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Daichi Mochihashi (持橋大地) daichi <at> ism.ac.jp by hns, version 2.10-pl1.

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2008年03月28日(金) [n年日記]

#1 「科学」

伊庭さんから, 岩波書店 「科学」 2008年4月号の謹呈本をいただきました。
伊庭さんの記事"「確率の科学」がなぜ必要か"は, エヴァンゲリオンの話(w から始まって, Bias-variance dilemma, 「確率論」と統計学習, および数学との関係 についてなどの興味深い話です。
これは特集「予測不能な時代の測り方―確率・リスク・ゆらぎ」の一部で, 原稿を 読んだときに, 今年出る岩波の新シリーズ 「確率と情報の科学」 にちなんでいる のだろうと思ったのですが, どこにも言及されていなくてちょっと驚きました。

他にもすごい方々の記事が並んでいるので, 結構お薦めっぽいです。
個人的に他に面白かったのは, 竹内啓先生の「賭けと金融工学の新しい数理」。 これは, 完全にランダムな賭けの場合には, どのような戦略を考えても確実に利益を得る 方法はない, というよく知られた話を裏返して, 「もし完全にランダムな賭けで なければ *1 , 有限な資金で 必ず, かつ無限にもうけることができる」という話。とても興味深い。p のempirical な推定値を用いた場合でも, 資金額を確率1でexp(ρn)で増やす戦略についても書いて あります。株取引でも, 大まかに言うと完全な幾何ブラウン運動でなければ, 必ず もうける戦略が存在するとのこと。( Shafer&Vovkのこの辺の話 が元であるらしい。自分用メモ。)
なぜ興味深いかというと, 実際の経済はまず確実に 完全にランダムに動いているわけではないだろう, から。 実際, MBAのような所に通うと, どうやって利潤を+にできるかの 「カラクリ」が読めるようになって, ほぼどんな場合でも成功することができるように なるという話を聞いたことがあるので, それは抽象的にはこういうことかも しれない, と思いました。 *2

それから, 高橋陽一郎先生の記事の囲み記事「逆正弦法則」についてもへー×3でした。 これは, ツキのあるなしつまり「勝ちっぱなし」あるいは「負けっぱなし」になる 確率が実際に統計的に高い, という話。 完全にランダムな酔歩(ブラウン運動)を行ったとき, 上の象限(勝っている状態)にいる 時間の全時間に対する割合を x とすると, xの累積密度関数が 2/πsin-1√xになり, 密度関数はベータ分布 Be(1/2,1/2) *3 になる, という話。寡聞にしてこれまで知りませんでした。 これは下図のような関数なので, 実際に, どちらかの状態にいる確率が非常に高くなる ようです。

「科学」はちょっと高いような気がします(1400円!)が, 図書館にはよく置いてあるのでは ないかと思います。


*1: コイン投げの場合, 表の出る隠れた確率p≠1/2であれば
*2: 実際の経済は必ずしもゼロサムゲームではないので, 利益を上げるということは, 必ずしも他者の利益を損うことにはならない, と思う。
*3: これは2項分布のJeffreys' priorで, 情報圧縮の分野のCTW法では Krichevski-Trofimov(KT)-estimatorとよばれている。

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