九九二年五月二十二日の、映画の二次利用に関する調査研究協議会の第一回会合が開かれました。  この映画の二次利用に関する調査研究協議会は、約二十回の議論を重ねたけれども、関係者の見解の差が大きく、意見調整に努めたが、その差の解消には至らなかった、至らずに終了した、こう記されております。  一九九六年頃から、WIPO、世界知的所有権機関では、実演家の権利保護強化を目指す新条約が協議されておりまして、日本政府代表も参加しておりました。実演家の権利が強化されれば、バランスの上からも、映画監督等の権利についても見直しが進むだろうとの見通しがこのとき強まったわけですね。そこで、一九九七年に文化庁は、映像分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会、略称映像懇を発足させました。  聞きますけれども、この映像懇での議論は、最終的にどのようになりましたか、文化庁次長。 ○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。  今御指摘の平成九年の、有識者、映像関係者から構成される映像分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会におきまして議論が重ねられ、その結果、当事者間において、法改正、契約秩序構築の在り方について案を作成し、協議を進めることで合意されたと承知しております。 ○宮本(岳)委員 それは合意をされましたか。 ○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。  その後、検討されておりましたけれども、映画関係者の当事者間で、法改正や契約秩序の構築の在り方について協議を進めていましたけれども、その後、進捗はない状況でございます。 ○宮本(岳)委員 進捗はないんです。なぜ進捗がないのかということを少し調べてみたんですけれども、二〇〇一年四月に監督協会と面会した当時の著作権課長が、著作権法二十九条は憲法違反などという主張は到底受け入れられないと言明し、その後、同じく、映像懇ワーキンググループの座長も、著作権法二十九条一項の規定は憲法違反であるという主張を前提にした話合いは続けられないと発言をいたしました。  しかし、著作権法二十九条が憲法違反だという主張は、今皆さん聞いていただいたとおり、七〇年改正時の大島渚さんも語っているとおり、これは映画監督協会の一貫した主張であって、このときにわかに持ち出したものではないんですね。  日本映画監督協会は、著作権法二十九条は憲法違反であるという主張を撤回せよという要求については、当然のことながら拒否をいたしました。その結果、そこで止まって進捗がないというのが、どうやら、最終的なやり取りの結論のようであります。  私は、今から九年前の二〇一四年四月の四日、当委員会、衆議院文部科学委員会で、実はこの問題を取り上げたことがあります。  資料三を見ていただきたい。そのときの会議録です。  当時の下村博文文科大臣も、著作権を映画監督に与えることについては、関係者の合意形成の状況や、映画の円滑な市場流通への影響を踏まえて、今後必要に応じて検討を行うべきものと答弁をされました。私は、このとき既に、十年以上も止まったままだと指摘をして、しっかり協議の場を設けよと求めております。  聞きますけれども、その後、協議は動きましたか、文化庁。 ○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。  映像関係者の当事者間で、法改正や契約秩序の構築の在り方について議論を進めるということにつきましては、その後、進捗はない状況でございます。 ○宮本(岳)委員 この時点で十年以上止まっていたが、それから更に九年ですよ。既に二十年以上も止まったまま進捗がない。  では、映画製作者団体と映画監督協会は、水と油、顔も会わさず、口も利かないかというと、そうでもないんです。  私は、先日の超党派映画議連で、日本映画製作者連盟、映連と日本映画監督協会が並んで説明をする場に居合わせました。  資料四を見ていただきたい。映像制作の持続的な発展に向けた取引ガイドラインというものの表紙でありますけれども、映連も監督協会も含む十一団体の連名になっておりまして、一番下の一般社団法人日本映画制作適正化機構、略称は映適というらしいですけれども、映適を発足させることの説明でした。  この映適の発足のきっかけになったのは、経産省が二〇一九年に実施した映画制作現場実態調査の結果と、二〇二〇年三月に出た映画制作の未来のための検討会報告書だというふうに聞きました。  今日は経産省に来ていただいておりますけれども、この一般社団法人日本映画制作適正化機構というものがつくられ、このような取引ガイドラインを作成したのは、どういう趣旨でどういう経緯なのか、まずは経産省から御説明いただけますか。 ○藤田政府参考人 お答えいたします。  経済産業省が二〇一九年度に行った調査の中におきまして、委員が御指摘されました調査でございますが、映画制作現場におきましては、フリーランスが、正規社員に比べて収入や雇用の安定性、労働時間について不満度が高い、発注書や契約書が交付されていない者が多いといった課題が明らかになったところでございました。  こうした動きも受けまして、映画業界において、映画制作現場の適正化に向けた自主的な取組が進められ、二〇二三年四月には、適正な制作現場において作られた映画作品の認定を実施する日本映画制作適正化機構が事業を開始するとともに、適正な取引や制作現場における就業時間等のルールを定めた、映像制作の持続的な発展に向けた取引ガイドラインが作成されたものと承知しております。  経済産業省としましては、映画業界において、映画制作現場の適正化に向け、こうした自主的な取組が進められてきたことは高く評価できるものと考えているところでございます。 ○宮本(岳)委員 確かに、この現場実態調査結果を見ましても、現場で働く人の七五%程度はフリーランスで、フリーランスの収入は、二〇一八年の総収入で、最も多いのが僅か三百万円台でした。だからこそ、現場から、とても食べていけない、若い働き手が入ってこない、入ってもすぐ辞めていくと悲鳴のような声が上がっております。  しかし一方で、働き方改革や映画制作現場の適正化に名をかりて、映画関係者の著作権を始めとする権利が奪われたり制約を受けたりするのでは本末転倒だと思うんですね。  先日の議連の席でもこのガイドラインが示されたんですが、このガイドラインに含まれている、制作会社、フリーランスとの契約ひな形、ビローのスタッフ向けというものの中に、スタッフは、発注者又は発注者が指定する者による著作物の利用に関して、著作者人格権を行使しないという一文が入っているのが気になって、現在、映画監督はこの著作者人格権というもののみが残されているので、これを行使しないというのにサインして判こを押しちゃいますと大変なことになる、そういう心配はないんですかと聞くと、映画監督やシナリオ作家はこれには対象にならないという答弁をいただいたところであります。  そこで経産省に聞くんですが、経産省が作ったものじゃないので経産省がこれをあれこれ論じることはできないにしても、このガイドラインは、日本映画制作適正化機構で作ったものだけれども、今後まだ改善、改良の余地がある、こういうことでよろしいですね。 ○藤田政府参考人 お答えいたします。  今後とも、映画制作現場の更なる適正化に向けた取組につきましては、現場を取り巻く環境変化も踏まえながら、本ガイドラインの在り方も含めまして、映画業界において継続的に議論が行われていくことを経済産業省としても期待しているところでございます。 ○宮本(岳)委員 是非とも、よりよいものに、くれぐれも全ての関係者の権利がしっかり守られるようにしていただきたいと思います。  最後に、資料五を見ていただきたい。action4cinema、日本版CNC設立を求める会のホームページに掲載されている、諸外国の映画支援機関についての比較表であります。  左端、CNCと書いてセーエヌセーと読むんですけれども、フランスでは、映像表現に係る業界の実態の調査及び研究並びに提言等を通じて、業界全体の適正化及び国際競争力向上のための活動等を所管する統括機関が存在します。総予算九百十三億円をもって、映画等に支援をしております。  右から二番目の韓国にもKOFICという組織があり、総予算二百六十九億円で支援をしております。  日本版CNC設立を求める会は、まさにこのフランスのCNCや韓国のKOFICのような国立映画映像センターを設立しようという団体であり、業界団体及び関係各省庁に対する働きかけを行い、その設立の実現を図ることを目的としております。  文化庁は、この日本版CNC設立を求める会というものを御存じですか。 ○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。  CNCというのは、フランスの国立映画映像センターと言われるものでございまして、一九四六年につくられました、フランスにおける映画振興の中核組織というふうにされております。フランス文化省監督の下の公設法人という扱いでございまして、大統領令によって直接任命を受けた総裁の下で、いろいろな権限があるというふうに聞いております。  劇場ですとか、公共放送とか、ビデオのVODといったところからの販売の収益が、先ほど御紹介のあった九百十三億円を支えまして、そして、それを映画、オーディオビジュアル、デジタル化、それから様々なゲーム等々のいろいろな形へ複合支援している、こういうふうに聞いております。 ○宮本(岳)委員 このCNCの実現を目指す、設立を求める会という方々は、日本でもそういうものをつくってほしい、当初は日本では実現不可能な夢として議論の机上に上がることはありませんでした、しかし、それでは駄目だということで立ち上がったというんですね。  これはちょっと大臣に一言聞きたいんですけれども、こういうふうにやはり世界でやっているわけですから、日本でもやはりしっかりこういうことを研究もし、検討もして、実現不可能な夢に終わらせてはならない、やはり日本も映画の支援についてしっかりとした支えの体制を取っていく必要があると私は思うんですが、いかがですか、大臣。 ○永岡国務大臣 お答え申し上げます。  文部科学省は、映画を含めた文化芸術分野におけます取引、就業環境の改善につきまして、文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドラインを公表いたしまして、研修会の実施などの取組を進めてまいりました。  また、映画関係者との対話を通じまして、若手映画作家などの人材育成ですとか、映画作成などへの支援などに取り組んできたところでございます。  今後とも、関係者との対話を重ねながら、これからの施策、これは推進してまいりたいと考えております。 ○宮本(岳)委員 映連と映画監督協会が協議した映像懇が止まって二十年余りたったわけです。今、新たに、日本映画制作適正化機構での、映像制作の持続的な発展のための議論も始まっております。また、日本版CNC設立を求める会などの新しい動きも始まっております。それが、日本映画監督協会や映連、適正化機構との協議も始めていると聞いております。  日本映画の持続可能で多様な新たな発展をかち取るために、今こそ、働き方改革にとどまらずに、著作権を含む権利の問題でも、関係者の忌憚ない話合いを進めるべきだ。二十年止まっているものを、何で止まったのかという最初のいきさつをちょっと私、調べましたけれども、それは誰がいいとか悪いとかじゃなくて、この際、日本映画のためにしっかりそういう話合いを進める。この点で、文化庁はなし得るべきことがあればやるべきだと思うんですが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。 ○永岡国務大臣 先ほども申し上げてまいりましたけれども、文部科学省は、映画関係者とも対話を重ねながら、共に施策を組み立ててきたところでございます。  やはり、文化芸術分野には、業界内に様々な課題があるものと認識をしております。これらにつきましては、芸術家の自主的な取組や、それから業界内の関係者間の協議や議論も大切にしてきたところでございます。  文部科学省といたしましては、映画業界についても同様に、まずは業界内の課題の解決に向けました議論を注視しながら、対話を重ねて、丁寧に対応してまいりたいと考えております。 ○宮本(岳)委員 そういう動きが始まれば、経産省も協力は惜しみませんね。一言だけ。 ○藤田政府参考人 文部科学大臣から御答弁がありましたとおり、業界内における様々な課題について、議論も踏まえながら、経済産業省としましても、関係者との対話を重ねながら、文部科学省とも連携しつつ、しっかり取り組んでまいりたいと考えております。 ○宮本(岳)委員 終わります。ありがとうございました。 ○宮内委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ――――――――――――― ○宮内委員長 これより討論に入るのでありますが、その申出がありませんので、直ちに採決に入ります。  内閣提出、著作権法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕 ○宮内委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ――――――――――――― ○宮内委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、中村裕之君外四名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党及び国民民主党・無所属クラブの五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。森山浩行君。 ○森山(浩)委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。  案文を朗読して説明に代えさせていただきます。     著作権法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府及び関係者は、本法の施行に当たっては、次の事項について特段の配慮をすべきである。  一 著作物等の利用に関する新たな裁定制度は、著作権等管理事業者による集中管理がされていない著作物等を対象としており、これらの権利者には個人で活動するクリエイターなどが多く含まれることを踏まえ、特に本制度の利用の契機となる著作物等の利用の可否に係る意思表示について、幅広く丁寧な説明、周知を行うこと。  二 新たな裁定制度の具体化に当たっては、現行の裁定制度の現状を踏まえ、手続の簡素化に留意し、制度の利用に繋がるよう努めること。また、権利者の意思表示の確認に係る要件について明確さを旨として定めるとともに、意思表示をしていない権利者の権利保護が図られるよう、裁定手続を進める過程においても、意思表示を待つだけに留まらず、不断に権利者の探索・アプローチを進める方策に努めること。  三 登録確認機関が行う未管理公表著作物等の使用料相当額の算出に当たっては、利用者の負担軽減の観点から、利用者が使用料相当額を算定しやすい簡便な仕組みとするとともに、著作物等の利用形態に応じた一般的な使用料等の相場を踏まえた適切な額とするよう努めること。  四 著作物等の利用に係る利便性の向上とともに、権利者への適切な対価還元を図る本法の趣旨を踏まえ、登録確認機関の登録及び指定補償金管理機関の指定に当たり、それぞれの機関が権利者及び利用者の意見を適切に反映した運営が確保されるよう留意すること。  五 分野横断権利情報検索システムは新たな裁定制度において権利者の探索に重要な役割を果たすことを踏まえ、政府は、分野横断権利情報検索システムの構築に当たって、著作権等管理事業者が保有する既存のデータベースとの連携等データベースの充実に向けた支援を行うこと。その際には、著作権等管理事業者の負担となることのないよう留意すること。  六 海賊版による著作権侵害に対する損害賠償額として認定されるライセンス料相当額の考慮要素の明確化については、侵害行為の抑止の観点から、損害賠償額が適正な額となるよう制度の趣旨の周知を図ること。  七 海賊版サイトについては、運営主体の多くが海外に拠点をもっていることから、その取締りに当たっては、日本国内のみならず国際的な連携・協力の強化など、海外での不正流通防止に向けた対策に積極的に取り組むこと。  八 メタバースや非代替性トークン(NFT)等、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展が著作物等の創作・流通・利用を取り巻く環境に大きな影響を与えていることを踏まえ、著作物等の一層の利用の円滑化及びそれに伴う著作権者の権利保護の在り方等、著作権制度の議論を加速させること。  九 DXの進展により、著作物の創作又は利用を本来の職業としない者が著作物の提供者あるいは著作物の利用者となる機会が増えたことを踏まえ、著作権等に関する法律知識の周知や契約実務の補助となるマニュアル等の普及に努めること。  十 AI技術の進展により、他者の著作物を使用した創作物が容易に作成されるようになったことを踏まえ、著作者の権利の保護に向けた取組・体制の強化を図ること。また、著作権に対する意識の醸成及び教育機会の更なる充実を図ること。 以上であります。  何とぞ御賛同いただきますようよろしくお願い申し上げます。 ○宮内委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕 ○宮内委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。永岡文部科学大臣。 ○永岡国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと存じます。     ――――――――――――― ○宮内委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 ○宮内委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ――――――――――――― ○宮内委員長 次回は、来る十九日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時三十八分散会